昔ながらのサンゴの石垣が残る「阿伝集落」
奄美群島の喜界島は、本島の東側にあって、総面積58.87平方bの隆起珊瑚礁の美しい島である。
その太平洋岸の喜界町阿伝(空港より車で15分)には昔ながらのサンゴの石垣がある。集落に入ると、ツタが絡んだサンゴの石垣が海岸から山手へ蛇行しながら延びている。高さはおよそ2b、厚さは1b近くある。無造作に積んであるように見えるが、よく見るとしっかりと組積まれている。
石垣は台風常襲地帯の島の人にとってなくてはならないものだった。昔は集落沖のリーフで石垣用のサンゴ石を切り出し、人が背負ったり馬に引かせて運んだ。
サンゴの石垣は島のいたるところに見られたが、道路拡張や住宅建設で次第にブロック壁に姿を変えた。石垣が積める石工も数少なくなった。
そうしたなかで、阿伝は今もサンゴの石垣が健在である。集落のある人は「阿伝は台風の東風をまともに受けるため、集落民が石垣の大切さを肌で理解していた。と同時に保科三蔵さんや平田隆雄さんなどのような石工がいたこともあって現在に至っていると言う。」
喜界町も1987(昭和62)年から、サンゴの石垣が家々を囲う昔ながらの景観の保存、維持に取り組んでいる。阿伝集落では1987年と1989年に農村基盤総合整備事業の道路拡張工事があり、集落を貫く幅1メートルの道路が4メートルに拡張された。その際サンゴの石垣が取り壊されたが、地権者の了解を得て新たに復元されている。