1. 課題設定の理由
「本読みができない」「音読するのに声が小さい」というのが、一学期、国語の学習指導で私がもった
感想である。教材文をうまく読めない子は、つかえながら読んで簡単には先へ読み進めることができな
い。また、教材文を読めることにしても声が小さくて周囲の子に聞こえない場合がある。音読に自信が
ないのか、音読の練習不足なのか、いくつか原因が考えられる。それを聞く側に頼りない感じが伝わっ
てくる。音読することに対して抵抗を示す子は少なからずいる。私自身も、その一人である。このような
児童の実態や私自身の音読に対する抵抗感があることをふまえ、めあてをもって音読の練習を積み重
ねることで、音読に対する抵抗感を減らし、明るく元気な音読ができないかと考え、この課題を設けた。
2. 課題に対する基本的な考え方
(1)音読
音読とは声を出して読むことであり、黙って目だけで読む「黙読」に対する読み方である。言葉を声
に出すことは文章を理解し、表現することにつながる。
(2)音読指導の留意点
音読指導のねらいを「発声」「発音」「速度」「リズム」にしぼり、指導することにした。
@しっかりした声で読む
息を深く吸い込む腹式呼吸に慣れること
A正しい発音で読む
教師が確かな耳と正しい発音をもつこと
Bゆっくりしたテンポで読む
句読点で間をもって読むこと
Cリズムある読み方ができる
明るくはずみをもった調子で読むこと
朗読は人物の心情や場面の様子を表現する、音読の究極の読み方である。音読は、まず文字の正
しい音声化である。正常な読み方を目指して練習を重ねていけば、声も充実してくるし、発音も正しくな
るし、発音やテンポも身についてくるのではなかろうか。
3. 課題に対する実践
音読の練習を増やすために以下のような機会を設けた。
(1)朝の会での音読練習
日直が指揮を取り、口の体操、数え歌、詩を読む練習を行う。
(2)音読発表会を開く
「ごんぎつね」「いい春つくろう」「八郎」等の物語教材において、自分の感動した場面を読み合う、音
読発表会を開く。息つぎの箇所、声の強弱、読みの速さの記号を教材文に示し、読み方を工夫させる。
(3)「音読の一週間」の課題を出す
物語教材を一週間続けて練習することを課題として出す。発音、読みの速さ、声の大きさなど、めあて
もって練習し、反省をメモに記録させる。
(4)学習指導において音読を増やす
4. 実践のまとめと課題
音読の練習を積み重ね、それに慣れることで、声の小さくなりがちな子が、しだいにしっかりした声で読
めるようになってきた。しかし、まだ十分とは言えない。音読に対して抵抗のある他の子も、まだ読むのに
消極的である。私自身が、音読の重要性を理解し、その重要性や楽しさを子どもに伝え切れていないと
思う。形式だけの指導で、内容が不十分な指導であった。
音読の技能を伸ばすには、発声と発音、アクセント、抑揚とイントネーション、間(ポーズ)、緩急といった
実に様々な点に注意しなければならない。音読指導を児童側に立って考えると、その子に合った発声や
発音、間の取り方、息づかいなど、どうすれば個性的な自分なりの音読ができるか工夫させる必要があ
る。自分を振り返ってみると、音読に対して抵抗があり、その技術を身に付けていない。意識して音読す
ることを心掛け、自らが練習し範読して子どもに聞かせることによって、子どもが言葉に対し敏感になり、
音読に興味を示すだろう。今後、自らが練習を続けていかなければならない。
5. 参考資料及び文献
青木幹勇 「音読指導入門」 明治図書
石田佐久間 「音読・朗読・黙読」 東京書籍