奇跡の人
【原作】ウィリアム・ギブソン 【翻訳】額田やえ子
【演出】鈴木裕美
【出演】大竹しのぶ 鈴木杏
キムラ緑子 吉田鋼太郎 長塚圭史 歌川椎子
松金よね子 辻萬長
田辺謙一郎 小椋あずき 小村裕次郎
岡本易代 日向葵子 小林洋子 鈴木美紗 石丸椎菜
マギー(犬)
2003/04/12 大阪/近鉄劇場

 ずっと前からとても楽しみにしていた「奇跡の人」をやっと観ることが出来ました。しかもF列というとても良い席でvvv3時間以上という大作でしたが、少しも時間を感じることなく、あっと言う間に終わってしまいました。

 もう知らない人はいないだろうというくらい有名なお話なので、ストーリーの説明は不用かと思います。赤ちゃんの時の病気が原因で、目も耳も不自由になってしまった少女ヘレンと、教師として招かれたアニーの、「奇跡」への戦い…

 舞台は、中央に食卓のテーブルと二階への階段、アニーの部屋。右側に井戸。しかしこの中央部分は場面によって回転し色々な表情を見せてくれます。冒頭、目の見えないヘレンが家の中から外、また家の中へと彷徨うシーンで、ヘレンは中央で動き、舞台の方が回るという演出がすごいと思いました。

 大竹しのぶさん。やはり凄い人です。今まで、テレビなどで観ている限り、正直どう凄いのか分からなかったのですけど(^_^;)、そのパワーとエネルギーみたいなものは、生で観てすごく感じました。杏ちゃんはまだまだ若いので、あのハードな動きも大丈夫だろうけど、それと一緒に取っ組み合いをする大竹さんのパワーも凄いです!!やっぱ女優って凄い!!
 私の中でのアニー・サリバンという人は、今まで「優しくて大きくて大人な人」のイメージだつたのですが、そのイメージは今回見事に粉砕されました(笑)大竹さんのアニーは、言葉遣いなども乱暴で、ちょっとはすっぱなところもあって、とても不器用な感じ。小さな時に酷い施設で育って、修羅場を潜り抜けてきた強い女性。でもすごく傷付いてもいて、挫けそうにもなるのだけど毎日必死に生きている。という感じが人間くさくて素敵でした。20歳そこそこだったっていうのもビックリしました。

 鈴木杏ちゃん。可愛かったです〜vvvそしてやはり上手かったです!台詞の無い役ほど難しい役は無いと思うのですが、その気持ちの変化とか、しっかり感じることが出来ました。
 最後でアニーにキスをするシーンは、一瞬なんだけれどめちゃ感動で、涙が出ました(>o<)vvvアニーとの取っ組み合いもホント凄かったです。芝居と言うよりむしろ格闘技!舞台から落ちるんじゃないかと思うくらいでした。実際アザだらけになって頑張ったということで、ホント大変だなぁと思いました。でも、カーテンコールでの笑顔を見ると、キラキラしていて、本当に楽しくて仕方が無いという感じで、いいなぁと思いました。まだまだ15歳!、今後が本当に楽しみな女優さんだと思います。
 ヘレンは目も見えなく耳も聞こえなくて、その世界とか辛さとか想像のしようも無いのですが、やっぱり漠然と「可哀想」という気持ちがあったのですが、今回の舞台を観て、なんていうか、そんなこと思ってちゃいけないんじゃないかと思わされました。ヘレンは誰よりも「生きよう」ともがいていたから。だからそれを感じ取って、ヘレンの世界を広げてくれたアニーに出逢えて、本当に良かったと思います。今まではなんとなく「お話の中の人」という感じでしたが、「本当に生きていた人なんだなと」改めて実感したような気がします。

 キムラ緑子さん。ヘレンのお母さんケート。ヘレンの次に辛い思いをしたのがお母さんだと思うのですが、いつも優しくて、アニーのこともとても理解していて、素敵な人だなと思いました。
 どこから見ても、上流階級の素敵な奥様なケート。しかしキムラさんは先日まで放送されていたNHKの朝ドラ「まんてん」で近所の食堂のおばちゃんを演ってた方で(途中でパンフ見て気付きました!)、もう全然違っててビックリですっっ(笑)さすが女優!

