Kanna

カンナ、ノミの調整
こちらのBGMは、ベラチーニの「ジーガ」です。

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工作する人たちにとって、道具類は使いやすいこと、刃物類はよく切れることが大切、結局は効率のよい、いい仕事につながります。

できたものの音色とは、直接には関係はないでしょうが、美しい華麗なアーチに削り、繊細できれいな仕上げをすることになりますから
音づくりに対しては間接的な効果として期待できるものでしょう。

ここでは、私自身が身近な建具屋さんや大工さんたち、それぞれの名工といってもいいような方たちから伺った話、
それに、筆者のいままでの体験もまじえ、以下の内容の詳細を記述します。 ご参考になれば幸いです。

カンナの台を直すこと(台直し)の目的と方法
刃の研ぎ方=裏出し、中研ぎ、仕上げ研ぎ
砥石、そのものから平らに研ぐ
ノミ
 このページには、筆者の遊び心で、上のカンナのイラストを右に移動させる仕掛けをしてあるために Java Applet を使っています。
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 ◇ カンナの台を直す(台直し)の目的と方法 

まず、普通の日曜大工程度では無視されがちなカンナの台ですが、ヴァイオリンの制作現場では、 台までも正しく調整されていることが望まれます

なぜなら、表板・裏板中央の接ぎ合わせ部や側板の調整には、それこそ、ティシュ1枚以下の、ごく薄いカンナ屑がでて削れるほどの切れ味が望ましてからです。

とくに、1.5mm以下まで薄く削りたい側板では、厚切りでは逆目で刃が食い込んでしまい、 それでなくても薄い側板を折ってしまいます。

別のページにも書きましたが、ネックや裏板の表面、それに側板では、フィドラー・バックという 水平の杢(波目の斑模様)が入っています。

このフィドラー・バックが細かく、 きれいに入っているものほど材料の価格も高く、作業する側からすると、削りにくさと比例して難しくなります。

この水平の杢は、木の髄線がのたうつようになっており、それに光の反射で波目に見えています。

たとえば、波の頂点に向かっては、カンナの目は純目、頂点からの下りでは、やや逆目方向になっています。

そのため、いっぺんに深彫りしようとすると、必ず彫りすぎてしまったり、凹みをつくってしまいます。

そこで、刃の出し方を最小限に少なくし、髪の毛1本以下程度にします。

たとえば10回、カンナを往復させて削っても、削れる量は、ほんの0.1mmほど、というくらいに、よく切れるようにしておかなければなりません。

また、それくらい切れると、どんな細かなフィドラー・バックがあっても、たとえ節があったとしても、きれいな表面に削ることができます。

刃を抜いたら、台の表に、金属製の直定規で横・縦の水平面を、およそ2センチスパン、および、各対角線の水平度合いをていねいにチェックします。

部分的にあまりへこんでいない場合は、ペーパー程度でも修整できますが、凹凸がひどい場合、全体をいちどカンナで真っ平らになるまで削ります。

凹凸がもっとひどく、カンナで削るのも大変な場合は、電動プレナで削る方が早いでしょう。

そのとき、プレナの刃は極力薄めに出し、少しずつ、早押しせずにゆっくり削ことが肝要、電動プレナは回転する刃で削りますから、早く移動しすぎると、削った目が荒くなってしまうからです。

