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言葉の実現

9月15.16日に「治療教育を学ぶ会」が大阪で開かれました。

20人にみたないごく小さな会合でしたが、そこでは、私にとってとても喜ばしい現実が始まっていました。
この会では、一人一人が自己紹介を行い、それを全員がひたすらに傾聴するという、大切な伝統があるのですが、大体の部分を眉毛をひそませずに聴くことができたのです。

これまでの、私が眉毛をひそませる場合は、
@自分の思い込みで、全体を論理化しようとする態度、……罪
A自分の理想を他者にあらせようとする態度、 ……悪
で、これを持っている発言であると感じると、険しくなる顔を押さえきれず、正しい考え方をしゃべりだすことを押さえきれない自分がありました。

私は「その方は私の発言する内容を理解するだけの経験を私と共有している」 と感じているから発言するわけなのです。
しかし、私が理解して欲しいと思う方にはある程度私の本意が伝わっているのですが、私がターゲットにしている方以外はきょとんとしてしまい、私が粗暴な人だとしか思えなくなってしまうわけです。

これまでの私は(いまでもそうですが)、険しい顔をしてしまう自分と言葉を荒げる自分、を押さえることはすまいと思っていました。
「険しい顔をしてしまう自分と言葉を荒げる自分」は、私自身のコミュニケーション障害(鬱病、脳性麻痺、神経症、痛風、絶望、悲しみ、苦しみ、アルツハイマー・喪失(自分と他者の感情を失う))から起こるわけですが、それを努力で押さえれば新しいコミュニケーション障害(支配、アルツハイマー・喪失(自分と主の記憶を失う)、脳性麻痺、神経症、痛風、絶望、悲しみ、鬱病、罪、悪)が起こるわけで、……
コミュニケーション障害の連鎖を止めるためには、「自分のコミュニケーション障害の現状をひたすら見つめるだけにし、それを止める努力はしないこと」以外はないのです。

ともあれ、平和な会合でした。
皆さん一人一人が、一刻一刻を大切に生きておられ、それが皆さん一人一人の出会いの中で実っている。それでよいのだ……
一人一人のやろうとしている仕事がバラバラであるように見えても、一人一人の発言がバラバラであるように見えても、人類の中でのそれぞれの役割を果たしているからなのだ。

これまで、少数の方にしか受け入れられていない私でしたが、全員に「私の伝えたい言葉」がその方なりに伝わったことを感覚できうれしさでいっぱいになりました。

9月22日に「幼児虐待」に関する講演会がありました。
弁護士が講演したのですが、「幼児虐待」のケースが身近に起こっているのではないか?と感じたときにどのようにこうどうすればよいか、どのようなしくみであればよいか、という疑問には大変よく答えていました。
私は、社会の仕組みがその弁護士の講演の内容で作られていけばよいと思います。
しかし、一方でその講演の浅さにむかつく自分がまだいました。
「幼児虐待」をしてしまう親のかかえている問題はその弁護士自身が抱えている問題なのではないの?「虐待されている幼児」のかかえている問題はその弁護士自身が抱えている問題なのではないの?
他人を援助するという考え方の中に、「ひとごと」があり、「自分のこと」として、自分の経験として意識されていないことに情けない思いが起こってしまうのです。

9月23日に「登校拒否を考える会」のシンポジュームがありました。
講師の先生が急病で倒れてしまい急遽不登校を経験した子どもたちとその親たちがシンポジュームを行いました。
このシンポジュームはとてもすばらしいものになりました。
みんな10年以上も苦しんできたのですものね。自分の言葉で自分の不登校という経験を「これでよかったのだ」といいきれる人たちがそこにいました。
お父さんの発言:
私の気持ちは3期に分かれて起こってきました。
第1期は、自分の子どもを無理やり学校に連れて行ったときの自分、
第2期は、自分の子がその子らしく生きればいいんだと自分に言い聞かせていたときの自分、
第3期は、「自分の子がその子らしく生きればいいんだ」に肩肘を張らなくなった自分。
すると、彼の息子が、「ぼくは、こうやって父を育ててきたんです。」と、発言していました。
自分の経験を誠実に生き抜いていけば、「人類共通の言葉」に至ることができるのです。

ともあれ、9月15.16日、9月22日、9月23日には、発言しようとしていない私がいました。
私の言葉は、周囲の皆さんのほうから、周囲の皆さんの体と意識から、発声されているからです。

自分の「その言葉」は、必ず他者に伝わるときがきます。
自分の「その言葉を伝えようとする努力」がなくなったときにそれは起こります。
それは、自分の「その言葉が伝わるべきだと思う悪」が消えたときに実現します。

2001年9月22日
2001年9月25日加筆

千葉義行

音楽

バッハ

 平均律クラヴィア曲集T フーガ]]Wロ短調

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