『三国志』のおもしろくて新しい読み方   伴野朗・正木義也著/07.09.2000/総合法令

 「伴野朗」と聞いた瞬間,「歴史とは程遠い」と感じたあなた,正解!
 「新しい読み方」と聞いて,「信用ならない」と感じたあなた,大正解!

 また『三国志』関連(?)の愚作が増えましたー。今回は小説でも研究でもありません,対談,対談ですよ。
 まず,正木義也氏を私は知りませんが,この人は中国でビジネスに関係する仕事をして久しいようです。この人が「中国・台湾」について語るときには,その見識の深さにうなずかされますが,三国志に関しては素人であることを隠そうともしません。
 そんな正木氏に伴野朗が「知ったか」をかます。これがこの本の基本構成!そりゃあ,対談としては盛り上がるでしょうよ。でもね,この1冊を何回読んでも新しい発見や面白い読み方は1つとして見出せませんでしたねえ。
 「新しい読み方」と言うからには,何か新しい手がかりを与えてくれるものと期待していましたが,既存の三国志に対する先入観でもって今の中国社会を見る,ただそれだけの対談です。ステレオタイプでものを見ているから,何ら新しいものを生み出す力にはならないと思います。
 まあ,この本が価値を持つただ1点は,こんな三国志の読み方をしてはいけないと言う良い例を示してくれたと言うことでしょう。
 ここで,せめてものフォローを。現代の中国・台湾事情については,この2人,共に知識があるせいか,まあまあ読めるものではあります。しかし,そんなの三国志を語らなくたって言えることでしょう

 この本を読んでいて気になった点をいくつか

  1. 伴野朗は「『三国志演義』を『三国志』と思われては困る」と言っているが,「諸葛亮が孟獲に対して行った七縦七擒を現代中国は見習え」ってどういうこと?都合のいいときだけ『三国志演義』を持ち出してくるのはどうなのかなあ。
  2. 「諸葛亮は夷陵の戦いに関して出兵に反対した」と言う見解であるが,その根拠は?それに,劉備に対して反対しきれなかった理由を「王と皇帝の違い」としているのも根拠が乏しいような気がしますねえ。また,夷陵の戦いで人材が多く失われたことを諸葛亮が苦労した原因にして,諸葛亮が万能であることを信じて疑わない姿勢はどのようなものかと思いますが。
  3. 陳寿『三国志』の記述量について,魏が多いのは陳寿が西晉の歴史家であり,魏を無視できなかったからと言うが,国力を考えれば,記述量に差が出るのは当然のことだと思いますが?

 この本の定価は…¥1600!高い,高すぎる。値段に見合った価値ではありませんねえ。まあ,古本屋で¥500以下で見かけたときには買ってみる価値があるという程度のものでしょう。現に私は古本屋で買いました。
 伴野朗はこの本の中で,自分の新作『長江燃ゆ』について色々宣伝しています。しかし,この本で見る限り,買ってまで見る価値はないでしょう,立ち読みで十分!だって,「伴野朗」なんだもん!

 評価:6点;価値対価格が最悪。何を言いたいのかが分かりにくく,結局駄作となってしまった。

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