平成8年10月18日(金) 第3校時 第6学年A組 指導者 山村 英二
T. 単元名 西郷隆盛と大久保利通
U. 単元の考察
1. 児童の実態
本学級の児童は、男子15名、女子21名、計36名である。教師による講義形式の学習より、資料による調べ学習や聞
き取り調査などによる体験学習の方に児童はより進んで取り組む。事前調査を行い、その結果を以下に示す。
調査日 平成8年10月3日(水) 回答数36名
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@ 「明治時代」という時代名を聞いたことがあるか。
1. ある 36名 2. ない 0名
A 江戸時代から明治時代になって、政治や社会の仕組みが変わったと思うか。
1.変わったと思う 19名 2.変わらないと思う 3名 3.わからない 14名
*「1.変わったと思う」と回答した者は、政治や社会の仕組みがどのように変わったか
書きなさい。(省略)
B 次の人物で名前を知っているものがあったら、番号に○をつけなさい
1.勝 海舟 10名 2.西郷 隆盛 23名 3.大久保 利通 11名
4.木戸 孝允 2名 5.明治天皇 23名 6. 福沢 諭吉 29名
C 歴史上の人物を調べてまとめる場合、どのような方法でまとめたり表したりしたいか。
新聞 8名 まんが 5名 人物説明図・絵本 各4名
すごろく・絵年表・ペープサート 各3名
カルタ・劇化・会話劇・ビデオ・図鑑・プリント 各1名 |
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児童の19名が、明治時代になり政治や社会の仕組みが変化したと思っている。
うち14名が「外国のものを取り入れた」「文化が進んだ」など社会の変化をあげている。「新しい政府ができた」という政治 の仕組みの変化をあげているのはわずかである。また人物については「西郷隆盛」は薩摩の人や銅像になっていること
で、「福沢諭吉」は紙幣に載っていることで、ともによく知られている。「大久保利通」については「政府の中心者」とあげるも
のが2名と少ない。
調べ学習をまとめる表現方法については、新聞やまんがや絵本など文字や絵を使った表現方法を好む児童が多く、劇や
ペープサートなど手や足、体を使った表現方法を選ぶのが少ない。
2. 教材観
この小単元では、西郷隆盛と大久保利通の一生を取り上げ、その働きや考え方の違いを追究することで、幕末から明治
初期にかけての時代の変化をとらえさせていく。特に、この小単元で取り上げたい人物や歴史的事象はたくさんあるが、子
ども自身の追究を通して、時代のイメージをつかませたいと考えた。
西郷隆盛は、子どもたちにもよく知られた人物であり、薩長同盟を結び、王政復古を実現させ、江戸城無血開城にも成功
を収めた人物である。また、新政府においても廃藩置県の成功にも大きな役割を果たし、明治維新を成功させた人物の一
人である。一方、大久保利通は、西郷隆盛と同じ薩摩藩の下級武士出身で、西郷と協力して討幕運動をリードし、岩倉具
視と共に王政復古を実現させた功労者である。さらに、明治時維新諸改革の基礎固めを行い、日本の近代化に貢献した
人物である。
激動の時代に活躍した西郷隆盛と大久保利通の生き方は、子どもたちが興味をもって追究していくことができるとともに、
二人の生き方や考え方の違いを比較検討したり、討論したりすることで、二人が日本の近代化に不可欠であったことをと
らえたり、時代に対する見方や考え方が深めたりすることができると考えた。
3. 指導の方針および学習活動への支援
・児童に知られている人物を取り上げることにより、児童が興味や関心をもって意欲的に追究することができるようにす
る。
・西郷隆盛と大久保利通の生き方や考え方を比較検討したり討論したりすることで、人物に対する見方や考え方が深まる
ようにする。
・表現方法は、児童一人一人のよさを生かすために、自分の発表したい方法を個人で選択し表現するようにする。本単元
では児童の実態により、主に文字や絵などを使った表現方法を提示し、選択させるようにする。
新聞 まんが 人物説明図 絵本 絵年表 等
・複数の表現方法による学習活動は教師・児童ともに初めてである。教師がその対応ができるように、児童の作品用のワ
ークシートを用意する。ただし児童の中で自ら考えつくり出した表現方法や表現形式があれば、それを認めるようにす
る。
・適切な資料を主体的に活用できるように、いくつかの資料を用意し資料選びのアドバイスをしたり資料コーナーを設けた
りする。また、児童自らが用意する資料を随時紹介したり活用できるようにする
・一人調べをもとにして、グループで情報交換を行い、何をどのようにまとめるかの視点づくりができる共同学習の場を設
ける。
・人物の何について調べるのかわからない児童に対して、人物をとらえる視点がわかるヒントカードを用意しておく。
・作品を互いに鑑賞する中で、自分や友達のよさに気付くようにする。
*校内研修との関連
本校の今年度の研修主題は「主体的に学ぶ児童の育成を目指して―個に応じた授業法の改善」である。児童自らが進
んで学習に取り組み、学ぶことの楽しさや成就感を味わえるように授業法や教材の工夫・改善することが、研修のねらい
である。研修主題に迫るために、本単元では次のことを意識して授業設計をした。
(1)児童の実態把握による教材(人物)の選定
(2)児童による教材や表現方法の選択
(3)小集団による意見交換の場の設定
V. 目標
西郷隆盛と大久保利通の一生や働きを調べて、我が国は明治維新の諸改革により政治や社会が大きく変化し、近代化
が進められていったことを理解できるようにするとともに、二人の生き方の違いを通して、新しい時代の先駆者の思いを考
えることができるようにする。
W.評価基準
・西郷隆盛と大久保利通の一生や働きに関心をもち、意欲的に調べたり考えたりしようとする。(関心・意欲・態度)
・明治維新を進めた西郷隆盛と大久保利通の思いや願いを考え、激動の時代に生きた二人の生き方について自分なりの
考えをもつ。(思考・判断)
・個々の課題にあった資料を見付けて調べるとともに、それを自分なりの方法で分かりやすく表現する。(技能・表現)
・我が国は開国以降、廃藩置県、四民平等など明治維新の諸改革を行い、近代化を進めていったことを理解している。
(知識・理解)
X. 指導計画 6時間予定 本時はその6時間目
| 学習過程 |
主な学習活動
