Butterfly |
ツマグロヒョウモン 蝶の観察記録 |
05.9.18 |
ツマグロヒョウモン ♀ | ツマグロヒョウモン ♂ | ||||||
おりしも三年前ほど前のこと、裏庭の柚の木に大きなグロテスクな芋虫。 |
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背中には、コブラのような大きな目玉模様が入っている。 これは、たぶん鳥などの外敵に食害されないような工夫?が なさせれて進化したものと、私は推測している。 このアゲハの「食草」は、もっぱら柑橘系の木、 そのために我が家の裏庭、柚の木についていたもの。 |
彼?は、手を近づけたりすると、柑橘系を食べているせいか、 腐ったミカンのような独特の匂いを出す角をニョキッと出し、近づく外敵を威嚇。 頭のてっぺんから、ニョキッとV字型に突き出している黄色い角がそれ。 |
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その新聞記事を見て以来、家内ともどもチョウに興味を持つようになり、 ここ富士山麓でも南国生まれの、このツマグロヒョウモンを何度も見かけたことがあった。 外を歩いているとき、車の運転中、仕事で出先に行ったときなど、意識しているせいか、ほんと、よく見かけるようになった。 その年の春先、雨上がりの後、『珍しい、きれいなチョウがクンシランにとまっているよ』と 家内の呼び声。 |
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こちらが、ツマグロヒョウモン ♀ | |||||||
開花したクンシランに、まだ羽化して間もないチョウがとまっていた。 このチョウが、後日、興味をもつことになったツマグロヒョウモンの メスであることは、その時点では知るよしもなかったが、 その美しさに感動し、早速、デジカメで撮影。 |
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そんな一抹の期待もあって、今年の春先からはスミレを鉢植えにしたり、プランターに移植して、 家内は、ときどきツマグロヒョウモンの幼虫の存在をチェックしていた。 8月末、ようやく庭のスミレに幼虫が食べた痕や、葉の裏に小さな幼虫(ケムシ)がいるのを家内が発見した。 |
幼虫からサナギへ | |
気がついた最初は、数ミリしかない小さな黒い毛虫状の幼虫。 トゲトゲはあっても、刺さないというから安心して触ることもできる。 |
それが数日のあいだに、背中にオレンジ色のストライプが入った、 4、5センチの幼虫に成長するのだ。 |
9月2日には、脱皮して茶色のサナギになった。 左下の赤丸には、脱ぎっぱなしの靴下のように、黒い幼虫の抜け殻が・・・。 そのサナギは、透明のプラスチックの水槽に入れ替え、毎日、観察をつづけた。 黄金色だったサナギも、翌日には黒褐色にかわり、固く身を閉ざしているように見えるが、でも触ったりすると、身をくねらせてピクピクと動く。 このまま越冬するのか、もう一度羽化して成虫として生きるのか、 そこまでの生態はわからない。 それが9月11日の早朝、家内の「羽化したよー」の声。 グロテスクなサナギから脱皮して、いよいよ立派なメスの成虫が生まれた。 |
羽化 〜 成虫 | |
黒バックを背景に、家内のためにつくったガラスケースの中で羽化。 プラスチックではなく、よく拭きこんだガラスだから画像は鮮明。 |
居間の窓辺には、咲いたランの鉢が置けるように得意の木工で、その窓枠に、巾12cmほどの化粧板をつけてある。 その上に置いたオンシジュームの鉢、その花にとまらせて観察。 でも、なかなか思うようなポーズをしてくれない。 それもそうでしょう、彼女らから見ればカメラをもった大人がふたりいるわけで、 生まれて初めて目にする外敵にでも見えたのでしょう。 すぐに後ろ向きになるのです。 |
メスには、ツマグロの和名通り、羽の先にはっきりとした 白黒の模様が入いっている。 この模様さえも、外敵である鳥から見れば、怖い目玉のように見えるだろうし、 オスから見れば、きっと、はっきりメスと認識できる模様なのだろう。 |
