エンリケ=グレコ

 

経歴
 1938年、スペイン生まれです。マドリッド大学で物理学の博士号を取得し、ソルボンヌ大学で哲学と言語学を専攻しました。ローマ大学で生物学と神学を学んだ後、1975年聖職者になりました。1978年にバチカン考古学研究所千人研究員となり、1982年に同研究所副所長となりましたが、1991年に破門されてバチカンを去っています。同年、バチカン考古学研究所は全焼し、所長が焼死体で発見されました。
 人類の禁忌の隠蔽を目的とし、アトランティスの探索を妨害しつづけてきた秘密結社に、いつグレコ神父が加入したかは明らかにされていませんが、おそらく破門される前のことだったのでしょう。バチカン考古学研究所の研究員・副所長時代に、研究所の門外不出の古文書を閲覧した結果、人類の禁忌を知ってしまい、秘密結社に加わったものと思われます。
 秘密結社の内情について、作中では詳細に明かされませんでしたので、グレコ神父が結社内でどのような地位だったか、断言するのは難しいのですが、幹部の一人だったことは確実です。さらに、「秘密の箱を運ぶ人々」を率い、幹部を招集する権限を有していたことから、グレコ神父は秘密結社のボスだったと思われますが、幹部会の様子からすると、ボスといえども他の幹部とはわりと平等な関係のようです。
 グレコ神父は、当初は入矢を過小評価していましたが、後に、シュリーマン以上、ソロモン王に匹敵する賢者だと危険視し、何度も入矢の殺害を図ろうとします。しかし、ドニャーナ国立自然公園で「秘密の箱」とともに流砂に飲み込まれ、とても助かりそうにないと覚悟したときには、人類の禁忌を隠蔽するという「崇高な使命」の継承を入矢にもちかけています(15巻所収の122話「すべての謎 最後の謎」)。

 

人物像
 経歴からうかがえるように、たいへん優秀な頭脳の持ち主で、自分を裏切った連絡員を殺したり、馬を乗りこなしたりしていることから、文武両道の人と言えそうです。人類の禁忌を隠蔽するという「崇高な使命」のためには、殺人をも辞さない冷酷な性格をしていますが、一方で、「崇高な使命」のために配下を犠牲にし、アトランティス探索者を殺害することを深刻に悩んでいて、そのことと人類の禁忌を知ってしまったという絶望のために、夢を見られないという設定になっているようです。人を殺しまくっている極悪人とも言えますが、「崇高な使命」のために自らを厳しく律している潔癖な人とも言えそうです。

 

 

『イリヤッド』のまとめサイト先頭へ   先頭へ