続 ダメ人間の独り言
初めに
今週の日曜日（２０００年８月２７日）にいつものように様々なホームページを見て回っていたところ、自分の情けなさというかみっともなさを改めて思い知らされて、かなり落ち込んでしまった。楽天的というか、将来についてあまり真剣に考えることのない私は、大きく落ち込むということはまずないし、落ち込んだとしてもすぐに回復するのだが、今回はいつ以来か思い出せないくらいに落ち込んでしまい、当分立ち直れそうにない。
この気持ちを自分の中にしまい込んでしまうと一層落ち込んでしまいそうなので、今回は現在の心境を書いてみようかと思う。友人に話すという手もあるのだが、友人の前では自分を偽っているところも多分にあり、現在の心境を率直に話せそうにはない。
私の独り言というかほとんど愚痴だが、最後まで読んで頂ければ幸いである。ただ、かなり暗い話なので、現在落ち込んでおり気力が湧かないという方は続きを読まれない方がよいかもしれない。
独り言
発端は、２ちゃんねるのあるスレッドを読んだことであった。まあ、２ちゃんねるの投稿を真に受けるということはダメ人間の私といえども流石にないのだが、そのスレッドでは自分と同じような人生を辿ってきた人の経験談が投稿されており、自分のダメなところを改めて突き付けられた感じであった。だがこれは珍しいことではなく、私も特に落ち込むということはなかった。
今にして思えばここで止めておけばよかったのかもしれないが、その後このスレッドとも関連する内容のホームページを色々と見ていて、思わぬ発見をしてしまった。それ自体は別に私とは直接関係のないことで、私自身は勿論のことダメ人間を罵倒したり見下したりするという内容でもなく、ごく常識的なホームページだった。
だが私は、そのホームページを見て、現在の自分の立場が恐ろしく惨めなものと感じてしまい、更に何故惨めに感じるのかと考えてしまい、自分のみっともなさや中途半端さなど、本当にどうしようもないダメなな点を改めて突き付けられた。もっとも普段でも、ホームページを見たり本を読んだりして、現在の自分が惨めだと感じることはあるのだが、やはりお気楽な性分のためか、今回のように深刻に悩むということはまずない。
しかし今回は、劣等感を抱いた対象がかなり自分に近い存在だということもあり、普段から気付いていたことを深刻に考えてしまい、悩み落ち込んでしまった。
私は、既成の様々な価値観、特にその主流からはできるだけ自由でありたい、そして差別や偏見や予断もできるだけなくしたいと常々思っている。ここでいう自由とは、既成の価値観を全否定したりそれらから無縁でいるということではなく、様々な価値観をできるだけ主体的に選択し得るだけの見識と能力を獲得している状態、ということである。
こう考える動機は、既成の主流的価値観からすると、私が敗北者であり無能な落ちこぼれであることが明白なので、取り敢えず既成の価値観を相対化してしまわないと、私自身がどうにも救われないと思うからでもある。まあダメ人間の自己弁護・正当化といったところだが、私は様々な事象や人物に対してできるだけ客観的で妥当な評価をしたいとも強く考えているので、その点でも様々な価値観からなるべく自由でいたいのである。
ただ私は、人間の認識とは根本的には全て主観的で相対的なものだと考えているので、完全で純粋な客観性や事実なるものを人間が提示できたり理解できたりするとは思っていない。しかしながら、そうはいっても程度差というものはあり、なるべく客観性と妥当性を追及していきたい、と考えているし、そう心掛けてもいるのである。
やや話が逸れたが、今回私が落ち込んでしまったのは、既成の価値観からできるだけ自由でいたい、差別や偏見をできるだけなくしたい、と常々考え心掛けているにも関わらず、自分が惨めに感じ劣等感を抱いた理由を突き詰めて考えると、それらに未だに強く囚われている、ということを改めて思い知らされたからである。
世間体や名声や社会的地位といった、ダメ人間の私が特に自由でいたいと考えていることに、未だに強い執着心があり、伝統的な差別感や偏見も本音の部分ではあまり払拭されてはいない。名声や社会的地位は、私が得ることに失敗したものであり、一度は諦めようと決意して自分を納得させ、分相応の生き方をしようとしたのだが、未だに強い執着があるわけだから、何とも諦めが悪いというか、本当に情けなくみっともないことである。無能で大した気概もないくせに、名声や社会的地位や資産は欲しいというのだから、ダメ人間を通り越して人間の屑である。ダメ人間なら、他人に大きく迷惑をかけない範囲で堂々と開き直ってひっそりと生きていきたい、と常々考えているのに、全く徹底しておらず、中途半端である。