これも、直定規で、左右、中央、さらに両対角線がすべて、きっちり平らになるまで削ります。

ペーパーで磨る場合、少なくとも台の長さの倍程度、幅は台の幅の2、3割大きめの、丈夫な300番ぐらいの布ペーパーを準備します。

それを真っ平らな板に貼りつけます。

これには、裏面が粘着シートになっているものが市販されているので、使いやすいでしょう。

板は、木でも金属でもよく、私の知り合いのベテラン大工のS頭領は、長さ50センチほどの、3寸角の柱の切れ端を使ってやっています。

これで平らになるまで削ったりして、「台直しカンナ」の代わりに使っています。

台直しカンナは、カンナの台を修整するための専門のカンナです。

ちょうどヴァイオリンの板を削るスクレーパーのように、台の、ナラやカシの堅木を少しずつ、こすって削れるように、刃が台に対しほぼ直角に入っています。

これは、押したり引いたり、普通のカンナのように往復させず、引くだけで削るようにします。

スクレーパーでも、少し幅を広くした水平の刃なら代用できるでしょう。

カンナの扱いや、(台直しカンナの)刃の研ぎでさえ自信がなかったら、プロのS頭領も使っている
ペーパー方式
が合理的だし、 平均して平らになり、能率いいです。

全体が真っ平らになったら、台直しカンナ、または前述した台直し専門ペーパーで、刃よりすぐ上からはコンマ1、2ミリ、それより頭の方を低く、 コンマ3、4ミリ、刃の出るすぐ先の1センチ弱、また元の方の2〜3センタはまったくさわらず、中間だけをコンマ2〜3ミリ、平らにすきとる。

こうすると、刃先を、たったコンマ1ミリ出しただけでも、刃が材料にあたり、削れるようになります。

刃より上の方が少しでも高いと、それ以上に刃を出さなければ削ることができないし、
そうしたカンナは必要以上に刃をだすため、 ちょっとした木の目違いで食い込んでしまったり、
削りにくいカンナになってしまうのです。

また、刃の出口の幅(カンナ屑の通る道)も、仕上げカンナになるほど狭く、薄いものです。

こうした仕上げカンナの台で、切れない刃のままで削ると、そのカンナ屑が通り抜ける道が薄い分だけ、カンナ屑がすぐに堅く詰まってしまいます。

よく切れる刃だと、力をそんなに入れなくても、カンナを早く滑らせなくても、薄いカンナ屑がスルスルと気持ちがいいぐらいにでて削れるようになります。

 ◇ 刃の研ぎ方=裏出し、中研ぎ、仕上げ研ぎ 


ノミやカンナで、刃を研ぐのだからといって、ただ砥石で研げばいいのではありません。

絶対に必要なことは、刃の裏側が真っ平らになっていることです。

これには、裏研ぎ用として、専門の工具や砥石も市販されていますが、手っ取り早く、昔から使われている方法に、 「鉄板」と「金剛砂」の組み合わせで研ぐ方法があります。これが、いちばん安くて確実な方法です。

まず、平らな鉄板の上に金剛砂を少量だし、金槌でたたいて細かく砕きます。

さらに、ほんのわずかの水を加え、その上に刃の裏側を乗せ、木の板(棒状のもの)で刃をしっかり押さえて、 しこしこと研ぐのです。水が乾いたらまた少し足し、汗が出るぐらいこすります。

大工さんたちは、水を足すのではなく「ツバキ」をぷっと出してやっています。そのツバキの粘りけが? また、いいというのです。

磨っていると、黒くねっとりした、泥のようなものがでてきますが、削られた鉄と金剛砂の超微粉末ですから、 それをたびたび中央に集めて、こすりつづける。

水分がなくなるほどこすると、刃先や周辺が真っ平らの鏡面のようにぴかぴかと光ってきます。

この微粉末のねばねばが、 より微量子ののコンパウンドのようであり、鏡のような光に研いでくれます。

その鏡面は刃裏全体である必要はありません。刃裏は、中央部を少し凹めてあるので、先端の一部とその周辺まで一様に光っていれば、 真っ平らに研ぎ出されたことになります。逆目防止の「裏刃」も、同様に真っ平らに研ぎます。

別のある頭領のSさんは、メインの刃と、逆目防止の裏刃を、台につけたように二枚をぴったりと重ね合わせ、口に当て、息をきつく吸ってもスウーッとも空気が入らないぐらいに合わせているといいます。平ノミや平彫刻刀の裏も同様にして研ぎます。

私は、ヴァイオリンをつくりはじめるまで、カンナの研ぎには「仕上げ砥石」を使ったことはありませんでした。

こうすると、刃先を、たったコンマ1ミリ出しただけでも、刃が材料にあたり、削れるようになるのです。

刃より上の方が少しでも高いと、それ以上に刃を出さなければ削ることができないし、 そうしたカンナは必要以上に刃をだすため、ちょっとした木の目違いで食い込んでしまったり、 削りにくいカンナになってしまうのです。

