2020年2月に聴いたコンサートなど
@ 2月 1日(土) 芸大室内楽(奏楽堂)
A 2月 3日(月) 芸大修士古楽(奏楽堂)
B 2月 4日(火) ジャン・チャクムルのピアノ(ハクジュホール)
C 2月 6日(木) ヴォーカル・アンサンブル・エマルシオン(五反田ブンカセンタ)
D 2月 7日(金) 芸大オルガン科コンサート(霊南坂教会)
E 2月 8日(土) 映画「アンドレア・ボチェッリ」(シネマリン)
F 2月10日(月) 映画「去年マリエンバートで」(J&B)、千田寧子「眞篠俊雄Org 関連資料について」(第1ホール)、バッハのケーテン侯のための 葬送音楽(浜離宮朝日ホール)
G 2月11日(火) 映画「i新聞記者ドキュメント」(シネマリン)
H 2月12日(水) 齋藤碧(日本財団)、芸大博士課程 北村明子(奏楽堂)
I 2月13日(木) Moコンサート(奏楽堂)、武満の音楽、ミイラ展(科学博物館)
文楽 傾城恋飛脚、鳴響安宅新関(国立劇場 小)
J 2月14日(金) 文楽 新版歌祭文、傾城反魂香(国立劇場 小)、
読響アンサンブル(よみうり大手町ホール)
K 2月15日(土) Sキューブリックに「愛された男」、「魅せられた男」(J&B)
L 2月16日(日) OB交響楽団(杉並公会堂)、フーガの技法(県民ホール)聴かず
M 2月17日(月) ハイク(金冠山、他)
N 2月20日(木) モーニングコンサート(奏楽堂)、ピアノ・デュオ(第6ホール)
O 2月21日(金) 文楽「菅原伝授手習い鑑」(国立劇場)、Dデルケン(武蔵野 小)
P 2月22日(土) 萩原麻未(文化会館 小)、映画「樹の詩」(アテネフランセ)
Q 2月23日(日) 長谷検校没後百年(紀尾井 小)、映画「欲望の翼」(シネマリン)
R 2月26日(水) かおよ歌かるた 素浄瑠璃(紀尾井 小)
S 2月27日(木) ハンマスホイと都響のSQ(文化会館 小)
? 2月28日(金) 映画「盗まれたカラヴァッジョ」
「アニエスによるヴァルダ」(以上ジャック・アンド・ベティ)
? 2月29日(土) 映画「刺青」(カドカワ)、ヘンデル「シッラ」(県立音楽堂) 中止! 横浜合唱協会のロ短調ミサ曲(みなとみらいホール)
@2月 1日(土) 芸大室内楽(奏楽堂)
A2月 3日(月) 芸大修士古楽(奏楽堂)
B2月4日はトルコのまだ実に若い1997年アンカラ生まれのジャン・チャクムルのピアノをハクジュホールで聴いた。ステージにはベーゼンドルファーが置かれていた。まだ、あどけない子供っぽさを残した風貌の細身で長身の青年が現れた。現在はドイツで研鑽中とのこと。最初はDスカルラッティのソナタを4曲。最後のニ短調K517が見せ場だったが、左右の手のバランスは失われていて、素人の演奏のようだった。二つ目は彼のワイマール音大での友人であるエリック・ドメネクの「『白鳥の歌』への前奏曲」だったが、当日変更され、同作曲家の「ピアノのための短編小説」〜『かくれんぼ』が演奏された。3つ目のプロはシューベルトの白鳥の歌(リスト編)の前半は「愛の使い」から5曲目「別れ」まで。低域はベーゼンドルファーのためだか分からないが、豊かな響きだった。しかし、明らかにアルペジオなど練習不足がたたってタッチが不確実で、タッチが全く均一でなかった。こんな思いで後半も聴くのか、と思うとつらいものがあるので、前半で帰ってきてしまった。
C2月6日は4人組のヴォーカル・アンサンブル・エマルシオン(1986年生まれの櫻井元希と柳嶋耕太、1990年生まれの富本泰成と松村湧太)を五反田ブンカセンターで聴いた。昔のルネサンスやクラシカルなコーラスと後半はそれにプラス仲光甫(はじめ)を加えてバーバーショップのカルテットが披露され、喝采を浴びていた。