考えてみると、私は小学校高学年の頃より、名声や社会的地位の獲得という気持ちと、地味にひっそりと何者にも束縛されずに生きていきたい、という気持ちとの間で揺れ動いてきた。欲望が恐らく人並みにあることから前者を求め、生来の怠け者であることから後者を求めたのだろう。
中学生になって『史記』を読み、そこに出て来る隠者を知ると、これこそ自分の理想的な生き方で、自分もかくありたいと本気で思ったものである。無論これは、無欲で世間のしがらみから自由だからということではない。怠け者であり、自分に自信が持てない無能な私には、厳しい競争社会に出ることへの漠然とした不安感があり、現実逃避傾向があるのだと思う。そのために、隠者に憧れたのだろう。
だが、中学生の頃には無邪気に隠者に憧れたものの、その後は、隠者を美化し過ぎているのかもしれない、とも思うようになった。隠者の中にも、恬淡としている人ばかりではなく、私のように屈折した心情の人も多かったのかもしれない。もっとも、隠者の多くは民衆に語り伝えられた理想像にすぎない、という可能性も高いが。
様々なしがらみや価値観から自由でいるというのは難しい。どうも私は、自由と好き勝手を混同していたところが多分にあるようで、自由でい続けるには、相応の見識と気概と能力と資産などの諸条件を備えることが必要なのだろう。現在の私に欠けているものばかりであり、今後研鑚したとしても、そうした条件の一部でも身に付けられるか甚だ疑わしい。とはいえ、今は少しでも努力していくしかあるまい。
さて現在の私の問題が何かと考えると、怠惰で無能であり気力も大してないのに、欲望は人並みにあるということにある。どうしようもないダメ人間だと自覚して開き直って生きていこうとはしているものの、このままではどっちつかずの分裂状態で精神衛生上甚だよろしくない。さてどうしようかと思い、一応二つの選択肢を考えた。
①従来の方針通り、ダメ人間として開き直って生きる。２０代後半とは到底思えないような幼稚な文章を投稿したり自分のホームページに掲載したりすることも恥じず、自己満足全開で生きる。
②一念発起してダメ人間脱出を目指す。懸命に勉強して積極的に活動し、社会的地位と名声と資産を得る。世間体にも充分配慮し、「立派な」人生を歩む。これは名声欲ばかりが理由ではなく、寧ろ老後の不安の方が重要な理由となっている。私が６０歳以上まで生きられる保証など全くなく、２０代で死んでしまうかもしれないが、仮に老後に（或いはそれ以前に）寝たきりになり、しかも頭脳はさほど衰えないとしたら、これは悲惨なことである。好奇心は旺盛なのになすことなく死ぬというのは、無念極まりない。施設に入るか人を雇うかしかないが、そのためにも１円でも多く稼いで蓄えておく必要がある。
私の能力と気力と集中力から考えると、結局①になる可能性が高いだろう。②を目指そうにも、今更手遅れとも思うし、何よりも私の能力と気力では、ほとんど成果は得られないだろう。だが、今回落ち込んで色々と考えているうちに、一度は②を選んでみるのもよいかもしれない、とも思うようになり、現在迷っている。
仮に②を選ぶにしても、どのような方向を目指すか、という問題もある。どのような資格を取り、技術を習得し、見識を身に付けるべきなのか。そういう問題も含めて、今後１～２ヶ月くらいかけてじっくり考えてみたい。もし②を選択した場合は、現在の生活を根本的に見直さなければならない。ネットに時間を割くことはほとんどできないだろうから、ホームページを閉鎖するか更新を停止しなければならない。
ホームページを開き、各種掲示板に投稿することで知り合った方々は概ね私よりも遥かに立派であった。ホームページ開設当初の意図とはやや異なる結果となったが、有益な見解を拝聴することができ、却って私にとってはよかったと思う。
ホームページを開く前は荒らされるかもしれないと危惧していたものの、実際に訪れてくださった方々は、こんな幼稚な見解しか述べることのできない私に誠実に接してくださり、各種掲示板でも、複数回意見を交換したほとんどの方々は概ね誠実であった。
私自身は実にくだらない人間だが、ネットで積極的に発言することによって多くの素晴らしい人と知り合えたことは貴重な財産であり、分不相応に恵まれていると思う。やはり、私は運がよいのだろうか。そうした人々との関係を極端に制限するのは、非常に辛いことでもある。だが、どうしても世俗的な価値観への執着を断つことができなければ、それも我慢しなければならない、とも思う。