 吉田鋼太郎さん。アニーの通っていた盲学校の校長先生アナグノス。人間的にもとても魅力的で素敵な先生だなと思いました。
 この方は、めちゃめちゃ上手い方だなぁと思いました。もう声が違います!とても大きくて通る声。この方が出てきただけで、場面がキュッと締まる感じがして、カッコ良かったです。表情も豊かで、重い場面にちょっと笑いを持たせたり、逆にそれまでおどけていたのが急にしんみりしたり、その差がとても良かったです。

 長塚圭史さん。ヘレンのお兄さんジェームス。ヘレンとは母親違いで、ヘレンのことばかりに気を取られている父の気を惹こうと一生懸命なのだけど、どうも上手く意志の疎通が出来ない。いつも素直になれなくて茶化したり冷たいことばかり言ってしまう。でも本当はヘレンのこともよく分かっていて、優しい人でした。最後、思い切って父を止める場面はカッコ良かったです。やっぱり涙が出ました。
 前に「ダブリンの鐘突きカビ人間」で観た時は、そんなに背が高いと思わなかったのですが(^_^;)、とても長身ですらっとして、動きがスマートでカッコ良い方でしたvvvもともと小劇場系の役者さんということで、ノリが微妙に他の方と違って面白かったです(笑)

 歌川椎子さん。ケラー家の召使いヴァイニー。豪快でおおらかな女性。召使いだけど主人にも意見とかできちゃう関係が良いなと思いました。
 パンフに載ってる写真と全然イメージ違ってビックリです(笑)

 松金よね子さん。ヘレンの伯母さんエヴ。ちょっとお節介だけど、ヘレンにはとても愛情を持っている優しい人。
 出番は少なかったですが、松金節健在って感じで存在感は大きかったです(笑)

 辻萬長さん。ヘレンの父アーサー。ヘレンに愛情は持っているのだろうけれど、どう扱って良いのか分からなくて困っている。とても厳しい人なのだけれど、ケートやアニーに強く出られると押し切られてしまうところとか可愛いなと思いました。基本的に人と付き合うのがあまり得意ではないのかも。だからジェームスにもつい厳しすぎる態度をとってしまうのでしょう。でも、自分の間違いだと思ったら素直に認められるところは強い人だなと思いました。
 カッコ良くて可愛くて素敵な人でした☆

 あと、ヴァイニーの子供達役の田鍋さん、小椋さんもまさに「やんちゃな子供」って感じで可愛かったし、唯一の子役、石丸椎菜ちゃんもめちゃ可愛かったですvvvカーテンコールの時、すごく良い笑顔をしていてぺこりとおじぎをする姿がめちゃめちゃラブリーでしたvv
 それと、犬!です(笑)本物のラブラドールレトリーバーのマギー!この子もめちゃ可愛かったっっすごく大人しくてよい子だったです。ヘレンにギュッと羽交い締め(笑)にされて、手文字を書かれる場面でもじっとして、でも目はすごく困った表情で、たまりませんでした(笑)

 今回、前から6列目で、みなさんの表情もバッチリ見えて、とても幸せなひとときでした。ただ後ろの席に子供がいて「あの犬本物?」とか芝居中にごちゃごちゃ話してたり、やたら手を叩いて笑ってる人がいたりっていうのは残念だったです。もうちょっと他のお客さんのことを考えて欲しいなと思いました。でもホント、観に行って良かったです。一人で行ってたら、きっと号泣だったと思います(#^.^#)


 つけたし。。
 私の中での「奇跡の人」といえば、やはり「ガラスの仮面」by美内すずえ!(笑)今回のは、マヤが演ったものに近かったと思います(笑)観ながら思いだしていました(^_^;)
 あと、かの有名な「water」のシーン。井戸は舞台のギリギリのところにあったので、水がかかってはいけないと客席一列目と二列目の人たちに休憩時間にタオルが配られました。それがちょっぴり羨ましかったです(笑)