阿佐ヶ谷スパイダースPRESENTS
『悪魔の唄』

作・演出/長塚圭史
出演/吉田鋼太郎 伊勢志摩
   小島聖 山内圭哉 池田鉄洋
   中山祐一朗 伊達暁 長塚圭史

2005/03/06 大阪/シアター・ドラマシティ
2005/03/23 広島/アステールプラザ

ついに観てしまいました。
昨年の「はたらくおとこ」の時に、
今回の公演のことはすでに告知がされていて、
それからずっと待ち望んでいました。
まず、タイトルがいいですね。
長塚さんの作品は、いつも結構重くて怖い話だと思うのですが、
あえて「ホラー」と銘打っているからには、
さらに怖い話なのかと期待度満点でした♪(笑)


さて、実際の内容はというと…
わたしとしては、これはホラーでは無いのではないかと思いました。
たしかに、ゾンビや幽霊が出てきて、
ビジュアル的にはかなり気持ち悪かったりするのですが、
ストーリーはとても切なくて悲しい人間ドラマ、
というか恋愛ドラマがメインだったと思うので。
「心優しいゾンビのお話」て感じだったです。

役者さんは皆さんとても役に合っていて良かったです。
吉田鋼太郎さんは、普段シェイクスピアやギリシャ悲劇みたいな
重厚な舞台に多く出演されているそうなのですが、
今回は、いつもとは全く違って、
おろおろしっぱなしのダメな中年男役を演じられていました。
でもそのダメっぽさがとても似合っていました(笑)

伊勢志摩さんも、夫の浮気が原因で狂ってしまった妻
という難しい役を好演されていました。
大人計画での伊勢さんは全然違う感じらしいので、
そっちの伊勢さんも観てみたいなぁと思いました。
ずっと夫に裏切られ続け、最後にもう一度信じようと思ったのにまた…
というラストは悲しかったです。

小島聖さんは、以前「ポルノ」という作品にも参加されていました。
私は映像で観ただけなのですが、
その時は実はあんまり好きではありませんでした(^_^;
でも、今回はとても良かったです。
愛する人が戦死して、別の男と結婚したのだけど、
死んだ人が忘れられず幽霊になってもずっと待っている女…
この役も悲しかったです。。
でも、嫌いなものはとことん嫌いっていう姿勢は笑えました(笑)
細くて、とても綺麗だったです。
私が観た回では、
ラスト近くでベターンっと思いっきり滑って転んでしまって可哀想だったですbb

山内圭哉さんは、戦禍で妻子を失って、
復讐を誓うゾンビ兵の役でしたが、
とても男気溢れる「ええ男」でした(笑)
長塚作品での山内さんはいつもホントーに男前です。
今回ゾンビということで、カラーコンタクトされてたんですけど、
似合ってたけどめっちゃ怖かったです(>_<)
この役のためなのか、
弁髪(?)剃られちゃったのは勿体なかったですね(笑)

池田鉄洋さんは、伊勢さん演じる愛子の弟役でしたが、
いつになく(笑)格好良い役でした。
もっと怖い役かと思ってたので意外です。
いつも思うんですけど声が良いんですよね〜♪
あでも面白い部分もしっかりと持っていっていました。
あと途中からある人物の物まね(?)もしなくちゃいけなくて
大変だったそうですが、とっても上手かったです。
主宰の「表現さわやか」のチラシが入っていたのが嬉しかったです♪
「猫のホテル」の芝居も観たいと思いつつ
観れてないのでいつか観れると良いなと思います。

中山祐一朗さんも、いつもより格好良かったですvv
ゾンビ兵士たちの中で一番偉い役というのにもビックリしました。
山内さんより偉いなんて…(笑)
毎回違った雰囲気が観られるのも嬉しいなぁと思います。
中山さん演じる立花伍長は、小島さん演じるサヤの想い人なのですけど、
サヤのことを「気晴らしだった」と言ってしまう。
でも、それが本当なのかそうじゃないのかは微妙な感じでした。
そうでないといいなと思いながら観ていました。
立花が話す「日本」への思いは胸に刺さりました。

伊達暁さんは、足が悪くてなかなか戦場へ行けず、
やっと行けたと思ったら戦地に着く前に死んでしまったゾンビ兵の役でした。
最初、伊達さんと分からなかったです(^_^;
この方も、観るたびに上手くなるというか、良くなってくる気がします。
全体の中では地味な役だったかもしれませんが、とても好きな役でした。

長塚圭史さんは、前回よりたくさんご出演で嬉しかったです。
長身で頭小さくて、やっぱり格好良いですねvvv
長塚さん演じる眞は、サヤのことが好きで好きでたまらないのに、
サヤの方は少しも振り向いてくれなくて、挙げ句の果てに殺してしまう。
その後も、サヤが立花に会いに行けないように
自分も死んで霊になり二人の邪魔をする。
今回の中で一番の悪役だと思うのですが、
彼は彼で悲しい人だなと思いました。
最後、嘘でも好きと言ってもらえない(いや一応は言ってもらえるのですが…)
のが可哀想だったです。

タイトルバックの「唄」について、
ある特定の曲が出てくるのだと思っていたのですが、
何曲かの軍歌と「君が代」のことだったみたいです。
「君が代」を斉唱されたときはなんだか分からないけれど、
鳥肌が立つようで一番怖かったです。
最後、窓の外に沢山の霊があらわれ、軍歌の合唱になった時は
怖いというよりは、これまたとても悲しかったです。
戦争物という感じもあまりしなかったけれど、
「国のため」と言いながら死んでいった沢山の人々がいたことは事実で、
彼らの死が、無駄になっていないかとか、少し考えてしまいました。
被爆地広島で生まれ育ったものとして、
戦争の話はやはり考えちゃう部分てありますね。。
ラストの立花伍長と山本(吉田)の会話がかみ合って無い感じも、
やっぱり悲しかったです。

今回パンフレットに戯曲が載っていたのですが、
それを読むと、ますます悲しい気分になってしまいました(T_T)
が、笑える部分もたくさんあったのでそれも記しておきます(笑)
折込に、次回作の予定が入っていたのですが
「新作公演」となっていたのがタイトルでしょうか?(笑)
7月にある「LAST SHOW」の次ってことで掛けてるのかなぁと思ったのですが
これいかに(^_^;
いずれにしても、今後もずっと観ていきたいと思います。