シスカンパニー公演
『エドモンド』

作/デイヴィッド・マメット
演出/長塚圭史
出演/八嶋智人
   大森博史 酒井敏也 小松和重
   中村まこと 平岩紙 明星真由美
   小泉今日子

2005/09/03 東京/青山円形劇場

ごく普通のサラリーマンだったエドモンドは、ある日占い師から「あなたは居るべき場所にいない」と言われたことをきっかけに、妻と別れ家を出る。裏町を彷徨うエドモンドは、様々な人々と関わりながら坂道を転がるように転落していく。その行き着く先は…

円形劇場での観劇は初めて。特に今回は完全円形ということで、ぐるり360度お客さんが入っていて、役者さんは大変だなぁと思いました。特にエドモンド役の八嶋さんは出ずっぱりでしたから。一度はけてもすぐ別のドアから出てきてホント忙しそうでした。
事前についつい見てしまった他の人の感想では、あまり良い意見をみつけられず、少し不安を持ちながらの観劇だったのですが…実際観てみると、ものすっごく良くて見入ってしまいました。やはり自分で観てみないと分かりませんね(笑)
まず、劇場内の壁が全て赤い(濃い朱色?)幕で覆ってあり、舞台も黒に血のような赤い色が付いていて暗い雰囲気を醸し出していました。そしていよいよ開演。客席がだんだん暗くなっていく時、なんだか闇に呑み込まれるような感覚がして怖かったです。
ストーリーも、全然分かり易く。宗教的な隔たりとか、差別意識とか、私はあまり感じませんでした。物語の根底には確かに流れていたと思うんですけど。洋モノの映画を観る時に感じる違和感のようなものは無かったです。

八嶋智人さん。エドモンド。
意外にも今回初主役だそうです。普段のおもしろ賑やかしキャラは全て封印してのシリアス演技。とても良かったと思います。眼鏡が無かったのと、かなり体を絞っていたのも手伝って、かなり雰囲気違って見えました。
エドモンドは、自分では「真面目で地道に生きてきた」みたいに言っていて、周りの所為で不幸になってくみたいでしたけど、私の目には自業自得に見えました。そういう風になっているのかな?周りの人に対する口の利き方とかもいちいち感じ悪くて、そりゃあそうなっても仕方ないんじゃない?と思えて同情はできませんでした。最後、何をもってあんな風に吹っ切れたのかがいまいち分からなかったのが残念かも。
大森博史さん。バーテン、サクラ、質屋主人、伝道師、黒人囚。
この方を初めて知ったのは、谷山浩子さんのコンサートでした。お芝居仕立てのコンサートで、朗読劇みたいなものだったのですが、その時も何役もこなされていて、上手い人だなぁと思っていました。今回もやはり渋上手かったですvv
酒井敏也さん。見物人、売春宿マネージャー、フロント係、教戒師。
なんか、あんまり目立って無くて勿体ない気がしました。笑いのない芝居なので仕方ないかもしれないのですが…でも酒井さんのシリアス芝居もあまり観ることないので貴重かもです(笑)個人的にはフロント係が好きでした。
小松和重さん。バーマネージャー、詐欺師、質屋店員、取調官、看守。
すごく格好良くてビックリでした(笑)サモ・アリナンズは観たことなくて、小松さんを認識したのが去年の夏の「ガマ王子vsザリガニ魔人」だったのですが、あの時はわりとコミカルな役で、こんなに格好良くて上手い人だとは思ってませんでした。声もとても良かったです。もっと色んな演技観てみたいと思いました。
中村まことさん。バーの男、チラシ配り、質屋客、ポン引き、警官。
大好きです(笑)やはり渋格好良かったです。チラシ配りとか質屋客の時、すぐ目の前に来られてドキドキしました。特にチラシ配りの時は、客席に向けてチラシを配る仕草をされるので、手を出しちゃいそうになりました(笑)
質屋のシーンはこの芝居の中でも笑いの起きる場面で、大森さんと中村さんのやりとりはとても可笑しかったです。反対側では八嶋さんと小松さんが芝居してるのについついこちらに目が行ってしまいました。
平岩紙さん。ピープ・ショーガール、売春婦、書記。
可愛かったです。噂通りの色白さんでした。ピープ・ショーガールも売春婦も、結構きわどい衣装なのですけど嫌らしくなくて可愛かったです(って役的には良くないのかな?(^_^;)
明星真由美さん。占い師、ホステス、サクラ、帽子の女、看守。
ここ何年かは氣志團のマネージャーさんをされてて今回女優復帰第一弾?だそうです。なんか凄い経歴ですよね(笑)
帽子の女がむかつくおばさんでした(笑)
小泉今日子さん。エドモンドの妻、サクラ、グレナ。
初生キョンキョンでしたが(笑)顔とかやっぱちっちゃいですね〜意外と物語に溶け込んでた気がします。でも逆にオーラとかが無かったってことかも…bb
最初、エドモンドと向かい合って話すシーンがあって、私の席からは小泉さんの背中しか見えないのですが、それがかえってエドモンドと妻の冷えた関係をイメージできて良かったと思います。

とにかく目まぐるしくシーンが変わるのですが、大きくセットが変わる訳ではない、というかそもそもセットというものは無く、場面場面によって現われる小道具(椅子や敷物など)と照明と音楽によってのみで表わされているだけなのに、きちんと場面が変わったのが分かるし、円形の劇場を上手く使って、どの席からもよく見えるような演出がされていたのは本当に凄いと思いました。床からウイーンと台が出てきたり、一部を開けるとショーケースになってたり、仕掛けも面白かったです。特に好きだったのは、路地裏みたいな場所で、床から蒸気がシュワシュワ上がってたシーン。本当にそれっぽくて良かったです(上手く表現できないのですが(>_<))。照明も音楽もとても好きな感じでした。照明が落ちた時に舞台上に残る印がボウっと光って星空のようだったのも綺麗だったです。

一度だけでは見落としたり分からなかった部分もあるだろうし、何度も違う角度から観たいと思いました。あと一時間半というのもすごく短くて、もっとずっと観ていたいと思いました。
長塚さんの演出、好きです。やっぱり。はい。

何日か前の長塚さんのブログで、「仕事で数日現場を離れる」みたいなことが書かれていたのですが、何でもフランスに行かれてるとか。何の仕事だろう…というわけで、今日はお顔が見れなくて残念だったです。千秋楽までには戻って来られるのでしょうか。カーテンコールも1回しかなくて、みんなあっさり拍手やめちゃったのがとても残念でした。

あとパンフ、A5サイズ゙で600円。しかし中身はとても充実していてお得だと思いました。稽古場の様子が読めたのが嬉しかったです。