道徳学習指導案
            平成11年3月5日(金) 第5校時 教室
            第1学年A組  指導者  山村 英二
    授業の視点
1年生の「いじめ」の授業で、本時のねらいに迫るために資料の提示の仕方は効果的であったか。
 
T 主題名 いじめ  1−(3)、2−(3) 
  資料名 「わたしのせいじゃない」 レイフ・クリスチャンソン 文、ディック・ステンベリ 絵、
                        にもんじまさゆき 訳、岩崎書店
        「わたいのいもうと」 松谷みよ子 文、味戸ケイコ 絵、偕成社
 
U 主題設定の理由
 1 ねらいとする価値について
   「いじめ」による自殺がクローズアップされ、「心の教育」と叫ばれている。しかし、「いじめ」と正対した授業はさほど行わ
  れていない。道徳で「いじめ」を取り上げた授業をする必要性がある。
   私の学級では「いじめ」はないし起こらないから「いじめ」の授業をする必要はないという考えもあろう。現在の学級で起
  こらないにしても、担任が替わった来年度以降、子どもたちの学級で「いじめ」が生み出されるかもしれない。自分が「いじ
  め」られる当事者になるかもしれないし、「いじめ」のある学級の一員になるかもしれない。これらことを考えただけでも、ど
  の学級でも「いじめ」の授業をする必要性が出てくる。
   いじめと「いじめ」とは違う。「○○君がぶっていじめた。」「○○さんが私の悪口を言った。」 これら個々の行為がいじめ
  である。「いじめ」とは、こうした行為が反復的・継続的に繰り広げられる状態である。「いじめ」は子どもたちの最も身近に
  起こる人権権侵害問題である。いじめが「いじめ」になってから授業をするのでは遅い。「いじめ」の授業をすることで、いじ
  めの行為を「いじめ」にまで発展させないための力を子どもたちに育てるのである。しかし、週1回の道徳の授業でどこま
  で力を育てることができるかは、不明である。「いじめ」を撲滅し「いじめ」を生み出さないための取り組みが、学級・学校全
  体の中で展開されなければならない。
   小さいときこそよいこと、悪いことこそきちんと教えておくべきである。「よいこと」とは、してよいことであり、した方がよい
  ことでもある。「悪いこと」は、すべきでないことであり、絶対に許されないことでもある。低学年の道徳の授業では、こうし
  た「よいこと、悪いこと」をはっきり教える必要があると考える。「『いじめ』は人間として絶対に許されない」ことを毅然とした
  態度で教える必要がある。
 
 2 児童の実態
   本学級は、男子22名、女子15名、計37名である。全体的に明るく穏やかな児童が多い。教師の話を落ち着いて聞くこ
  とのできる児童が多い。
   授業中、忘れ物をしている隣の席の子に貸している児童が時々見られる。困ったり悲しんだりしている友達に近づいて
  「どうしたの。」と声を掛けたり、その様子を担任に知らせに来きたりする児童が少数いる。
   反面、児童の中で、他の子に対する自己中心的な感情で、「相手のために」と思うばかり他の子の世話をやきすぎてし
  まう子もいる。また、発達段階から見ても、大半の児童が自分のやるべきことで精一杯で、回りの者に働きかけができな
  い状態である。
   4月以来、数人の児童のプリントが、生活科室やベランダなど予期せぬ場所から、丸められた状態で見つけられたこと
  があった。また、数人の児童が、教科書やノートに落書きをされたと訴えてくることが度々あった。さらに、1学期には教室
  の外壁に油性ペンで落書きがされていた。担任は学級の児童の見る中、その落書きを削り落とした。
    これらの行為が、直接「いじめ」に繋がるとは考えにくい。けれども、「物隠し」や「落書き」は、人に嫌な思いをさせる行
  為である。それらが人の見ていないところで行われ、善悪の判断力に乏しい低学年の児童に見られる行動であると考え
  る。
 
 3 内容項目の系統
   本主題は、学習指導要領の「第1学年及び第2学年」での以下の「内容項目」に関連する。「1 主として自分自身に関す  ること。」の「(3)よいと思うことは進んで行う。」「2 主として他の人とのかかわりに関すること。」の「(2)身近にいる幼い   人や高齢者に温かい心で接し、親切にする。」
   また、本主題は系統として、1月の「人権カルタ」、2月の「つもったゆき」を受けている。
 
 4 資料について
   「わたしのせいじゃない」は、いじめの状況と、その責任のなすりあいが前半に描かれ、後半の写真は戦争や環境問題
  など多くのことを語りかけている。本時では、前半の部分を資料として使用する。
   「わたいのいもうと」は、いじめにあい、登校を拒否し、心を閉ざしてしまった妹の話である。妹をいじめた同級生たちは、   いじめのことなど忘れて中学生になり、高校生になっていった。自分より弱いものをいじめる。自分と同じでないものを許
  さない。誰かを差別することで自分を保つ。いじめのおそろしさは、大方の人が自分でも知らないうちに、加害者になって
  いるまたはなりうることではなかろうか。「わたしのいもうと」は、そう語っている。
 
