| remaking |
リメイク |
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「温故知新」 = 古きをたずね、新しきを知る =
リメイクの面白さは、やったものでなければ分からないかも知れません。
とりわけ、わたしのように独学独歩の人間にとって、自分が制作したもの以外の楽器を目にするチャンスは、
こうしたものの修理・修復するときしかありません。
中を空けてみると、自分のやり方でない方法を見たり、かわった手法など、細かな部分であらたな発見があります。
それは、とても勉強になりますし、興味をかきたてるものです。
古いボロボロのものや量産品でさえも、少し手を入れると、
外見だけではなく、音色までも飛躍的に向上させられる、という楽しみがあります。
ともかく、古いものが良いとされているヴァイオリンのことですから、その楽器のもっている特性を充分生かせるように、
また、十分、使える楽器としてよみがえらせるようにリメイク計画をたてます。
ここでは、リメイク(remake=つくり替え)という言葉を使いましたが、
一般に用いられているリペアー(repair=修復)の方が適語か、
リニューアル(renewal =復活・回復・再生 )がいいのか、
または、リフォーム(reform =改良・改善)にしようか、ずいぶん迷いました。
自分自身のものだと、蓋を空け、削り直したり、つくり直すぐらいまで手を入れることが多く、
とりわけ、自分のもつ独自の世界観でやっていますから、ここでは、あえてわたしは「リメイク」と表現しました。
その、実践したリメイクの実例いくつかをご紹介いたします。
なお、修理・修復を目的とした「リペアー」のページはこちらから。
| ◇ リメイクの目的と結果 | 修復や再調整について・・・ |
| ◇ 最初のリメイク 鈴木ヴァイオリン初代・鈴木政吉作 | 入手経路、楽器のグレード、ばらし、削り、ニス仕上げ、フィッティングなどとその結果。 |
| ◇ チェコ製スタイナー型オールド | 「古いものを手に入れたので、使えるようについ欲しい」と、 友人からの依頼されたもの。 |
| ◇ 一枚板・手工品?オールド | オークションで手に入れた古いもの |
| ◇ 鈴木政吉・W4 | 知人に頼まれて、故人の遺品だったものを使える状態に・・・と。 Dec.2001追記 |
| ◇ 鈴木ヴァイオリン・特No.2修復 1966年製 | アンサンブル仲間のピアノ教室をされている Y先生からの依頼で、 そのお弟子さんが若いときに使っていたというもの。 |
| 鈴木ヴァイオリン・3/4 No.220 1972年製 | 修復過程をスライドショウでご覧いただけます。 |
| ◇ 糸川英夫博士制作の3号機 2004.4 | K.Iさんから譲っていただいた、博士の習作だったものを使える状態に・・・。 |
| ◇ オーストリア製のリメイク 2008.5 | オークションで手に入れたやや古いもの |
| ◇ チェコソロバキア・1924年製のリメイク 2008.11 | オークションで手に入れた少し古いもの、裏板が一枚板で結構いいもの。 |
| ☆ マッジーニ・タイプ オールドの修復 (08.11) | 本物なら、すっごい掘り出し物ですが・・・? こちらはリペアーのページです。 |
リメイクの基本は、改善であって、決して改悪であってはなりません。
もし、その楽器が、本当に古い、有名な製作者の手によるいい楽器であったら、わたしは絶対に手を出しません。
技術がそこまでいっていない自分が手を入れ、変に改造することで、 そのものの骨董価値だけではなく、その楽器の真価を半減させてしまうからです。
このページでいう「リメイク」とは、そうしたおそれのない量産品やレッスン生向きの楽器、 名もないメーカーのひどく壊れているもの、また、長期間使われないで保存状態が悪く、 手を入れなければ使い物にならないもの、そういったものを対象にして書いていることを、ぜひ、ご理解下さい。
そして、週刊誌の裏によくある美容器具の、「使用前・使用後」の広告ではありませんが、 少なくとも、外観については、蝶がさなぎから羽化して大変身するような違いを期待したいものです。
それに、完全にフィッティングすることで声量、音色とも一段とよくなれば、 リメイクは大成功といえるでしょう。
入手の経緯 楽器のグレード ばらし 削り ニス仕上げ フィッティング 結果
