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簡単にできる 日本伝来の「コ ク ソ」 (木パテ = ウッド・パテ) |
ここでは、いままでも何ページかに書いてきた木のパテ、「コクソ」について記述します。
当時、中学生?だった頃、近くの建具屋さんには道路沿いに作業所があり、
ときおり寄り込んでは、そのおじさんの仕事を見ていたのです。
ある日のこと、おじさん、ご飯粒とおが屑とこねて混ぜ合わせ、ちょっとしたキズに、木のパテとして使っていました。
そのときに聞いた、その穴埋め作業のことを「コクソをしているんだ」というのです。
ただ、今、自分がこの方法を使ったり、言葉を使うについて調べても、広辞林にも載っていなかったし、
そのときにはネットの検索にも引っかからなかったのです。
これはきっと自分の記憶違いか、この地方独特の方言に近い言葉なのか、
あるいは死語になったものか、はたまた、そうした特殊な職業の業界専門用語なのか?
自信がないまま書いてきましたが、つい最近、今までは使っていなかった検索エンジンで検索した結果、いくつかヒットし、
ごく一部の特殊な分野ではいまだに使われていることを知り、今回は、自信をもって紹介することにしました。
◇ コクソ (刻苧) コクソは、わたしのどこかのページに、「刻塑」と書くのではと推測して書きましたが、
そうではなく、どうやら「刻苧(こくそ)」、もしくは「木屎(こくそ)」と書くらしい。 |
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◇ コクソで埋まる理由 その理屈は簡単なものです。 木くずをノリでよく錬り、 粘土状にして穴を埋めるわけです。 私達はウルシは使いませんから、ノリにはニカワ、デンプン質、ボンド系、 エポキシ系などを、その都度、目的に合わせて使います。 例えば、耐水性を重んじるなら、エポキシ樹脂系の接着剤を使うべきです。 湿気や温度に関係なく、ただ「固く」したいのならニカワでもいいでしょう。 ニカワの固形物(注釈1.水分が蒸発して残った、ノリの残渣のこと)はきわめて固いですからね。 埋める体積が大きく、違和感ないものにしたいのなら、昔ながらのご飯粒やコーンスターチ・タイプのデンプン糊(注釈2.は末尾に)やボンドでもいいでしょう。 コンクリートだって、使う目的に合わせ、ブレンドを変える必要があることは賢明な読者諸兄はすでにご存じでしょう。 要は、つなぎとしてノリの役割をしているセメントに、骨材(増量材)である砂利や 砂とを混ぜてつくるコンクリート(モルタル)と同じ考えでいいのです。 もともとの木に、木の粉末(植物の主成分であるセルロースなど)をノリで錬ったもので埋めてやるわけですから、 コクソこそ、固まってしまえば、木そのものの組成にきわめて近い補填剤になり得るのです。それが、筆者がとくにこの方法をお薦めする第一の要因です。 |
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◇ ノリの濃度と骨材との関係 では、ノリと骨材とのブレンドする比率はどれぐらいがいいのでしょう。 ここで、例えば水溶性のニカワやデンプン糊、酢ビ系のボンドなどについて考えて見ましょう。 いずれのノリでも、水で薄め過ぎ、ノリ気が薄すぎれば、当然、食いつきが悪く、接着しにくいことになり、もろけやすくなるでしょう。 反対に、固すぎてノリ気がないほどだと、やはりくっつきにくいものになってしまいます。 また、ノリが多すぎて、増量剤としての骨材が少ないと、乾燥したときのヤセが大きく、何度も、何度も塗らなければ、穴は埋まりません。 それもそうです、当然、パテに含まれる(多くの)水分が蒸発した分、その体積だけは縮小するのは道理です。 その上、固まったものは、それはただのノリの固形物でしかありません。 そのためにも、一定の固形物としての骨材をブレンドするのです。 |
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◇ 骨材としてのおが屑?