いつでも戸外に放せるように、居間の窓辺に場所をうつして見ていたら、セミの羽化と同様、二度ほどオシッコをしたり、何度も何度も、ゆっくり羽ばたく練習もしていた。なんと美しく、健気なチョウ! その繊細な美しさに、ただ、ただ感動する。 羽化がはじまってから数時間後、彼女?は元気に飛んでいった。 |
この写真は、当初、使わずにボツにしたものでしたが、 先日、MOを整理していて古い写真の中から見つけた。 その理由は、羽化したばかりのチョウを、 家内が嬉々として手の平に載せ、私に見せに来たときのもの、 でも、このチョウの特徴がほとんど写っておらず、それで使わなかったもの。 しかしながら、亡くなった家内の手が写っているし、たかがチョウのことでも、 本気で喜ぶ、その姿や笑顔が想いだされて、あらためて載せることにした。 (July 16 2012 追記) 天真爛漫な、笑顔がとてもチャーミングでした。 |
9月14日朝、3匹目にようやくオスが生まれた。 オスの羽はやや単調、 ツマグロではなく、 ただの豹模様だけ、まさに、大阪のおばちゃん好み? ベランダで咲いていたランにとまらせて、パチリ! 家内も大喜び。 たわいもない、たかがチョウ、されどチョウの世界。 |
地球の温暖化が叫ばれていても、 なかなか実体感はもてなかったし、 また、実際に目にすることもできない。 だが、そんな自然界の知らないところで起きている生命の偉大な営みを、目の前に見せてくれたし、夫婦の会話も大きな話題となって盛り上がった。 その後、家内が集めた幼虫たちは 次から次へとサナギになり、羽化していった。 |
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南国の島からの渡りチョウとしてはアサギマダラも有名で、このチョウもなかなかファンタスティックなチョウ。 全国には、捕獲しては羽根にマーキングし、追跡調査をしているグループあるほどファンも多い。 |
観察用のガラス・ケースを作成 | |
所定の大きさに育った幼虫は、食事をやめ、高いところによじ登っていく。 そこは日陰であり、羽化しても十分な余裕があり、外敵からも見えないような 安全な場所を選んでいるようにも見える。 左はすでにサナギになっている。上のものは、さらに高いところによじ登っている。 |
尻から糸を出してぶら下がり、体をやや縮めてサナギになるのを待っている。
そして、逆さにぶら下がったまま、そのまま一晩以上じっとしている。 |
下の個体は、翌朝、さらに縮んでいた。 | ほんの2、30分、目を離した隙に、すでにサナギになっていた。 それくらい、短時間に彼らは脱皮してしまう。 だから、サナギからの脱皮がなかなか見ることができないのです。 |
サナギからの脱皮は、逆さになったままの姿勢で、 ちょうどボディ・スーツを頭から肩、胸と脱ぐように、モゾモゾともがき、 上になっている尻の方に押しやって脱いでいく。 |
ほんの3、4分のできごとで、すっかりサナギになっていった。 左下には、羽化し終わってサナギにぶら下がっているオスが一羽います。 ご覧のように、プラスチック製の蓋には、サナギや抜け殻がいっぱい! |
このケースの向こう側に見える、青いチェックのシャツは、今は亡き家内。 意外にも、サナギから羽化するチャンスの画像がなく、大声で呼ぶ家内の声にデジカメをもって駆けつけて撮ったもの。 考えてみれば、セミのように、まだ暗い明け方とか真夜中ならいざ知らず、昼間だと昆虫にとっては羽化はいちばん不用心な生態。 だから、短時間である方がチョウにとってはベターなわけである。 そのために、これだけ見ていてもいつも見逃していたのだ。 |
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このようにして、9月末日までには我が家のプランターや裏庭で見つけた幼虫、
30匹はすべて羽化させ、外界に放った。 自然界の中だと、そのままでは、きっと、鳥や、アリ、カマキリ、アシナガバチからスズメバチなどに、何割かは食べられていただろう。 よく世話をしていた家内も、ケースの向こう側でやさしく見守っている。(ブルーの半袖シャツ) また、来年帰ってきて我が家のスミレに卵を産み、その次の年も、またその次の年も、この子たちやその子供、さらに孫やひ孫たちにも逢いたいものである。 |
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