鈴木ヴァイオリンの初代「鈴木政吉・製作」(大正末期か昭和初期の量産品)
親友からいただいた鈴木政吉(鈴木ヴァイオリンの初代)のリメイク
’98年のある日、小中学校で同級だった親友のSから突然の電話があり、彼の奥さんがやっている仕事の関係で、 たいへん世話になったから礼をいいにくるという。
そして、机の上に並べた何台ものヴァイオリンを見て、 『あっ、忘れていたけどお前にヴァイオリンをやろうと思っていた』といった。
『どうしたんだ』とわたし。
『叔父貴が死んで、叔母からヴァイオリンを一丁貰ったんだか、同級生でヴァイオリンをやるのはお前ぐらいだから、 やろうと思ってしまい忘れて・・・』。
『叔父さんって、楽士かなんかだったのか?』。
『いいや、戦時中、憲兵隊として満州にいっていたんだけど、それで持って帰ってきたものだそうだ』。
そこで、わたしは考えた。 戦時下の満州、日本兵とその暴挙の数々? ひょっとして、ひょっとするとすごい名品かも・・・と勝手な解釈をして期待をふくらませた。
どんな状態で保存されていたのか心配になって、それからは、割れやキズ、弓やケースの有無など、 矢継ぎ早の質問ぜめ。
ともかく、そのヴァイオリンは戸外のガレージ(トタン葺き、トタン張りの物置風の建物)の棚に 1年近くのせたままだという。それも、ケース入りではなく、スーパーの買い物袋に入れた状態というのだ。
そんな場所では最悪だから、すぐにでも見せてくれということになった。次の日曜日。ちょっと出かけたあいだに、我が家の裏口に、そのスーパーのポリ袋は置いてあった。
ニスは、ところどころ剥げ、すり傷だらけ。
弓の馬毛は、お岩さんの乱れ髪のようにばらけて、見るも無惨な様子。
ラベルは、ところどころむしばんでいたものの、次のように読めた。[ Manufactured By Masakichi Suzuki No.???? ]
そして、同心円をずらしたようなデザインの、かつての鈴木のマークも。
つまり、鈴木ヴァイオリンの初代、鈴木政吉のものだった。
しかし、よく見ると指板やペグ、テールピースはカエデ材を黒く塗ったもの。(上の写真、手前側の指板)
弦は、3本は裸のガットが張られ、E線だけはスチール、それだけでも古さを感じた。
側板と表板、裏板の接合部の貼り方に、チリ部分の凹凸があったり、ネックのスクロールの削りもやや均整がとれていない。
また、裏板には、フレーム(ヴァイオリン杢)はあるもののお情け程度。
鈴木政吉は、国産の木材を多用したことが無量塔蔵六著「ヴァイオリン」にも記述されている。
それは、第1次か第2次かは分からないが、ともかく戦時中、神の国「日本」の木が外国の木に負けるわけがないということで、 輸入が規制されたり、そうした輸入材を使うことは非国民あつかいされた時代だったという。
今では信じられないことだが、そこで、やむなくメーカーの多くは、国産の木を全国、探し回わり、使ったと書かれているのだ。
筆者も、富士山のカエデを使った経験から、裏板は、木の随線と杢から国産のサワカエデか ヤチカエデではなかろうかと推論した。
表板も、政吉が愛用したという「エゾマツ」か「ニホンツガ」のように見えた。
そのような事実から、紛れもない政吉が量産化した、その量産品ということを親友に伝えた。
いずれにしても、そのままでは使い物にはならないし、手を入れなければならないことも伝えた。
その結果、『お前にやったものだから、煮ても焼いてもいい、好きなようにしてくれ』という。 そのため、安心してリメイクにとりかかれた。早速、指板など取れるものは取り去り、汚れを落とし、表面をきれいにするためにメチルアルコールで拭いた。
アルコール系のニスをかなり厚めに吹き付けしたものらしく、アルコールで拭くことで、 刷毛塗りに換算して7〜8層分を剥がしたことになる。
表板をはずして中を見たら、裏表板とも四方反りカンナで荒削りしたような刃のあとが残っていて、 わたしが普通につくるような、スクレーパーできれいに削ったりする、なだらかなグラデーションではない。
側板も、バンドソーでひきっぱなしのままで、明らかにはっきりしたノコ目が残る。
そして、ハンドメードの製作者ならかならず三角に削りとるライニングも長方形のままだったり、 ブロックの削りも必要8分といった状態。そうした荒い削りの気になっている部分について、 キャリパーでクラデーション確かめながら、ほとんどはスクレーパーを使って丁寧に削り込んだ。
響板を貼り付けてからは、ニス仕上げ。
