入矢修造
経歴
『イリヤッド』の主人公です。作中では年齢は明示されていませんが、1968年頃の生まれと思われる呉文明(リチャード=ウー)と同じくらいの年齢と推測されます(レイトン卿も同様でしょう)。かつて英国で考古学者として活躍していましたが、アーサー王の墓をめぐる醜聞で欧州の考古学界を追放され、帰国して東京都文京区にある古道具屋の入矢堂の主人となりました。この醜聞のさいに、入矢の見解を唯一支持して励ましたのが、ユリの父ヴィルヘルム=エンドレで、ユリの誘いにより、ともにアトランティス探索に乗り出すことになります。
入矢の行動はおおむね「山の老人」に把握されていましたが、入矢はエンドレ財団の依頼でアトランティス探索を進めていますから、とうぜんエンドレ財団に自分の行動予定や探索結果や推測を報告しているわけで、その報告を受けた理事長のコバチが、結託していた「山の老人」の幹部のオコーナーに入矢の情報を漏らしていたためだと思われます。
人物像
かなり間の抜けたところがあり、その学識が競争相手のレイトン卿に遠く及ばないような描写もありますが、1・2巻でのユリの救出や5巻でのサルデーニャ島における行動などを見ていると、超人的な判断力の持ち主と評価することも可能で、レイトン卿や赤穴秀行博士といった博学な人物以外との会話からは、入矢自身にもかなりの学識があることがうかがえます。
『イリヤッド』の性格上、主人公は数々の危機を切り抜けて謎解きを進めなければならず、かなりの判断力と学識を兼ね備えた超人的人物でなければいけません。しかしそれは、読者に現実感を喪失させることにもつながるので、ときとして入矢の間抜けさや学識のなさを描くことにより、読者に入矢が超人的人物であることを忘れさせ、物語に現実感を保たせているのではないか、と思います。
赤穴秀行博士やエンドレ財団理事長のコバチは、アトランティスはトロヤ遺跡の真下にあると考えていますが、入矢は別の場所をアトランティスと考えていて、それは、スペイン南西部の、セビーリャを頂点としてティント川とグアダルキヴィル川に挟まれた三角地帯内です(場所はこの地図を参照してください)。この三角地帯はかつて海で、その真中にはいくつかの島がありましたが、そのうちの最大の島がアトランティスの中心部のようで、そこはドニャーナ国立自然公園内の「偉大なるウサギ」という遺跡だと思われます。