D2月7日は芸大オルガン科コンサートが例年催されている霊南坂教会に足を運んだ。ちょうどサントリーホールの裏山にあたる場所だろう。(1)ヴィエルヌのオルガン交響曲2番[2、3楽章を除く]を栗山美緒が、(2)フランクのコラール3番を森永ナディア真莉子が、(3)ロイプケのソナタ「詩篇94番」を加藤慶子が演奏し、後半には、谷浦綾菜が(4)リストのバッハの名による前奏曲とフーガを、尾崎麻衣子が(5)ヴィドールのオルガン交響曲[4楽章を除く]を演奏した。
E2月8日はマイケル・ラドフォード監督のイタリア映画「アンドレア・ボチェッリ〜奇跡のテノール〜」(2017年115分)をシネマリンで見た。先天性の緑内障で幼い頃から視力はほとんど無かったが、12歳の時にサッカーのボールを頭部に受けて緑内障が悪化して完全に失明する。そのあたりの母親のうろたえる場面などは実にリアルに描かれている。それ以前にも何回も視力回復の手術を受けていたらしい。何回目かの手術の時に、やはり事故で失明した年配の男性がオペラの美しい一場面を聴いていて、ボッチェッリに音楽をすすめる所は最も感動的だった。最初のこの場面でこれから先、美しい旋律がどう使われるのか期待されたが、それほどでもなかった。
F2月10日はまず、有名な映画「去年マリエンバートで」を横浜で見てから、芸大での千田寧子の「眞篠俊雄Org関連資料について」の発表を第1ホールで聴講し、演奏も聴き、夜は浜離宮朝日ホールで、バッハの珍しい(2)ケーテン侯のための葬送音楽「嘆け、子らよ」BWV244a(復元版)を聴いた。やはり、まず、聴けないであろう夜の部を記そう。上記の作品の前に(1)追悼頌歌「侯妃よ、さらに一条の光を」BWV198が演奏された。2曲とも珍しい作品なので、プレトークがバッハ研究の加藤拓未氏によってなされた。(1)は1727年9月5日にザクセン選帝侯アウグルト1世[1670-1733]の后、クリスティアーネ・エバーハルディーネ[1671-1727]が亡くなる。その訃報はザクセン選定侯国の領民にとっては大きな悲しみとなった。それに先立つ話として、夫アウグスト1世は大変な野心家で、ポーランド国王の座を手にしようと画策した。ポーランド国王はカトリック信徒であることが条件であったが、アウグストはあっさりと改宗してしまう。しかし后の方は夫が無節操にも安易に改宗してしまったのに反し、断固として反対しルター派の信徒を守ったのである。その経緯があるため、彼女には高い人気があった。ライプツィッヒではキルヒバッハとういう学生が音頭を取り、歌詞を当時の代表詩人であるヨハン・クリストフ・ゴットシェート[1700-1766]に、音楽をバッハに依頼して追悼礼拝は1727年10月17日にライプツィッヒの聖パウロ教会でバッハの指揮のもとに行われた。音楽は2部構成で、1部が7曲から、2部は3曲からなっている。合唱部分はもちろん素晴らしいが、第5曲のアルトのアリア第8曲のテナーのアリアも美しかった。さて(2)だが、作品番号がBWV244aとあるようにマタイ受難曲のBWV244に準じている。長くなるが、分かりやすいので、加藤拓未氏のプログラムノートをそのまま転載しておこう。
「バッハは1728〜1723年の間、ドイツ中部のケーテン宮廷で楽長をつとめた。領主のケーテン侯レオポルト[1694-1728]は、かなり音楽好きで宮廷楽団に対する予算も融通を利かせ、バッハにとってよき理解者であった。この領主のもとでバッハは自らの音楽芸術を自由に展開し、幸せな時間を過ごしたという。その後、バッハは1723年にライプツィヒ市の音楽監督に就任したため宮廷をあとにした。」
「それから数年過ぎた1728年11月29日にレオポルト侯は34歳で逝去し、葬送音楽の依頼がバッハのもとに届いた。バッハは葬送音楽《嘆け、子らよ》BWV244aを作曲し、これは1729年3月23〜24日にケーテンの聖ヤコプ教会で行われた追悼礼拝で初演された。指揮はバッハ自ら執った。」