表板は、上述したとおりの国産材らしく、やや晩材の目は荒いものの、しっかりした固めの目をしていた。
そのため、表板はやや標準的な数値の、周辺の薄い部分で2.5mm、中央部の厚いところで3.5mmとした。
裏板は、同 2.5mmから4.5mmのグラデーションに仕上げた。
バスバーのアーチングも、自分の好む形ではなかったので、ほどよく修整。
また、スクロールの左右非対称の歪みや、シャープさに乏しいところも、 気にならない程度まで修整することができた。
新しく作り替えた黒檀の指板と、はずした黒い塗装仕上げの指板とともに、その削り上がった状態が、 トップの写真である。
指板などの、部品の制作・その詳細は、こちら →
ヘッドの部分が白っぽく、ニスがはがれて写っているのは、その溝の彫りを深く彫りなおしたためである。
ここ1年ほど常用しているアルコール系のものに、プロポリス(ミツバチがあつめる樹脂)を混ぜたものを使った。
プロポリスを混入することで、やわらかな仕上げのニスにすることと、渋い茶色系に仕上げることができる。
透明に近いものまで、合わせてそれぞれ10回ずつは塗った。本当にオールドと呼べるものかどうかは分からないが、 ペグやスボアー、テールピースにエンドピンは、セットとして在庫してあったローズウッドのものを使った。
同じデザイン(ヒルモデル・タイプ)のボックスウッド製のものも持っていたが、ローズウッドの方が、 その木目が生かされそうだと思ったからだ。フィッティングについての詳細は こちらもご参照下さい。
稽古用として使おうと思っていたので、 できあがったものの弦にはドミナントを張った。
DTM用のパソコンデスクの横にある書棚に、むき出しでおさめ、練習の度に出して弾いているが、 リメイクしてちょうど1年(H12年12月)、思った以上に鳴っているのが嬉しい。
8月、レッスン日のある日、事務局のE女史から相談を持ちかけられた。
同じ教室の、フルートやケーナの講師をしているK氏が古いヴァイオリンを手に入れ、それを見て欲しいという。
彼は、ヴァイオリンもやりたくて、知人から譲ってもらったものだというのだが、 ともかくレッスン用として機能するかどうか見てもらいたいというのだ。
昔ながらの卵形のケースに入れてあり、楽器はキズだらけで、汚れもはなはだしい。
弓は杉藤のものがついていたが、馬毛は1/3ぐらいしか残っていないし、真っ茶色に変色している。
ただ、弦や駒は全く新しいものがついていたが、弦はスチール弦だし、その弦を素人がつけたものか、 ペグがG線、D線が逆に、入れ替わってつけたあった。
そして、駒は市販品をそのままはめ込んだ、極めて高すぎる状態だった。
魂柱は、やや斜めに立っているが健在。
裏板ボタンのところに{ Steiner }の焼き印が押され、 ラベルには、次のように書かれていた。Jacobs Stainer in Absam
Prope Oeniponfum 1765 Made in C'zechoslovakia
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Steinerといっても、ほんもののドイツの 「ヤコブ・スタイナー(Jacob Steinger 1751-1823)」ではなく、チェコ製と書いてあることからも、 スタイナー型を模してつくったもの、という意味でわたしはとらえた。
確かに、裏板・表板ともふっくらしていて、本で読んだことのあるハイアーチのスタイナー型であった。
アブサムは、スタイナーの生まれた南ドイツのアブサム村の意味であろう。 しかし、年号の前の2語は英語ではなく、チェコ語か?意味不明。
現状を見せてもらって調弦し、試奏しているときに、ちょうど、わたしの習っている先生の Aさんが近づいてきた。
事情を話して、彼にも弾いてもらった。
「どうでしょう?」と聞くと、「これでは、駄目でしょう」とA先生はうんざり顔で答えた。
でも、現状でこの程度に鳴っていれば、手を加えることで、十分レッスン用として使い物になるとわたしは確信した。
この先生に、初めて、父の遺品である古いドイツ製ヴァイオリンを見てもらったときにも、 「地方オケ程度には使えるでしょう」といった。
その後、自分でフィットし直して半年、1年したときには「お父さんの楽器、よく鳴りますね」と、 その論評が大きく変わっている。
若さのせいか、芸大・大学院まで出ていて、演奏技術はあるかも知れないが、 楽器を見る目(耳)はそれほどあるとは思えない。(先生、失礼!)