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評価項目と方法
@社会的事象への関心・意欲・態度 A社会的な思考・判断B観察・資料活用の技能・表現 C社会的事象についての知識・理解 |
| 学習課題をとらえる |
1.明治時代の初めの東京の様子を江戸時代の末と比べる。 |
@明治維新に興味をもち、進んで調べようとしてるか。(観察・発言)
B二枚の絵から様々な変化の様子を発見しているか。(ノート・発言)
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新しい国づくりのために誰がどんなことに力を入れたのだろうか。 |
| 2.明治政府を推し進めた人々を調べ、気付いたことを話し合う。(1) |
学習課題を追究する
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1.明治政府の改革を調べる。
・廃藩置県 ・富国強兵 ・徴兵令
・殖産興業 ・地租改正 ・文明開化 |
@明治維新に興味をもち、進んで調べようとしてるか。(観察・発言)B明治政府の政策について具体的に調べ、わかりやくまとめているか。(ノート)C明治政府の政策のねらいをとらえているか。(ノート・発言) |
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明治政府はどんなことに力を入れたのか |
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(1) |
1.西郷と大久保の肖像画や年表などを見て、二人の生涯のおよそをつかむ。
2.詳しく調べる人物や内容を決め、調べ方やまとめ方について見通しをもつ。
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@西郷と大久保に関心をもち、その歩みを進んで調べようとしているか。(観察)
AB西郷と大久保の生涯のおよそをつかんでいるか。(観察・発言)
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西郷隆盛と大久保利通はどんな働きをした人物なのだろう。 |
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(1) |
| 1.西郷と大久保について各自で調べる。 |
@西郷と大久保の考え方や働きを進んで調 べようとしているか。(観察)
A西郷と大久保の生き方を考えることができるか。(発言・作品)
B年譜や図書資料を必要に応じて活用しているか。(観察)B自分の考えを自分なりの方法で分かりやすく表現しているか。(作品)
C西郷と大久保の業績を具体的にとらえているか。(発言・作品)
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西郷と大久保の果たした役割や考え方について調べよう。 |
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↑ |
(行き戻りする)
↓
2.自分で調べたことを小グループで出し合い自分の考えを深める。
3.西郷と大久保について調べたことを発表する。(2) |
| 学習をまとめる |
1.西郷と大久保の生き方についてまとめる。
2.二人の生き方について話し合う。 |
@A西郷と大久保の考えの違いを発表したり聞いたりして、変化の時代に生きた人物に対する自分なりの考えをもとうとしているか。(観察・ワークシート)西郷や大久保の活躍によって明治維新の諸改革が行われ、日本の近代化が進めらえたことをとらえているか
(発言・ワークシート) |
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西郷と大久保の生き方や考え方について討論しよう。(1) |
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Y. 本時の学習
1. ねらい 西郷隆盛と大久保利通の生き方について自分なりの感想をもち、二人とも日本の近代化に不可欠の人物であ ったことをとらえるとともに、討論を通して二人の生き方について自分なりの考えを深められるようにする。
2. 準備 (教師)ワークシート、資料
(児童)教科書、ノート、作品、資料
3. 展開
| 学習活動 |
時間 |
学習への支援
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評価項目と方法 |
1.西郷と大久保の生き方についての発表を聞く。
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10
分 |
・事前に児童と相談して発表者を決めておく。
・発表を聞き、二人のかかわりに気付くようにし問題意識を呼び起こす。資料を用意し、援助を行えるようしておく。
・仲のよかった二人が対立するようになった原因を話し合い、政治姿勢の違いに気付くようにする。 |
・二人のかかわりに気付き、問題意識をもてたか。(観察・発言)
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2.二人の生き方について感想文を書く。
3.感想文をもとに討論するそれぞれの支持理由を
発表し、意見交換を行う。 |
25
分
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・どちらの立場に立つか、どちら生き方を支持するかを決め、その理由を文章表現することで、討論の拠り所とする。
・一方に偏らないよう、教師が司会を行い質問や反問を行いながら一人一人の考えを引き出すようにする。 |
・感想文を書けたか。 (ワークシート)
・発言したり質問したりできたか。
(観察・発言)
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4.本小単元のまとめをする。
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10
分 |
・ワークシートに記入することで自分の考えを深めるようにする。 |
・自分の考えを深められたか。
(ワークシート) |
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