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一般に、大きな穴を埋めるのには大きなノコギリ(ベルト・ソーや電動丸ノコなど)
の粒子が大きい「おが屑」がいいでしょう。反対に、こまかなキズや穴には、ペーパー掛けした際の微粉末が合います。 |
◇ テスト
今回はカエデ材を丸ノコで挽いたおが屑に対して、デンプン糊(一般に市販されている 事務用のものでも可[注釈3.は末尾に])、 木工用ボンド、ニカワの三種類のノリを使い、かつ、同じカエデ材に大きめの穴(直径12mm)と 小さめの穴(直径3mm)の、6つのパターンでテスト。
◇ 木材・粉末の採集方法 さて、私はペーパー掛けした粉を保存していることを書きましたが、簡単な採集法をご紹介します。 丸ノコのおが屑は、不用な材料を少し切れば、小さな穴ぐらいを埋めるぐらいのおが屑はすぐに集まります。 ご承知でしょうが、材料をゆっくり押して切ると、比較的、細かなおが屑になり、手早く切ると荒めになります。 (←そんなことは、説明不用ですよね。) 微粉末の方は、ごく小型の掃除機と、ディスク・グラインダーを使って採集すると、いっぺんにかなり採集できますが、あらかじめ、 ペーパー・パックを取り換えておくなり、下の写真のようなフィルターの場合は、中までよくきれいに掃除してからやって下さい。 そうしないと、ゴミやホコリまみれの微粉末になってしまいますからね。
手っ取り早い方法としては、掃除機のパイプ・ジョイント部に手ぬぐいか靴下のようなものを、 ゆったりと被せて押し込み、それから吸い込み口を軽く差し込んで使います。 それで、スイッチON。 吸い取り口の真ん前で、ガーガーとディスク・グラインダーで木を削るのです。 靴下や紙パックに、微粉末が集まるのは当たり前ですね。 ◇ 仕上がり状態 以下は、さらにもう一度、微粉末のコクソをしたものを乾燥後、ペーパー掛けしてあります。
ご覧のような結果になりましたが、これはあくまで補助的な救済処置としてのテクであり、 伝統ある技法ですから、ごまかしの裏技なんて考えないで下さい。 このような大きな穴では、やはり、木そのもので埋めた方が、ニスを塗ったときの色ムラが分かりにくくなるでしょうね。 また、こうした場合には、前述したように、あらかじめ白っぽくとか、ニスを塗った時点で同色になるよう、 絵の具で着色しておく方法もありかな、と思います。 下の写真・左側の右上に、白っぽく見えるのは、粉末の中に小さな鉋屑が入っていたためです。 錬って塗ったときには気がつかないまま 埋め込んでいましたが、むしろ、穴全体がこのカンナ屑のようなら、 共木で埋木したようで、ほとんど見分けがつかなくなったことでしょうね。 注 釈1.: 接着剤の三要素として、粘性、固形物、それにオープンタイムとが言われています。 粘性は、文字通り粘り気のことをいい、ベタベタかサラサラかの違いです。 オープンタイムとは、あらかじめ乾くまでの時間です。 接着剤の最高強度を出すためには、ものによっては一旦、 塗ったものを所定の時間をおいてから貼った方が、より強固に貼れるのです。 例えば、自転車のパンクの修理に使うゴム糊などは、一旦、完全に乾いてから貼りますね。 注 釈2.: コーンスターチ・タイプのデンプン糊というのは、わたしの本業・インテリア業者たちが 壁紙施工の際に使う デンプン質の、ノン・ホルマリン接着剤です。 注 釈3.: 事務用の市販されているデンプン糊(白っぽいもの)には、デンプンの分子結合を うながす触媒の目的でホルマリンが混入されていますが、 コクソ程度ではまったく問題ありません。 また、同じ事務用の糊として、ほとんど透明の、酢酸エチル系の糊も売られていますが、 同様に、 コクソに使ってもしっかりつなぎの役割を果たしてくれます。 余談ですが、お隣・中国では万里の長城をつくった際、日干しレンガにセメント(糊)的な効果を高めるために餅米を炊いて入れたそうです。 たかがお米ですが、さすが中国、何百年も保っているということが分かりますね。 |