インカのミイラ発見
ペルーのリマ郊外において、インカ帝国時代のミイラ数千体が発見されたとの報道があった。以下、引用である。
南米ペルーのリマ近郊で、約500年前のインカ帝国時代のミイラ数千体が見つかった。地元考古学者らによる発掘資金を援助した全米地理学協会が17日発表、同協会発行のナショナル・ジオグラフィック5月号に掲載される。60年程度の比較的短い期間に埋葬された大規模な墓地で、インカ帝国の一時代のミイラがこれだけ多数見つかったのは初めて。当時の社会構造や生活などを知る一級の資料となりそうだ。
発掘場所は、リマの東約10キロ、丘陵地に挟まれた谷間のトゥパク・アマル地区で、現在約1240家族が住んでいる。99年から始まった今回の調査では、これまでに2200体を超えるミイラが見つかった。一帯8ヘクタールはインカ帝国の「中央墓地」だったとみられ、全体では1万体にのぼるミイラが眠っていると考えられている。いずれも1480〜1535年ごろと2世代程度の期間のものとみられている。
土壌が非常に乾燥していたことから保存状態がよかったと考えられている。墓地の存在自体は56年に知られていたが、住民が捨てる生活用水で劣化が心配されたことなどから、大規模な発掘調査が行われた。
発見されたミイラは、数体ずつ木綿の布にくるんで人形のような包みにまとめられているのが特徴。一つの包みには、少なくとも2体、多いものでは7体のミイラが収められていた。同時期に死んだ家族やすでに埋葬されていた祖先のミイラなどを合わせて埋葬し直したのではないかと考えられている。
主な埋葬者が女性の場合は、包みの頭の部分にカツラが載せられていた。
食物や陶器、動物の皮など70種もの副葬品とともに、約150キロにものぼる大量の綿にくるまれていたミイラもあり、身分が極めて高い人だったとみられている。
また、皮膚がそのまま残り、入れ墨が鮮明なミイラもあった。
副葬品などの発掘資料も5万点を超えている。発掘責任者のペルーの考古学者ギエルモ・クック博士は、ワシントンで開いた記者会見で「インカ帝国の社会、生活、衛生状態、文化などを知る貴重な資料になる」と語った。
どうもインカ帝国後期から末期にかけての墓地のようだが、インカ帝国には文字がなく、その実像を探るための資料は遺物・遺跡と征服者のスペイン人の残した記録に頼らざるをえないだけに、たいへん重要な発見だと言える。
皮膚がそのまま残っているミイラもあるくらい保存状態が良好とのことだから、DNAを取り出して分析することも可能だろう。あるいは、DNA分析からも重要な発見があるかもしれない。ともかく、今後の調査に期待したいものである。