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ヴァイオリンの ニスについてU HOME



ニスは大きく分けると、その使われている溶剤の違いでアルコール系とオイル系に分けられます。
アルコールは早く乾くし、一方、オイル系は乾燥に時間が掛かります。
しかも、オイル系の種類によっては、紫外線を当てないと乾かないものもあり、乾燥のために小さなロッカーをつくり、
その中で蛍光灯のブラック・ライトを点灯、紫外線を照射させて乾燥させている人もいます。

そのため、本によっては早く塗り上がるアルコール系は安物で、
オイル系の方が高級とランク付けして説明している人もいるが、
筆者はそのことにはまったく否定的。
ニ ス の 分 類
溶剤による違い アルコール系(メチルアルコール) オイル系(テレピン油、亜麻仁油など)
乾  燥 早い 遅い
刷毛塗り 刷毛は返さないで一方向に塗る 刷毛は、往復、返してもかまわない
塗  膜 薄い(*) 厚い(*)
(*)溶剤の量にもよるので一概に決められないが、一般的に・・・。

使用する樹脂の違い 天然樹脂系 合成樹脂系
キリン血、竜血(ドラゴンズ・ブラッド)、
粉末安息香(ベンゾイン)、ガンボージ樹脂、
松ヤニ、乳香の樹脂(ガム・マスティック)、
などなど、いずれも植物由来の樹脂。
また、防腐効果と着色を兼ねてミツバチがつくるプロポリス樹脂を加えることもある。

酢酸エチル、ポリウレタン樹脂などの石油化合物。
市販されている一般の工作用ニスの大半がこれ。

溶剤は、石油系のペイント薄目液。
各種・天然樹脂

ドラゴンズ・ブラッド樹脂


◇ クレモナのニスの作り方
 さて、100年以上も前の、イギリスのヴァイオリン研究家ヘロン・アレン著「Violin Making as It was and is (ヴァイオリン製作 今と昔、出版*文京楽器製造(株)企画部)」の中に、『クレモナのニスの作り方』が載っている。


 

 しかしながら、前ページでも説明した通り、いずれも過去の研究者たちがいろいろと憶測した結果であろうと考えられるから、ここではその中の一部は紹介するが、大半の詳細はあえて割愛させていただくことにする。

  その当時の研究者のひとり、チャールズ・リード氏が、1872年8月「Pall Mall Gazette」に載せた手紙をできるだけ原文通りに引用するとして、1.ベースはコハクで(琥珀)で、当時のイタリア人が透明度を損なうことなくコハクを溶かす方法を知っていたという説。ご承知の方もいるでしょうが、コハクは古い松脂が化石化したもので、アルコール程度の溶剤には溶けない、とされている。

 筆者も一時期、こだわってコーパル(まだ化石化していない若いコハク)やコハクまで買ったりして溶かそうとしてみたことがあった。
 とりわけ、コハクはスピルバーグの映画『ジュラシックパーク』にも使われたことがあり、そんな興味から、コハクを使って自分用のネクタイピンをつくったこともあった。
 ご承知の方も多いでしょうが、コハクがまだ松ヤニのとき、止まった蚊がそのまま化石化し、その蚊は、多分その当時、生きていたジュラ紀には恐竜の血を吸っていただろうという仮説から始まる。そのコハクからの中の蚊の腹から、蚊の血を分離し、かつ恐竜のDNAを取り出して培養。ジュラ紀の恐竜を再生しようとするたいへん面白いSF映画。

 ボクが買ったメキシコ・コーパルは、ほんのわずかずつアルコールに溶け、自前のニスにブレンドしたこともあった。
 だがその後は、ニスは欧米の専門店で売られているオイル系の既製品を、テレビン油で溶かして使っている。
 何故なら、何台もつくるうちに、「ニスが音に対してはそれほど支配的ではない」だろうという推論に基づく考えに至ったのだ。
 極端に言えば、古くからの製作仲間の忠犬さんは、ヴァイオリンは白木がいちばん鳴ると力説している。自分でも、所詮ニスは共鳴箱の表面の何ミクロンという世界。それが何百、何千ヘルツのヴァイオリンが出す低周波にそれほど大きな影響をしめさないだろうという論拠からだ。
 やはり、箱に使う素材の質量に見合った厚さの削りであったり、組立がいちばん影響するものだと確信している。
 


個人輸入しているヨーロッパ (缶入が SVS Tone Wood 社)と
アメリカ (瓶詰 Inter National Violin com 社)のニス

木の樹種や組織の違いで、何度も何度も塗り重ね、このようなテスト塗りをして再現性を高める。



ドラゴンズ・ブラッド樹脂・中身の色

2016年 9月 10日

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