キミ子方式絵画指導法・クレヨン画の基礎目次へ戻る

 

絵画と言語構造

 

 互いの人間存在コミュニケーションが成り立つためには、互いの人間存在の話し言 葉の意識の視覚の中に共通の言語のための構造が成立していなければならないのです。

 言語は、「内容」、「意味」、「方向」、「概念」、「単語」、「語彙」、「筋 道」、「構造」を持っています。
 そして、言語の構造は、視覚の構造と対応しています。

言語の構造 視覚の構造
物 質 関 係
内 容 フォルム  
意 味  
方 向 ムーブメント  
概 念  
単 語 立 体  
語 彙   空間・クロノス
筋 道   時間・カイロス
構 造   宇 宙

 松本キミ子さんの始められた、キミ子方式水彩画指導法は、視覚の物質的構造と、言語における「内容」、「意味」、「方向」、「概念」、「単語」、を認識するために重要な方法なのです。

 キミ子方式では、描き始めの一点を決め、そこから色違いを追ってつぎ、つぎと描 きます。
 そして、色は赤と黄色と青と白の水彩絵の具を混色して作ります。
 黒だけは、 赤と黄色と藍色を混色して作ります。

 

 内容・フォルム 

 描き始めの一点を決め、Bの葉っぱを描きますと、の フォルムを根元から葉先への方向で描くことになります。
 すると、葉っぱBは、
のフォルムの集合でできていることが分 かってきます。

 葉っぱは、のフォルムでできています。
 茎は、
のフォルムの集合でできています。
  右の花は、めしべおしべを中心として放射状のフォルムの 集合でできています。

 次のアとイのにんじんの描き方を比べますと、アは形だけで描いていますが、イはフォルム・内容で描いています。

 イの描き方をすると、内容・フォルムだけでなく、内容の集合としての形・概念も描けてくるのです。

 意味・色

 色は特定の感情を現しています。
  フォルム・内容はそれだ けで独立しているのではなく、特定の意味・感情と結びつい ているのです。

 

 方向・ムーブメント

 前掲の花の絵を見て下さい。
 各フォルムは、必ず方向を持っています。
 また葉っぱとしてのBは、根元から葉先への方向を持っています、茎のAは根元からお日様に向けての
の方向を持っています、根っこは、の方向を持っています。
 葉っぱと茎は、全体で
の方向を持っています。
 そして、この花全体は
の方向を持っています。

 この、各フォルム、各概念(葉っぱ、茎、花びら、根)、単語(花)、がそれぞれに方向を持つということを認識することは、とても重要なことなのです。

 

 概念・形

 フォルムが集合しますと、葉っぱや茎や花びらや根等の形が現れます。
  この形が概念なのです。

 ですから、概念の内包は、内容・フォルムと意味・色と方向・ムーブメントからできているのです。

 人間の思考が犯してしまう一番の歪みは、概念が一人歩きしてしまうことにあるのです。
 内容・フォルムや意味・色や、方向・ムーブメントの一部を欠落させたり、歪めて思い込んだりしたまま概念が一人歩きしてしまいますと、間違った思考がおこり、それを真実だと思い込んでしまうのです。

 

 単語・立体

 葉っぱや茎や花びらや根が集まって一つの花という種が存在しています。
 一つの種の植物や動物や魚類や鳥類や昆虫類や菌類や細菌類やウィルスや貝類や鉱物は、それぞれが単語を現しているのです。

 単語は、概念の外延になります。

 

 語彙・空間

 Aの絵の様に、花と鉢を描いたときには、花という単語と鉢 という単語をそれぞれ描いているのですが、一緒に描くこと で花という単語と鉢という単語の関係・語彙・空間・クロノスを描いていることになります。

 Bの絵の様に、薄い色で背景の空間を描いたり、色画用紙の上に単語とし ての花一輪を描いた場合は、描き手である自分と単語として の花一輪との関係・空間・クロノスを描いていることになります。
 このとき、描き手は自分という存在であり、描く対象とし ての花一輪は他者という存在です。

  Cの絵の様に、薄い色で背景の空間を描いたり、色画用紙の上に、花一輪と鉢を描いた場合には、花一輪と鉢との間に強い絆を感覚しそれが一つのグループ・関係・空間・クロノスであると感じます。
 すると、花一輪と鉢に一つの世間・第三者の存在を感覚し、それを描く描き手は自分という存在であることを認識し、花一輪と鉢という一つの世間・第三者を支えている自分という関係・空間・クロノスを認識するのです。

 

 筋道・時間

 左の絵のように、クレヨンや色鉛筆での重ね塗りでさざんかの葉を描こうとするときには、
@ゴールデンイエローがAのフォルムで感覚され、
A黄緑がAの フォルムで感覚され、
ついで、B赤がBのフォルムで感覚さ れ、
ついで、C青、D茶、Eオレンジ、F緑、Gピンク、H白がこの 順でAのフォルムで感覚されます。
  すると、水彩で描いていたときには一色でしか見えなかっ た色とフォルムが、実は多層のフォルムと色と方向の集合か らできていたことが感覚されるのです。

  これは、各概念に縦の歴史の時間・カイロスがあることからおこって くるのです。

 もちろん、単語にも歴史・カイロスがあるわけですし、語彙である関係にも歴史・カイロスがあります。
 単語に歴史・カイロスがあるために、さざんかの葉っぱだけでは右のように見えるのですが、さざんかの木と葉っぱを描こうとすると、同じ葉っぱの色とフォルムと方向が変化して感じられるのです。

 語彙である関係にも歴史・カイロスがあるために、私が描くさざんかの葉っぱと皆さんの描く山茶花の葉っぱは違ってくるのです。
  また、さざんかの葉っぱだけを描いたときと、さざんかの葉っぱとコップを描いたときでは、さざんかの葉っぱの色とフォルムと方向が変化して感じられるのです。

 

 構造・宇宙

 「内容」、「意味」、「方向」、「概念」、「単語」、「語彙」、「筋道」、の7つの要素を全て含んで、自分と他者、自分と第三者・世間、とのひとつの物語が事実として存在します。
これが、「構造・宇宙」なのです。

 「構造・宇宙」を基礎として文章が生まれるのです。

 

              1998年3月5日                 千葉 義行

 

音楽  バッハ  フランス組曲SuiteXLoure

 

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