不思議な館

 

「すっかり暗くなっちゃったよ。それに、道に迷っちゃったみたい」

 は木立の並ぶ山道を一人で歩いていた。誰かと一緒に遊びに来ていたはずなの
に、気付いたら傍に誰も居なくなってしまって、探してはじめたら元の場所が分からなく
なってしまったらしい。

「ん〜、こういう場合はどうしたらいいんだ?」

 あまり動かずに誰かが見つけてくれるまで待つべきか、それとも・・・。

 考えながら歩いていると、木々の間にかすかな光を見つけた。目を凝らしてみると、ど
うやらどこかのお屋敷らしい。

「あそこに泊めてもらおうかな」

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 その光を目指して歩き出すこと数分。とても大きな屋敷に辿り着いた。

「夜分遅くにすいません。道に迷ってしまって一晩だけ泊めて頂けませんか?」

 声を限りに張り上げて叫ぶと、

「入れ。好きに使って構わない」

 と聞き覚えのあるようなないような声がどこからともなく応え、自然に大きな扉が開い
た。すると、暗かった1階に部屋全体に明かりがともる。

「それじゃ、お邪魔します。でも、好きに使えったって、どこがなにやら・・・」

 1階は至って普通の作り。リビングだのキッチンだの・・・。ただ、どこも必要以上に
広いってだけで、さして興味を惹かれるものはない。

 夜も遅いし寝室を探しに2階へ上がる。と、部屋は6つ。ドアにそれぞれ名前が記され
ているらしいが、古い上にボロボロで読めたものじゃなかった。手っ取り早く、1番手前
のドアを開けて見る。だが、だだっ広いだけで何もない。

「な〜んだ、寝室じゃないのかぁ」

 窓の傍に椅子が幾つかあり、歩き疲れて休みたい気分でもあるし、そこに腰掛けて窓の
外をボーっと眺めていた。

 ボーっとしているとの頭の中を勝手に支配して動き始める輩達。言わずと知れた
速水奨・井上和彦・関俊彦の三馬鹿御三家。またしても好き勝手に会話を始める。ここで
憤慨しても疲れるだけ。勝手にやってって、とばかりに尚もボーッ。

 と、不意にあることに気付いた。頭の中だけで響いてると思っていた声が実際に聞こえ
てきている。何故だ? 誰も居なかったはずなのに・・・。

 振り返ると、ニンマリ顔の男が三人。

「いつ気付いてくれるか、待ってたんだぞ」

 と井上和彦(通称カズ)。

「なんであんた達がここにいるんだよ」

「何って、君が僕らを呼んだんでしょう?」

 と速水奨(通称ショウ)。呼んじゃいないって、目障りな・・・。

「目障りって、それは酷い言い草じゃん」

 と関俊彦(通称トシ)。言葉で言った覚えはないのに何故通じてるんだ?

「そりゃ知らないがな。お前の思念に反応する部屋じゃないのか、ここ」

 と。

「じゃァ何か。私が思えば誰でもここに出没するんかい?」

「じゃないの?」

「試してみれば」

 ショウとトシの言葉に素直に反応してしまうもお馬鹿かも。

「小杉さぁ〜んとか、堀内さぁ〜んとか、置鮎さぁ〜んとか、子安さぁ〜んとか、
呼べばみんな出てくるって言うんかい?」

 怒り気味にそう叫んだら、

「そんなに呼びやがって、俺ぁ、知らねぇ〜ぞ」

 そっぽを向きながらカズがボゾッ。

 と、本当に現れたのだよ、この4人。

「はぁ〜い、呼んだ?」

 とオリヴィエのような口調で現れた子安武人さん。

 小杉十郎太さんと堀内賢雄さんは、どうしてここにいるのか分からないという風情で、
お酒が入っているだろうグラスを手にキョロキョロ。

 置鮎龍太郎さんはとても冷静に、傍にいたショウに説明を求めている。

「なんだんだ、一体!」

 見事な小杉さんと賢雄さんの見事なハーモニー。・・・面白いかも・・・。

 止めておけば良いのに、は頭の中でどんどん声優の名前を挙げていく。

 と、出てくるわ出てくるわ。

 たちまち男性声優で部屋が埋め尽くされてしまった。むさ苦しい。

 自分で呼んでおいてなんなんですが、さっさと部屋から退散してしまう。

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 次の部屋に入って息をつく。

 まだキャラの方が可愛げがあったかも・・・とか思いながら。

 止めておけば良いのに、またしても知ってるキャラの名前を頭の中で思い描く。と、ま
たしても出てくる出てくる。ほとんどボーイズキャラ達。

 トップをきって出現した崎義一ことギイがに歩み寄る。

「どうして呼ぶんだよ。やっと託生と二人っきりになれて、これからって時に」

「いや〜、本当に出てくるとは思わなくて・・・、でも面白いわぁ」

「ふざけるなよ。オレ達の大切な時間をそんなくだらない理由で潰されてたまるか」

「と言われてもねぇ・・・」

 と、尚もブツブツ文句を言ってるギイにが言葉を返していると、何やら飛び出して
きた方の部屋が騒がしくなった。扉を隔てているにもかかわらず、には手に取るよう
にお隣の部屋の様子が分かってしまう。