 5 指導の方針及び留意点
  ・1年生が初めて出会う「いじめ」の授業では、子どもが好きな絵本から入るのが自然だと考え、二冊の絵本を資料として
   取り上げる。
  ・教師が資料を読みながら絵を示すことより、児童が登場人物について想像を広げるようにする。
  ・教師が間を取りながら資料を読むことにより、児童が資料の内容についてイメージをふくらませられるようにする。
  ・教師の語りを聞きながら、児童がワークシート(絵)に書き込むことで、自分の価値判断ができるようにする。
  ・ワークシートを使用することによって、自分の考えを持てるようにする。
                                 
 6 事前・事後の指導
  〈事前指導〉
  ・児童が困ったことや心配事をいつでも相談できるように、児童と行動を共にし、話を聞くことができるに心掛ける。
  ・話しても個人に迷惑にならない範囲で、クラスの問題点を子どもたちに投げかけ、クラスで解決方法を考え、行動に移せ
   るようにする。
  ・1月の「人権カルタ」を作り遊んだ。「いじめは一番かっこわるい」の札の意味をを児童に考えさせ、「いじめ」は人間とし
   て最低で恥ずべき行為であることを知らせた。   
  〈事後指導〉
  ・「いじめは絶対に許されない」という確固たる態度を示す。
 
V 本時の学習
 1 ねらい  「いじめ」の怖さを知り、「いじめ」をやめようという気持ちを育てる。
 2 準 備  ワークシート(2枚)、掲示用の資料、絵本2冊
 3 展 開
段階 ・学習活動 ○主な発問  予想される児童の反応  指導上の留意点
導 入
 
・泣いた男の子の絵を見て、想像する。
○この子はどうして泣いていると思いますか。
「いじめられたから」
「けんかをして負けたから」
「先生にしかられたから」

 分
 
・資料に興味をもたせ、自分の思ったことを発表させる。
 


  展



























 
・資料「わたしのせいじゃない」を聞く。
・「男の子が泣いたのは この子のせいだ」と思ったらワークシートに ○を書く。
○誰のせいだと思いますか。
○全員のせいだと思う人はいますか。どうして、そう思いましたか。




○一人でもいいから(いじめを)止めた方がいいと思いますか。
・泣いている子の気持ちを想像してワークシートに書く。
・自分の考えを発表する。
「誰のせいでこの子が泣いたのかな」
「たたいたのはよくない」
「おおぜいでやったんだ」「『わたしのせいじゃない』というばかりだな」「たたいた子のせいだ」 
「男の子のせいって言っている子のせいだと思う」
「全員悪いことを言ったりして、男の子をいじめたから」「いやな感じがしたから」「ほとんどの人が悪口を言ったから 」 
「一人でも言えばいいと思います」
「一人でも止めなくちゃ」
「みんなでいじめるなんていやなかんじがする」
「もう学校に来たくないよ」
「ずっと泣いていたい」
 


  
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・資料を二回読み、内容を理解しやくする。
・一回目は読み聞かせ、二回目は読みながら絵を黒板に提示し、児童の想像をふくらませる。
・資料の内容が理解できるように時間をかけて資料を読む。
・ワークシートに書き込むことにより「誰のせいか」を自分で判断させる。

・発言できる児童は立って、順番に発言させるようにする。
・児童の発表を共感して聞く。
・加害者、観衆、傍観者、いじめに関わるすべての者が、いじめを生み出し、責任があること話す。
 
・黒板の絵を見る。
○この女の子は、今、幸せでしょうか、それとも不幸せでしょうか。
・資料「わたしのいもうと」を聞く。
○いじめた子どもたちは、やはり 「わたしのせいじゃない」というのでしょうか。 
「なぜ背中をむけているの」
「しあわせ」「ふしあわせ」
「さみしそうに見える」

「妹にどんなことが起こるんだろう」
「みんな『わたしのせいじゃない』というと思う」
「何を言っても、この妹さんは戻って来ないよ」



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・黒板に絵を掲示し、資料に興味を持たせる。


・児童の反応を見ながら読み聞かせを行う。
・いじめが最悪の事態(死)を招くこともあり、「いじめは絶対に許されない」ことを伝える。



 
・本時の学習を振り返り、感想を書く。

 
「いじめをすると人が悲しみます。悪口やたたくのは、絶対にいけないと思いました。」


 
・事後に、教師は児童の感想を読み評語を書き入れ、児童に返す。その一部を児童に紹介する。