20世紀の終焉

 

 キリスト教徒でもない私が、20世紀ももう終わりだの新世紀を迎えるだのと言うのは変ではあるが、駄文のネタになりそうなので、今回は、間もなく終わりを迎え、私自身も30年近くを生きた20世紀を簡潔に振り返ってみようかと思う。

 人類の歴史は時代が下るにつれて変化が早くなっており、20世紀も、初頭と現在の終末とでは、その在り様が大きく変わっていると言える。19世紀以来の産業構造の転換は20世紀になって一層加速し、19世紀からの流れを受けて、当初は先進国の指標が重化学工業がであったが、やがて半導体から情報産業へと変わっていった。この間の技術発展は目覚しく、地球上に孤立した地域を殆ど許さないまでになり、人類の在り様を大きく変えたと言える。
 19世紀以降に覇権を握った欧米は、こうした技術発展の成果により、地球上の殆ど全ての地域に多大な影響を及ぼすことになり、意識的にせよ無意識的にせよ、現代の人類は欧米的価値観の影響を受けるところ大である。これは、欧米的価値観が従来のそれと比較して隔絶して優れていたためではなく、上述したように、産業と諸技術の発展が地球上に孤立した地域を殆ど許さないような状況が出現したためである。つまり、把握可能な地理的空間が広がったとも、地球が狭くなったとも世界が一つになったとも言えるわけで、この観点から言うと、世界史は近代に大きな転換点があったということになる。
 先ず重化学工業の発達により、ある程度の資産があれば地球上の殆どどこにでも行けるようになり、貿易や人的交流が飛躍的に活発になり、当然のことながら経済規模も質も大いに高まった。次に情報技術の発展により、(ある程度の発展国という限定付きだが)一般庶民も殆ど瞬時に世界各地の情報が得られるようになり、人と物の交流が一層盛となり、また情報統制も困難となった。社会主義諸国の崩壊に情報技術の果たした役割は大きかった。
 20世紀末となり、情報技術の発展は更に高度な段階に向かいつつあり、(こちらもある程度の発展国という限定付きだが)一般庶民の側が、情報を受取るだけでなく、自ら世界に発信することも可能となり、こうした点も含めて、確かに巷間言われているように、現在情報革命という大きな変革が進行中なで、これは人類社会の在り様を大きく変えつつあるのだろう。またその中で、国家という枠組みも大きく変わらざるを得ないように思う。

 これとは別の観点で20世紀の特色を提示すると、それは帝国主義とナショナリズムの相克、そして帝国の衰退・崩壊ということになろうかと思う。19世紀より持ち越した課題である帝国主義とナショナリズムの相克は、概ね後者の優勢に推移したのが20世紀の特色であり、その結果として帝国の衰退・崩壊がある。帝国内のナショナリズムの昂揚、帝国主義的膨張とそれに伴う抗争による疲弊といった要因により、オスマン=トルコ・大英帝国・ロマノフ朝ロシア・ドイツ・ハプスブルク帝国・清・大日本帝国といった帝国が衰退・崩壊していった。
 だが、帝国主義的傾向には根強いものがあり、ロマノフ朝ロシアが崩壊した後に成立したソ連は、民族や宗教の面で雑多な集合体であり、領土または従属圏拡張志向が強く、支配圏のナショナリズム抑圧などを行い、紛れもない帝国であった。ソ連は、膨張政策とそれに伴う軋轢の結果疲弊し、領内でのナショナリズムの昂揚を抑えきれなくなり、分裂崩壊した。無論、これは社会主義政策の失敗ということでもあり、社会主義の浸透と挫折というのも20世紀の大きな特色と言えるかもしれないが、私は、ソ連の崩壊は、世界史的には帝国の衰退・崩壊という観点の方から説明すべき事象だと思うのである。
 ところが、ソ連が崩壊しても、その最大領域を受け継いだロシアはまだ帝国的であると言わざるを得ないように思う。雑多な要素からなるロシアはソ連時代の疲弊を受け継いでいて、国内におけるナショナリズムの昂揚を制圧できずにいるが、今のところナショナリズムの昂揚した地域を独立させる意思は原則としてないようである。こうした点は正に帝国的であり、20世紀の潮流からして、ロシアもやがて少なからぬ領土を手放さざるを得ない日がくるように思う。
 ソ連と覇権を争ったアメリカは帝国主義として指弾されることも多く、確かに冷戦期のアメリカには帝国主義的傾向が濃厚にあったと或いは言えるかもしれないが、これはソ連という強大な帝国主義の国に対抗し得た唯一の国という条件に制約されていたためでもあると思う。元々アメリカは孤立主義的志向の強い国でもあり、冷戦崩壊後は、自国の大きな負担となる支配関係は清算する傾向にあり、重要拠点は別にしても、外国から軍隊を撤退させることも珍しくなくなっている。ただ、日本のように経済力のある国では、基地の設置と軍隊の駐留が大きな負担となるわけではないので、軍隊を撤退させる意志はないようである。現在のアメリカの覇権は嘗ての帝国とは異なるものであり、これを帝国と規定してよいものか、帝国の衰退・崩壊という潮流の中、覇権が弱体化しつつあるといってよいのか、現時点では何とも言えない。
 このアメリカを除くと、現在活気のある唯一の帝国は中国ということになるだろう。清の崩壊後、混乱を経て帝国主義列強の軛から脱し名実共に独立した国家を成立させた中国だが、いざ出現したその中華人民共和国は、様々な観点から帝国と判断せざるを得ないと思う。台湾やチベットや南沙諸島などの問題における中国政府の主張や、マカオや香港の植民地関係を引き継いだ点や、宗教や民族などで国内に雑多な要素が存在し、分離志向のある地域を武力で抑圧している点などからしても、中華人民共和国は紛れもない清の後継者であり、膨張志向を有する帝国と言えるのではないかと思う。
 中国の場合、漢族が94%と圧倒的なので、民族・宗教問題は分裂の決定的要因にならないとも思えるが、漢族自体が話し言葉のレベルで統一性のない雑多な集団であるため、現在の地域間格差が更に広がれば、或いは分裂ということにもなるかもしれず、帝国の衰退・崩壊という私の想定する20世紀の傾向からして、その可能性も決して低くはないのかもしれない、とも思う。中国での留学・勤務の経験がある私の知人は、中国人は本音では自分と同じ言葉を話さない人間を同胞とは認めていない、と言っていた。或いは、中国はアメリカと共に新たな統合原理と支配形態を確立し、21世紀には両国が世界の覇権を争うことになるのだろうか。

 うーむ、全く纏らない文章となってしまった。私には手の負えない問題だったかな・・・。ここのところ、駄文はずっと取り敢えず書いたというだけの内容となっている。面白いものやお役に立てるものは私には書けないとはいえ、最近はあまりにもひどいので、年内の週一掲載という一応の区切りもできたことだし、今後は週一ではなく不定期掲載とし、少しでも内容のあるものを書いていこうかと思う。とはいっても、一度休んでしまうと、怠惰な私だけにずるずると休み続けるかもしれないが、精一杯頑張ってみるつもりである。

 

 

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