また、刃の出口の幅(カンナ屑の通る道)も、仕上げカンナになるほど狭く、薄くなります。

こうした仕上げカンナの台で、切れない刃のままで削るとそのカンナ屑が通り抜ける道が薄い分だけ、 カンナ屑がすぐに堅く詰まります。

よく切れる刃だと、力をそんなに入れなくても、カンナを早く滑らせなくても、薄いカンナ屑がスルスルと気持ちがいいぐらいにでて削れます。

それでも十分、ベニヤやラワンの工作程度は、なんとか削れたからです。

ただ、ヴァイオリンの側板のように、堅木のカエデを1.3ミリという経木程度の薄さと、 微妙な削りが要求されるものでは、絶対に仕上げ砥石をかける必要があるし、また、仕上げ砥石で研ぎ上げたものは、 切れ味が全然違います。

 ◇ 砥石から平らに研ぐ 

 カンナの刃を研ぎ出す前に、まず、砥石から真っ平らに直さなければなりません。

それには、十分に濡らした中研ぎ砥石をコンクリートかブロックにこすりつけ平らになるまで研ぎます。

ブロックには、園芸用のフルイで、適度にふるった砂をまいておくと、さらによいといいます。

その平らになった中砥石でを使って、次には、仕上げ砥石もならします。こうして平らになった砥石ができてから、刃の研ぎに入るのです。

砥石に、刃を平らに押しつけて研ぎますから、曲がっていたり反っている砥石では、刃までも曲がったり、丸刃に研げてしまいますからね。

前に説明した名人級のS頭領は、砥石のならしに、15センチ×40センチ程の1センチもある厚い板ガラスを用いています。

ガラスの上に、海砂をフルイでふるった細かなものをバラまいて敷き、刃裏を鉄板と金剛砂で刃裏を研ぐようにして、砥石も研ぐのです。

その砂も、浜松の中田島砂丘のものがいちばんだと缶に入れて保存、

何年かに一度、アサリを採りなどにいった際にとってくるのだそうです。

名人のこだわりを聞き、私はすつかり感動してしまいました。

あの人のことだから、きっと中田島でも、渚からどのくらいの砂とか、砂山や、谷の吹き溜まりのものがいいとか、

砂丘の砂を手にとって、自分の指で感触を確かめ、納得して採集してきたものだと思うのです。

そうした平らな砥石を使って、刃表を何十回研いでも、丸くならないように、しっかり角度を固定して研ぎます。

刃をもった手が不安定だと、刃の水平度も不確かになり、刃が水平の鏡面むのようではなく、やや凸レンズのように丸く研げてしまいます。

そのためには、台所の鰹節削りのカンナにオプションについている、「刃研ぎ専用の三角形のサポーター」 (アジャスターといった方がいいか)を使うか、そうしたものを木片かプラスチックでつくり、それに刃を抱き合わせて研げば、初心者でもうまくいくでしょう。

そして、表を30回研いだら裏を1、2回そっとなでるように研いで仕上げます。

それは、前面だけを研ぐと、右図のように、刃先が裏側にまくれるようになりますから、それを落としてやるためです。

反対に、スクレーパーの場合は、刃先が「まくれ気味」になっている方がよく切れます。

研ぎ上がった刃先で、手の甲のうぶげがスーッと、カミソリのようにすれれば、すぐにでも大工さんになれるかも・・・。

 ◇ ノミ 

ノミも基本的にはカンナと同じように研ぎ、やはり裏出しをしてから刃表を研ぎます。

ヴァイオリン製作には不可欠の、半丸のノミや彫刻刀など用の砥石には、あらかじめすり減って使い勝手の悪くなった不要な砥石を、必要な細さ、長さにカットします。

砥石をカットするには、ディスクグラインダーにダイヤチップの刃をつけ、 それに、アールや三角に合わせて溝や出っ張りもつけて作っておきます。

ノミでも、カンナでも、一度、研いだ刃先を20倍〜25倍程度のルーペで見てみると、その研ぎ具合がよく見えます。

肉眼ではよく研げているようでも、ごく小さな刃こぼれがあったりします。これは、ぜひ試して確認して下さい。

1本の、カンナやノミのために、わざわざそれまでしなければならないことになりますが、楽に切れて、よい仕事をするためにはそれも不可分のひとつなのです。

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