上の写真の右側・真横、および右の写真でも中央手前に 白く写っていて分かるように、左C部の先端が欠けていた。
それは、正面から見てもプロポーションそのものの形を崩している。
右の写真のように裏板の肩にも3センチほどの、三角彫刻刀で彫った様な切り込みもあった。
表板の右上には、3センチほど木地が露出したすり傷も見られた。
特徴的だったのは、指板のE線2、3、4ポジあたりが著しく減り、完全なくぼみすらできていて、 かなり使い込んだ楽器ということが分かる。
そして、右C部の内湾曲部は、弓のフロッグ半月リングで、年中、突き当てたようなキズだらけだった。
そのため、多分、新宿の歌舞伎町にある生バンドの楽士か、流しのヴァイオリン弾きのような誰かが、 かつて、毎日、毎晩、同じ曲ばかりを弾きまくったのではなかろうかと、わたしは推測した。
結局、K氏とは、メールで打ち合わせしながら、ローコストでリメイクすることになった。§汚れ落とし
これも鈴木政吉同様、 アルコールで拭くことで2〜3層のニスを落としながら、すっかり汚れを取ることができた。
§指板の削り直し
指板の凹みは、スクレーパーと、 平らな板につけた400番のサンドペーパーできれいに平らにならすことができた。
指板などの、部品の制作・その詳細は、こちら →
§ニス仕上げとフィッティング
ニスは、前回と同様のものを5、6回ずつ塗って仕上げた。 K氏の要望もあり、同じローズウッドのアクセサリーで飾った。
これで全体が、明るくなり、稽古用として十分機能する楽器に生まれ変わった。
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同じ製作をこころざすメーラーさんのひとり、 広島のM氏から、『ネット・オークションにいろいろなヴァイオリンが出ている』、との連絡をいただいた。
早速、アクセスしてみたら、あるはあるは、数千円の通販用の中国品の返品か不良品などから、百数十万円のものまで出されていた。
その中で、わたしの気をひいたのが真っ黒いニスのオールド。 映画「レッドヴァイオリン」にでてきたような、上に、下げるための取手のついた古い木製の箱がついていた。
オークションの説明写真で見る限り、裏板は1枚板。真っ黒く写っている表面からも、 虎斑のような、おもしろい木目が見えている。また、周辺に見えるチャンネル彫りからも、 ひょっとして手工品ではなかろうかと思った。
考えてみれば、古いものでは手作り以外の、機械加工なんてものはなかっただろうし、ニスの色味からして、 ルーマニアやポーランドなど、東欧の製作ではないかとも推測した。
テレビで見る外国のオケ団員の中にも、かならずこうした黒いヴァイオリンを持っている人のひとりや 二人は目にする。
オークションのスタート価格は12,000円。 500円ステップで、最終日、制限時間ギリギリまで高騰し、 結局、スタート価格の2.5倍、29,500円で落札することができた。
古いものだけに、汚れやすり傷はあったものの、板の割れなど、致命的なものはなく、つくりそのものは 、わたし自身がつくったものよりよくできていた。
指板は、通常のもの(27センチ)より1.5センチは短くできていて、いかにも、あまりハイポジションを使わなかった時代の、「オールド」らしいもの。
ただ、ネックのカエデがおどっていて、スクロールのムキが2、3度も左に傾いてたことだ。 そうした修復は経験がなかったが、カエデそのものが堅木だけに、削っていても曲がってくるようなことは経験している。
湿らせたり、熱を加えて修整し、 固い黒檀の指板を固定すれば直るのではなかろうか。
弓も、1/3ほどの毛が残っていたが、スティックの、木の腰はあり、 毛替えさえすれば使い物になりそうで、これは早速、毛を張り替えた。§ニスのこと
折角、いい板を使っているのに、 その木目を生かすような塗りではなかったこと。パフリングもよく見えないほど、周辺部も黒く、 厚く塗ってあるので、思い切って、ニスは全部剥がすことにした。
この楽器に関しては、それまでの2台と違い、アルコールで拭くだけでは汚れは落ちても、 ニスそのものは落ちにくいものだった。オイルの溶剤でも短時間では溶けず、結局、ペンキの剥離材で落とした。
今までのように、ニスを落とせば、ある程度、白木地が見えてくるものだが、木地が出ても、 それは木地そのものが黒っぽく着色されているようだった。
ひょっとしたら、以前、本で読んだことのある「過マンガン酸カリ」による白木を着色したものか。
あるいは、オールドの木でつくったというブリッジなど、エイジングを重ねたカエデは黒く変色するものもある。
そうした、間接紫外線暴露による、何年もほったらかしたようなシーズニングやエイジングを重ねたものか。 すべて、推測する域をでない。
右の写真は、ほぼニス塗りが完成した状態。上の写真と比べても、変わった杢がきれいにでるようになった。
あとは、短かった指板を標準のものと取り替えれて、アクセサリーをつければ完成となる。
結局、この一台は、アンサンブルの本番とか発表会など、自作のもの以外に気分を変えたいときなどの「よそゆき」用として使っている。ちなみに、この、独特な「杢」の雰囲気から、アンサンブル仲間・K女史から「虎の目石か猫目石にそっくり!」との発案で、私はこの楽器のことを「キャッツ・アイ」と呼んで愛用している。
以上のほか、鈴木ヴァイオリンの初代・鈴木政吉No.W4の修復レポートは こちらから→ (Dec.2001追記)
鈴木ヴァイオリン3/4・No.220 1972年の修復は こちら→修復過程をスライドショウにしてあります。 (Feb.2003)
なお、修理・修復を目的とした「リペアー」のページはこちら から。