山本武の夢 

YS

標的286より
****************************************************************************************
ボンゴレ十代目継承式は一週間後に近づいていた。
並盛中学校の教室では、どんよりとしたツナを獄寺と山本がなぐさめていた。
「十代目、がんばりましょう!!! オレの夢は十代目が立派に継承式を成し遂げることです!!!!」
十代目の右腕と公言してはばからない獄寺が拳をふりあげた。
「オレは普通に就職して、ほどほどにちゃんと稼いで、京子ちゃんと結婚するのが夢なんだ!!! 
大きな権力もお金もいらないよ!! 自分が楽しいと思える小さな幸せさえあればいいんだ!!! 
マフィアのボスとか絶対ヤダ!!!」
ツナは机につっぷして弱音を吐いた。
「十代目になってから、サラリーマンになって、京子ちゃんと結婚すればいいのな」
山本は明るい笑顔を浮かべた。
「何言ってるんだよーーーー、そんなことできるわけないよ!!! 
山本は好きな人がいないから、そんなことを言うんだ!!! 
お嫁さんを心配させちゃいけないんだ!!!」
「そうだ、野球バカは、野球だけできりゃそれで満足だろうが、十代目は望みが違うんだ!!!」
ツナに追従して獄寺も怒鳴った。
「ははは、そうでもないのな。好きな人はいるのな」
山本武は笑いながら、明るく答えた。
「えっ。山本に好きな人が?」
「てめー、十代目の守護者の座を捨てるなんて言い出さねえよなあ。そんなこと言ったら、ぶっ殺す!!!」
ツナは目を丸くし、獄寺は凄んで近寄った。
「夢は野球選手だけど、剣は捨てないのな。好きな人より強くならないといけないのな」
実に嫌な予感がして、ツナと獄寺は黙り込んだ。
聞いてはいけない。それ以上聞くと、恐ろしい答えしか返ってこない。
「それで、強くなったらお嫁さんにするのか? 好きなら相手が男でも構わねーぞ」
いつの間にか近くに来ていたリボーンが、当たり前のように山本に尋ねた。
「ああ。なって欲しいのな。そのためにはもっともっと強くならないといけないのな」
「がんばれよ、山本。世界一の剣士かつヒットマンになれば、ザンザスからスクアーロを奪えるかもしれねーぞ。
マフィアにふさわしい略奪愛だぞ!!!」
「おお、その通りだな!!!!」
山本はさわやかな笑顔を浮かべた。
どうみても本気のようだ。
獄寺はがっくりと肩を落とした。
だいたいの想像はついていたが、やっぱりあの乱暴者のスクアーロを狙っていたのか。
しかし、十年後の色気はハンパなかったから、ぜってーに見込みねーと思う。
ひーーー、止めてよーーー、ザンザスを敵に回したくないよーーーー。
ツナは激しく汗を流した。
「剣帝を越えたら、モノにできるかもしれねーぞ。
スクアーロより強くなり、ザンザスより強くなり、ディーノより強くなったらプロボーズできるぞ」
リボーンが焚き付けるような言葉をかけ、山本は力強くうなずいた。
「そうなのな。そうと決まったら、まずはランニングだ!!! 
最強の剣士をめざす前に、野球で頂点を極めるのな!!!」
山本は元気よくグラウンドに飛び出していった。
「がんばれよ、ツナ。ボンゴレをまとめあげるのも十代目の仕事だぞ!!!!」
「止めてよ、リボーン、これ以上もめ事を増やすのは!!!!!」
「その方が、おもしれーからな」
やっぱり。ツナはがっくりと肩を落とした。ツナにはおそろしい未来が待っているとしか思えない。
ぜったいに嫌だから逃げよう・・・。
ツナは決意を新たにした。



************************************************************************************************************
山本武、誕生日おめでとうだぁ!!!!
と山本は言ってもらいたいに違いない。
全然誕生日話ではありませんが、山本の誕生日あたりに書きました。

top