ゼプコ老人

 

経歴
 ハインリヒ=シュリーマンの孫パウル=シュリーマンの手記を『ニューヨークアメリカン』紙に掲載した新聞記者の息子でポーランド系アメリカ人ですが、13巻所収の98話「アラビア奇談」では、ゼプコ老人が「シュリーマンの孫とワシの祖父(じい)さんは友人の間柄でな」と語っていて、設定に混乱が見られます。あるいは、ゼプコ老人の祖父とパウルとが友人の関係にあり、その縁でゼプコ老人の父とパウルが知り合った、という解釈も可能かもしれませんが・・・。まあ、後の110話「リンゴが一つ」でも、ゼプコ老人は『ニューヨークアメリカン』紙の記者の息子とされているので、素直に記者の息子と考えるのがよさそうです。

(追記)2015年2月14日
連載時と単行本13巻所収の98話「アラビア奇談」では、ゼプコ老人が「シュリーマンの孫とワシの祖父(じい)さんは友人の間柄でな」と語っていますが、文庫版第9巻所収の98話「アラビア奇談」では、この台詞が「シュリーマンの孫とワシの父さんは友人の間柄でな」と修正されており、設定の混乱は解消されています。単行本刊行から6年後の文庫版刊行でしたが、このように修正されているとは、編集部も細かいな、と感心しました。


 ゼプコ老人の年齢は不詳ですが、かなりの高齢のようです。『ニューヨークアメリカン』紙の記者の息子、つまりゼプコ老人の父は、1912年に『ニューヨークアメリカン』紙にパウルの手記を掲載したさいに23歳だったので、1889年か1888年の生まれということになります。ゼプコ老人が記者の30歳頃の息子だとすると、2007年時点で80代後半となりますが、これではやや年をとりすぎのように思われますので、記者の40歳頃の息子で、2007年時点で70代後半とするのがよさそうです。ゼプコ老人の息子は、大学生の娘がいるので50歳前後でしょうから、ゼプコ老人が70代後半だと無理のない設定になりそうです。
 ゼプコ老人の父は「山の老人」を恐れ、パウルと協議してガセネタを『ニューヨークアメリカン』紙に掲載したため、解雇されてしまい、イリノイの小さな新聞社で再出発することになりました。ニューヨークに戻ったのは、ゼプコ老人の息子の代からとのことなので、ゼプコ老人はイリノイで生まれ育ったものと思われます。ゼプコ老人の父はパウルからアトランティスについての研究を聞いており、ゼプコ老人は長い時間をかけて父からアトランティスの情報を聞き出し、アトランティス探索に乗り出し、ユカタン半島でアトランティスの痕跡を探していました。そこで入矢・バトラー神父と出会い、ともにアトランティス探索に乗り出すことになります。

 

人物像
 老人とは思えない体力・行動力の持ち主で、快活な性格をしていますが、ユリの父ヴィルヘルム=エンドレからは、胡散臭い人物で財政状態は最悪、と散々な評価を下されています。じっさい、始皇帝陵の盗掘を言い出したり、始皇帝陵の内部で入矢との約束に反して財宝に手をつけようとしたり、嘘をついて入矢の母である淑子から金を借りたりと、人間性にはかなりの問題があるようです。
 ゼプコ老人が父から聞きだした重要な情報に、ハインリヒ=シュリーマンとイグナティウス=ドネリーとの書簡のやり取りがあります。そこには、シュリーマンが晩年、アトランティスの場所を特定する重要な手がかりと考えていた二つの昔話が述べられていたとのことですが、どういうわけなのか、この書簡のやり取りについて知っているオコーナーとゼプコ老人は、そのうちの一つずつしか知りません。オコーナーが知っているアトランティスの手がかりとなる昔話は、ギリシアのミハリス=アウゲリス編纂の『イソップ物語』所収の「柱の王国」(内容については、1月20日のブログの青字の部分をご参照ください)で、ゼプコ老人の知っている手がかりは『千一夜物語』「真鍮の都」です。

 

 

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