フローターで野池に沈没す
フローター、最初で最後の日


 ここは房総、とある野池。東京のトップが得意な店でフローターを買い込み、今日がフローター初挑戦。早速空気をシャコシャコ入れ始めるが、なんか俺のだけふくらみが悪い。よく見ると穴があいていてシューシュー漏れているではないか。こんな状態で池に出るのはヤだったけど、リーダーの強引な命令により出陣決定。応急処置としてガムテープを貼り、更に穴部分には噛んでたガムをくっつけ念入りに補修した。

 とりあえずみんなで水に浮かんでみた。最初は怖い感じがしたが、慣れてくると結構気持ちがいいもんだ。しかし気になるのは空気漏れだ。ガムとガムテープのおかげで漏れは激減したものの、いつまでもつのか非常に気になる。みんなに「沈んできているように見えたらおしえて」と、特に念入りに何回もお願いした。



沈没寸前








 しばらく釣っていて、なんとなく沈んできたような感じがしたので、「沈んでない−?」と聞いてみる。しかし仲間の答えは「へーきへーき、だいじょぶだよ」と言っている。こういうときの仲間の返事ほどあてにならないものはない。信じられるものはもう自分だけと腹をくくり、限界と思ったら上陸しようと決めた。


 ついに自分の設定した限界ラインに達してしまった。というのもウェーダーの背中部分から水が入り始めたのだ。このままではヤバイと必死に陸まで泳ぐ。やっと陸までたどり着いたが、フローターが異常に重たくて持ちあがらない。見ると、フローターのカバーと、空気が抜けてしぼんだチューブとの隙間に水がたっぷり入ってしまっている。それでも人間必死になればかなりの力が出るもので、ガバガバに水を抱えたフローターごと持ち上げてついに上陸した。

 ウェーダーを脱ぐと、もうズボンからパンツからビチョビチョだった。みんなに「沈んでいるならもっと早く教えてくれ」と言うが、「ちょっと沈んでいるようにも見えたけど大丈夫だと思った」と笑っている。なんと友達がいのない人達だろうか。その償いということなのか、みんなで空気漏れを修理してくれたが、この日以来フローターをふくらめていない。




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