腰痛/椎間板ヘルニア
ひとくちに腰痛といいましてもその原因はさまざまで、
・椎間板ヘルニア
・椎間関節性腰痛
・筋筋膜性腰痛
・変形性脊椎症
・姿勢性腰痛
・腰椎分離すべり症
などがあります。
1)椎間板ヘルニア
椎間板は脊椎の椎体と椎体の間にあり髄核と線維輪で構成されています。椎間板の中心部にコロイ
ド膠質の弾力性の球形の髄核があります。若い人では、その88%が水分で、70歳代では60%前後
に減少します。髄核の周囲には弾性繊維でできた線維輪があります。
椎間板ヘルニアは、線維輪の断裂により髄核が脱出し、神経根を圧迫し、腰痛や坐骨神経痛を発症
します。

線維輪の部分的な亀裂により髄核脱出のない潜在性ヘルニア(椎間板膨隆)でも神経根を圧迫するこ
とがあります。

髄核の脱出が中心部におこったものが中心性ヘルニアです。まれな疾患ですが、膀胱障害や直腸障害をおこすことがあり、外科的処置必要とすることがあります。

椎間板ヘルニアにより神経根やその周辺組織が圧迫されると、出血や浮腫がおこり、神経根が炎症をおこすことがあります。
椎間板の発症年齢は20~40歳代に多く、大半は特に誘因なく徐々に発症しますが、重い物などを持ち上げたことが契機となり急性に発症する場合もあります。急性発症では、寝返りもできないような激しい腰痛を現す場合もあります。急性発症から移行し慢性化したもの、徐々に発症し慢性化したものでは、緩解、再発を繰り返し、過労やわずかな不用意な体動で腰痛を現すようになります。椎間板ヘルニアの約半数の患者さんは発症時に腰痛を訴え、数日から数カ月遅れて下肢にしびれや痛みなどの症状を現すようになります。86%の患者さんは腰痛、下肢痛、下肢しびれ感を訴えられます。
手術以外の鍼灸を含む保存療法による経過観察では、年齢15~65歳(平均36歳)、調査期間1~10年(平均4年5カ月)では、「全く無症状」50%、「症状はあるが日常生活に障害なし」42%、「症状あり日常生活に障害あり」8%というデータがあります。
2)椎間関節性腰痛
ギックリ腰の最も代表的な病態が椎間関節性腰痛です。
椎間関節は脊椎の後方にある左右1対の小関節です。椎間板とともに椎骨間の支持、連結を行っています。この関節は上下椎の関節突起によって形成され、滑膜を有する完全な関節です。


椎間関節の関節包には脊髄神経後枝が豊富に分布しており、また関節軟骨部にも多くの知覚神経が分布してます。

したがいまして、この関節に変性や炎症が生じると腰痛が発症します。
椎間関節性腰痛の発症年齢は、急性発症では30歳代が最も多く、慢性の発症のものは中高年に多いです。不用意な重量物の挙上や体幹の捻転などで急性発症することが多いです。
3)筋筋膜性腰痛
筋筋膜性腰痛は、ギックリ腰として椎間関節性腰痛についで多い病態です。腰背部の筋は浅背筋と深背筋にわかれ、筋筋膜性腰痛に関与する筋は深背筋です。深背筋の中でもとりわけ関連の深いのが脊柱起立筋(最長筋、腸肋筋)と呼ばれる筋群です。

その他棘突起外縁部の多裂筋、回旋筋などが関係します。

筋筋膜性腰痛は、これらの筋や筋膜の過伸展、部分断裂、これらの損傷に基づく炎症などが病態の基礎になります。 腰背部の筋が酷使されると循環障害、酸素欠乏、疲労物質の蓄積をおこし慢性の腰痛が発現します。
筋筋膜性腰痛は、強い筋力が作用したときで、ゴルフなどの体の捻転で筋力のバランスが崩れたとき、重量物の挙上、長時間の前屈位姿勢などを誘因として発症します。痛みは最初はあまりひどくありませんが時間の経過とともに強くなる傾向があります。
4)変形性脊椎症
変形性脊椎症は、老化による脊椎全体の加齢変化を基盤とし、椎体の周囲に骨棘を形成する増殖性変化、椎間関節の加齢変化をおこします。

しかし、X線により椎体の変化が確認されても愁訴とは必ずしも一致するものではなく、疼痛原因は複雑です。椎体の変化は腰痛患者のみに認められるものではなく、40歳以上の成人であればごく普通に認められる生理的な変化です。50歳代になると男性では90%、女性では80%に骨変化を認めたという報告もあります。
変形性脊椎症は中高年以上に慢性的に発症し、50歳にピークがあります。
症状は腰痛を主とし、殿部痛と大腿前面の痛み、時に下肢症状を現します。痛みは体動により増強し、安静により軽快します。しばしば朝の起床時や動作開始時に痛みが強く、少し動いていると軽快します。
5)姿勢性腰痛
姿勢性腰痛は、日常の不良姿勢などが原因で発症します。腰椎の前彎が増強するとそれにともなって脊柱起立筋が拘縮をおこし筋の疲労が現れてきます。

また、慢性の筋筋膜性腰痛などで脊柱起立筋の過緊張が続くと腰椎の前彎が増強し、筋は持続的収縮のため血流循環が減少し、その結果筋の代謝が悪化し、筋疲労が進み、やがて筋の拘縮をおこして悪循環が形成されます。姿勢性腰痛は脊柱の彎曲異常に基づく筋の循環障害と疲労に起因する腰痛です。
姿勢性腰痛は慢性にのみ発症し、腰部のだるい感じ、張る感じ、ツッパリ感、持続性鈍痛などを訴えることが多いです。
6)腰椎分離すべり症
腰椎分離すべり症は、腰椎分離症、腰椎分離すべり症、仮性すべり症に分類されます。

腰椎分離症とは腰椎の関節突起部に離断のある状態です。原因は骨格の未発達な成長期におこる疲労骨折で10~15歳に好発し、それ以降の発症はまれであるとされてます。 スポーツを行っていたものは、スポーツを行っていないものに比べ、発症頻度が3倍以上になるといわれてます。しかし、分離症があるからといって必ずしもすべり症を発症するとは限らず、分離症がある場合のすべり症の発症率は10~30%といわれてます。
仮性すべり症は腰椎の変性に起因する不安定性が原因で、椎間関節に関節症性変化を生じ、関節突起間部の離断なしに前方にすべりを生じるものです。

腰椎分離すべり症は、腰や殿部に、重苦しい、だるい感じといった漠然とした痛みを訴え、下肢にも症状が現れることもあります。痛みは激しい運動、労作後におこり憎悪することが多いです。安静また活動を制限すると軽快することが多いです。
