渡辺玲子リサイタル           1999/5/15                           ヨコスカ・ベイサイド・ポケット

 

 渡辺玲子を聴くのは2回目だ。今日のプロは(1)ヘンデルのソナタ第4番ニ長調、(2)モ−ツァルトのソナタ第25番ト長調K301、(3)ベ−ト−ベンのソナタ第8番ト長調、(4)同、ロマンスヘ長調作品50、以上のプログラム。彼女の肉声が聴きたくて会場に足を運んだ、ナンチャって。

 黒っぽいメタリック・ゴ−ルドの重厚なスリムなドレスに身を包んで、野平一郎を伴って登場した。古典派や古典派の起源の話しは面白くなかったが、話し方や彼女の興味などがわかって、面白かった。やはり、素っ気ない話し方で、早口で、自分の主観は入れないで、しゃべっていることが多く(本で、調べた、とかいうことを羅列していたが)その記憶力と理路整然とした口調は音楽作りと共通している。この人間性が音楽性の基本となっているのだろう。

 一曲目のヘンデルが始まった。3楽章のゆっくりした楽章で、デリケ−トに音楽が流れたのが心地よかったが、やはり、ピリオド楽器のバイオリンでなくても、チェンバロ伴奏で楽しみたいものだと思った。

 曲間で、野平も話しをさせられて、キ−ボ−ド楽器の機能の発展やオルガンのピッチの問題が話題に上り、興味深かった。一方、彼女はバイオリンの一般的な話しをして、当時の気候や土地がらなどの条件だけがこれだけのストラディバリやガルネリの名器を生んだのだ、と珍しく主観的に語っていた。

 (2)は美しい、と思った。音の美しさを彼女からあまり感じることはなかったが、初めてそう感じた。逆にテクニック的には以前聴いた時ほど完璧だとは思わなかった。でも、立派な演奏だった。

 (3)以降がよかった。ベ−ト−ベンになると、精気が加わり、ロマン的な主観が彼女の即物的側面と融合して、バランスよく音楽が流れる。現代的な一つのベ−と−ベンのイメ−ジだという気がする。(4)の情緒的なアンダンテ・カンタ−ビレの旋律を借りて、きちっと演奏されると、脱帽せざるを得ない。 アンコ−ルはグルックのオペラからのこれまた、極上の旋律が紡ぎ出された。ブラボ−!