 で、どんな騒動が起こっているかというと。

「大変だぁ。和彦さんの声が出なくなっちゃったぞ」

 この声の主は子安さん。

 何故だ? ギイの相手をしながらもしっかりと頭はその原因を探している。この部
屋に呼び出したキャラを一通り見渡してから視線をギイに戻す。

 もしや・・・。私と話してるからかな?

 ギイの声を演じているのはカズなのだ。ってことは、他のキャラと話し始めたら、その
声を演じてる向こうの部屋にいる本人の声が失われるのだろうか?

 ものは試し・・・。まだ掴みかからんとするギイを放ぽって誰と話そうか物色する。

 よし決めた! 南條晃司にしよう。

 つかつか歩み寄ってチョンチョンと肩をつつく。マイクを手にお唄の練習をしていた
ような晃司が唄うのをやめて振り向く。

「ねぇ、今後の活動のご予定は?」

 出来るだけ長く言葉を発してくれそうな質問を投げかける。

 とご丁寧にも手帳を取り出して、スケジュールの全てを語り始めてくれた。

「お〜、声が戻ったぞ。って、今度は奨ちゃんか〜? どうなってんだよぉ〜」

 お隣の部屋のカズが素っ頓狂な声をあげた。キャァ〜楽しい。面白い〜。晃司の話もそ
こそこに、遊びを得てしまったは次のターゲットを探す。

「ねぇ、鮫島蘭丸さん、剣道始めたの?」

「どうしようか悩んでるんですよ」

「どうして?」

 と心境を細かく語り始めた蘭丸くんの声を演じていらっしゃるのは置鮎龍太郎さん。

 やはりお隣の部屋ではどよめきが。楽しくて止められん・・・。

 は次から次へとこんなことをしてしばらくの間、遊んでいた。飽きてくると、キャ
ラ達を放って次の部屋へと向かう。

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 廊下に出たものの、そのまた隣に行くのは芸がないなぁと幾つか部屋を飛ばした。最後
の部屋の前に立ってプレート見る。読めそうで読めない・・・でも、最初の文字がどうや
らSらしい。そして三文字。もしや、これは部屋の番号を英語で書いてあるのか?

 そんなことを思いながらドアを大きく開け放った。どうせ何もありはしない。と高を括
っていたのだが、どうやらこの部屋は違ったらしい。

 目に飛び込んできたのは幾つかのベッド。その上で裸の男達が上になり下になり妙な動
きをしている。って言えば分かってもらえるだろうか?(ちゃんと言えってか? 言えれ
ば苦労しないんだァ〜!)

 ドアを開けたまま、目を見張る。呆気に取られて身動きすら出来ない。

 1番手前のベッドでは、カズに組み敷かれているショウの図。幸いにも下半身はシーツ
で隠されている。良かったとばかりにホッと息をついて、でもあまり見たくない光景だと
無意識にイヤ気な溜め息をついてしまう。

 が、見られた方はそれじゃ済まされない。その部屋にいた者全員がスッポンポンなど気
にも止めずベッドから抜け出し、の方に向かってくる。その先頭を切ってるのはカズ
とショウ・・・もちろんスッポンポン。

「勝手に見たくせに、その溜息とはどういうことだよ」

 とカズ。

「し、失礼致しました」

 慌ててドアを閉めようとしたが時すでに遅し・・・。閉まる前に男達が蹴り開ける。

 逃げる。追いかける男達。

「人の見といて逃げる気か。そうはさせるかよぉ。見物料は身体で払ってもらう」

「そんなのイヤだぁ〜〜!!」

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 果たしては逃げ切れたんだろうか・・・。
 このあとの展開は、あなたの想像にお任せ致しますです、はい・・・。

 

終わり

 



 

念のために申し上げておきます。
決して私は和彦さんや速水さんや俊彦さんの裸体を知っているわけではございません。

なので、顔はしっかり実写なんですが、身体はアニメという
夢ならではの構成になってます。

起きた瞬間、私は思いましたよ。
「夢の中でも想像できなかったわけねぇ」と。(笑)

私ってけっこう想像力に欠けていたんですねぇ。
だから最近ファンタジーが書けないのかなぁ・・・。