「残念ながら、この葬送音楽の楽譜は失われてしまった。しかし、歌詞は完全に残っており、それを詳細に分析した結果、実は2年前の1727年4月に初演された《マタイ受難曲》初期稿BWV244bと、同年10月に作曲された(1)の追悼頌歌《侯妃よ、さらに一条の光を》BWV198から曲を選び出し、まとめた作品であったことが判明したのである。原曲が存在し、葬送音楽のうちレチタティーヴォを除いて、大半の楽曲は復元が可能であるため、今回、作曲家の松岡あさひ氏に復元版の作成を依頼。本日の演奏会は初披露となる。」
「復元できないとされるレチタティーヴォに関してはバッハ研究者デトレフ・ゴヨヴィの学説を採用し、、主に《マタイ受難曲》初期稿のレチタティーヴォ楽曲転用して充てている。それでも復元が難しい第13、16、21、23曲に関しては、松岡氏が今回のために創作したものである。」
ということで、後半は、ほとんど《マタイ》を聴く調子で聴いていた。大塚直哉指揮、コンマスが桐山建志のコーヒーカップ・コンソート(古楽器)、東京マルコ受難曲合唱団、ソリストは鈴木美登里(Sp)、青木洋也(Alt)、櫻田亮(Te)、小藤洋(Bs)。
G2月11日は映画「i新聞記者ドキュメント」[2019年、監督森達也、113分]をシネマリンで見た。東京新聞の記者望月衣塑子の歯に衣着せぬ記者会見の様子等を追ったドキュメント映画。東京新聞を取ろうかしらと思ってしまう。
H2月12日は芸大4年生の齋藤碧のヴァイオリンを赤坂の日本財団で聴いた。ピアノは同じく4年生の尾城杏奈。プロはウジェーヌ・イザイ[1858-1931]の「悲劇的な詩」とフォーレの第1ソナタイ長調作品13で、1時間足らずの演奏会。親交が深かった二人ということで、イザイとフォーレを選んだとコメントしていた。イザイを弾き終えて、「こんな天気の良い日に暗い曲を弾いてごめんなさい」と語っていたが、ヴァイオリンの達者なこともそうだが、内に秘めた情熱的な音楽は若者の心を捉えるのかもしれない。ガブリエル・フォーレ[1845-1924]は、やはり熱っぽいが明るく始まった。2楽章アンダンテ、ニ短調は詩情豊かな舟歌だが、内に秘めたロマン性は先のイザイに共通する。3楽章はスケルツォで、何と表現したらよいか、カプリッチョ楽章?目まぐるしく両者が攻防する。スタッカート、ピチカートが駆使される主部。トリオは詩情豊かに。コーダはピアニッシモで粋に終わる。4楽章、アレグロ・クアジ・プレスト。優雅で、伸びやかで、しかも、ロマン的な魅力にあふれている楽章が若々しく演奏された。「夢のあとに」がアンコールされた。
その後は芸大博士課程、北村明子のピアノ演奏を奏楽堂で聴いた。フランツ・リスト[1811-1886]の自作歌曲のピアノ編曲の演奏。魅力的な美しい旋律が装飾過多な編曲となって立ち現れていた。リスト像は単に超絶技巧のピアニストというだけでなく晩年が謎に包まれていて興味津々である。
I2月13日(木) Moコンサート(奏楽堂)、武満の音楽、ミイラ展(科学博物館)
文楽 傾城恋飛脚、鳴響安宅新関(国立劇場 小)
J2月14日(金) 文楽 新版歌祭文、傾城反魂香(国立劇場 小)、
読響アンサンブル(よみうり大手町ホール)
K2月15日(土) Sキューブリックに「愛された男」、「魅せられた男」(J&B)
L2月16日(日) OB交響楽団(杉並公会堂)、フーガの技法(県民ホール)
M2月17日(月) ハイク(金冠山、他)
N2月20日(木) モーニングコンサート(奏楽堂)、ピアノ・デュオ(第6ホール)
O21日の前半は文楽「菅原伝授手習い鑑」から、いくつかの段を国立劇場で観劇した。おとなりのお年寄りの方が国立劇場のチケットを束でもっていたので、「チケットはどうやって購入されてるんですか?」と質問したら、文楽が好きで、たまに大阪にも行って聞いていたが最近は体調がすぐれず、行かれません、と語っていた。ここの校倉会の会員だが、かえって、数日後に発売される一般発売を買っても同じだという。ネットでなく電話オンリーだと語っていた。こちらも電話で頑張っている仲間なので、校倉会入会はやめようっと!
