豪雨にゴミ袋を着る男


 その日は天気予報でも雨が降ると言っていたし、空は今にも降り出しそうな雲行だ。なのに「Ando」は、「カッパは持ってきてないですけど、ゴミ袋に穴をあけて着ますから。キャンプとかで普通にやりません?」と言う。普通にやるのか?少なくとも俺はやらないぞ。スカパーで村田基が急な雨をしのぐのにゴミ袋を着たのを見たことはあるが、最初から雨が降るとわかっているこの状況では、カッパ持ってくるのが普通じゃないだろうか。
 二手に分かれて釣りを開始したら、間もなく雨が降ってきた。雨はしだいに激しさを増し、かなりの豪雨になった。それでも当然のごとく釣りを止めることはない。人間が我慢できれば、雨こそトップで釣れる絶好のコンディションなのだ。しかしすごい雨だ。もうカッパがしみてきて、中のシャツやズボンもビタビタになっている。別船の「Ando」は、本当にゴミ袋だけで凌いでいるのか気になるところだ。
 間もなくして、1艘のカヌーが近づいてきた。まさしくあれは「Ando」が乗っているカヌーだ。おお!確かにゴミ袋を着ているじゃないか。だけどもう全身ずぶぬれで、着ている意味がない。胴体の部分は覆っているのだが、頭、腕、下半身はまったくカバーしておらず、そのうえ、首と腕を通す穴からガンガンに雨が流れ込んでいる。「Ando」と一緒に乗っていた「Isao」の話では、時々ぐらぐらと船がゆれるのでおかしいと思ったら、「Ando」が寒さのあまり、ブルブルッ、ブルブルッと震えていたのだそうだ。写真で良くわかるが、一方は重装備でもう一方は無防備と、とても同じ天候で釣りをしているとは思えない面白い絵になっている。
 かわいそうなことに、この日「Ando」はノーフィッシュ。悪夢はさらに続き、お気に入りのビッグバドが結ばれたタックルを「Tamura」に貸してみろと奪い取られ、ヒョイと投げたら簡単に釣られてしまった。悲惨の追い討ち、まさに泣きっ面にハチ。
 結局この日は昼で早上がり。自分で着替えを持ってなかったので、着るものを借りて着替えることとなったのだが、パンツの替えまではさすがになかったので、ノーパンでズボンをはいていた「Ando」だった。


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