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絵本・詩                 NO.3

 

科学の絵本     NO.1

科学とは、関係を造ることを意味します。
人類が共通で使える生活の基盤を発見し創造することが、一般通念としての科学なのですが、他者と自分との間で、他者のために自分の行為を準備することが科学の第一歩なのです。
お世話すること、これが科学の始まりです。

 

おっぱい        みやにしたつや 作・絵      すずき出版     1才〜大人

 

おっぱい

ぞうさんの おっぱい
たくさんのんで おおきくなぁれ

おっぱい

ねずみさんの おっぱい
たくさんのんで やさしいこになぁれ

おっぱい

ゴリラさんの おっぱい
たくさんのんで つよいこになぁれ

おっぱい

ぶたさんの おっぱい
たくさんのんで げんきなこになぁれ

じゃあ これは?
そう、やわらかくて あったかい おかあさんの おっぱい

ぼくが このまえまでのんでいた おっぱい

おおきく、やさしく、つよく、げんきなこに してくれた
ぼくのだいすきな おっぱい

いまは―…
おとうとに すこーし かしてあげる

 

この絵本の言葉の響きの美しさはすばらしいものがあります。

頭韻のOとAの響きは、お母さんの抱きしめる感覚―Oと、子どもの気持ちを敬愛する感情―A、を子どもに伝え、子どもは安心します。
脚韻のIとEの響きは、子どもの自我を開き―E、子どもの自我をそのままでよいと支持します―I。

また、さまざまなお母さんの愛情の内容が動物に象徴されています。

「ぞう」は、お母さんの大きくて動かない愛情を表し、
「ねずみ」は、お母さんの細やかな世話を表し、―だから、やさしいのです
「ゴリラ」は、お母さんの力強さを表し、
「ぶた」は、お母さんの柔らかな感情を表し、―だから、打たれ強いのです

この絵本の中には、「たくさん」という言葉が繰り返されています。

「たくさん」という言葉が響きますと、子どもの体が活性化し、体をたくさん動かし、たくさんの表現をしたいと思うようになります。

すると、周囲の大人達は子どもの表現に動かされ、もっと子どもにかまうようになります。
すると、結果として、子どもは「強く」「やさしく」「元気な」子どもとして育つようになるのです。

この絵本は、一般の絵本とは違って、右から左へ読むように造られています。

すると、聴き手の視点は、左から右へ読む絵本の物語を体験するという外側からの経験とは違って、感情を内面から体験するものとなるのです。

 

 

いやだいやだ        せなけいこ さく え     福音館書店     1才7ヶ月〜大人

いやだ いやだって ルルちゃんは いうよ

なんでも すぐに いやだって いうよ

それなら かあさんも いやだって いうわ

いくら よんでも だっこしない

おいしい おやつも いやだって いうよ

わるいこの おくちには いきません

おひさまだって いやだって いうよ

くもに かくれて あめばかり 

まいにち ほいくえんに はいていく くつも

だいじな くまちゃんも いやだって いうよ

そうしたら ルルちゃんは どうするの?

 

1才半を過ぎますと、急にだだをこね始めます。

反抗期といわれる現象は、1才半、3〜4才、10〜11才、15〜18才、ほぼ7年周期で現れます。

1才半頃は、立って歩くことができ、「あーたん」というようなほぼ明瞭な言葉が発音される時期です。
触ることが大好きで、立体の知覚も、丸と四角の区別が付くようになります。
すると、心の発達過程の中では、「自分の意識」と「自分の経験が起こる場」が分かれて意識されるようになるのです。

ちなみに、3〜4才では、自分の意識と外の環境が分かれて意識されるようになり、
10〜11才では、自分の意識と他者の意識が区別されるようになり、
15〜18才では、他者の意識と世間の意識が区別されるようになります。

「自分の意識」と「自分の経験が起こる場」が分かれて意識されるようになる過程で、「母親の自分を支える愛情」を要求する思考が起こりますと、だだをこねるようになります。
すると、体が固く緊張し、表情がぶすくれてあまり動かなくなります。

体が柔らかくなり、母親に自分の世話を任せて嬉しいという感覚が戻ってきますと、だだをこねなくなります。

 

この絵本は、1才半の反抗期に読んであげますと、子どもの緊張を取って上げることが出来る絵本なのです。

「かあさん」が響きますと、お母さんが自分を愛しているのだなあという感情が起こります。
「おひさま」が響きますと、外のひかりや空気が気持ちいいなあという感情が起こります。
「抱っこ」が響きますと、外のひかりや空気で支えられているという実感が起こります。
「くまちゃん」が響きますと、お母さんや家族を愛したくなります。

すると、おかあさんを「呼び」たくなるのです。
すると、よけいな自我が消えてゆき、赤ちゃんから緊張がとれていきます。

 

1999年9月13日

 

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