30分で休憩に入ったので、3月の能楽堂のチケットを無いもの、と思って聞いてみたら、定例の回が正面通路側で取れた。のだが、後に2月26日現在で、この28日から3月15日まで、コロナウィルス関連で、国立劇場関係すべて中止になってしまった!
Dデルケン(武蔵野 小)
P2月22日は萩原麻未のピアノを文化会館小ホールで聴いた。またしても消化不良みたいな鑑賞になってしまった。確かに彼女の才能豊かなところは感じるし(静謐なタッチやニュアンスの微妙さ、精妙さ、それに打鍵のダイナミズムにも驚愕してしまう)、今回でもシュトックハウゼンを取り上げたりして、意欲的なプログラムを構成しているのだが、一貫する主調みたいな中心的な主軸となるものが感じられず、悪く言うと散漫な印象を与えているのではないか。確か、前回聴いたのは1年前の正月早々だった。ミューザ川崎で、全曲ドビュッシーのプロだった。それまで彼女は主にはドイツ、オーストリア系のものを扱っていたはずだが、何とも居心地の悪いドビュッシーというか、前半で帰ってしまおうかと思わせるほど、違和感のあるドビュッシーだった、あの感触をまた思い出してしまった。彼女の演奏に対してかどうか、分からないが、前半のアラベスクだか、ベルガマスクだかの途中で、お客さんが一人出て行ってしまったのを今さらながら思い出した。私自身も「これではたまらない」と感じたし、実にあの行動に同調しようかと思った瞬間を鮮明に想いだした。今回は あそこまでの違和感はないが、彼女が今思い、考えあぐねている体がよく分かる。突き抜けていず、戸惑いながら、現状に留まっている風である。バッハ、シュトックハウゼン、シューマン、ショパンというプロでなく、シューマンを中心に構成するなど自己のテンペラメントを再確認しながら、道を切り開いて行って欲しいものである、大器なのだから。アンコールの3つのショパンを聴いた後、上野の文化会館を出て、すぐにアテネフランセにむかった。
キルギス(最近はクルグスと言うらしい)映画には珍しいミュージカル映画「樹の詩」[アイベク・ダイィルベコフ監督、2018年、92分、DCP上映]を見た。その後、トークがあって、キルギス、いや、クルグズ映画の歴史(作家、兼、映画作家協会会長だったチンギス・アイトマートフはキーパーソンである)や この映画の中で使われている民族楽器なども実際に見られ、演奏も聴けたりして(三絃のコムズや口琴など)、有意義な時間だった。ミュージカルと言うことで歌も民族調を期待したが、ほとんど西洋風ミュージカルで、ちょっと肩すかしを食らった感じ!
Q2月23日(日) 長谷検校没後百年(紀尾井 小)、映画「欲望の翼」(シネマリン)
R2月26日(水) かおよ歌かるた 素浄瑠璃(紀尾井 小)
S2月27日(木) ハンマスホイと都響のSQ(文化会館 小)
?2月28日(金) 映画「盗まれたカラヴァッジョ」
「アニエスによるヴァルダ」(以上ジャック・アンド・ベティ)
?2月29日(土) 映画「刺青」(カドカワ)、ヘンデル「シッラ」(県立音楽堂) 中止!横浜合唱協会のロ短調ミサ曲(みなとみらいホール)