阿佐ヶ谷スパイダースPRESENTS
『桜飛沫』

脚本・演出/長塚圭史
出演/山本亨 橋本じゅん
   水野美紀 峯村リエ
   山内圭哉 猫背椿 市川しんぺー
   真木よう子 吉本菜穂子 富岡晃一郎
   川原正嗣 前田悟 横山一敏 大林勝
   中山祐一朗 伊達暁 長塚圭史

2006/03/05(日)13:00開演/18:00開演
大阪/シアターBRAVA!

第一部「蟒蛇如(うわばみのごとく)」

沼ばかりの貧しい村。
ヘビを食べる習慣のあるこの村では男はすぐに女房を孕ませてしまう。
村を仕切る郷地壱之佑(市川)・弐之佑(川原)・蚕之佑(大林)兄弟は
村を貧しさから救うためと「三人っ子政策」を打ち出した。
それは1家に子どもは3人まで、
それ以上の子供を作 れば年貢は4倍、
払えずに村を逃げ出せば、一家皆殺しというものだった。
村のためという名目のこの政策だったが
実質は、自分達に子供が出来ないことへの腹いせとして
村人の子供を殺したいが故の政策だった。
流れで医者のようなことをしている徳市(橋本)は、
この村の助産婦のタネ(水野)と共に
村人たちに避妊の知識を広げながら生活していた。
そこへ四人目の子供が出来てしまった
シゲオ(長塚)・サカエ(吉本)夫婦が相談にやって来る。
それまでにも何度も中絶をしているサカエの身体は
これ以上の中絶に堪えられるもではなかった。
残された道は、生まれた子供を間引くこと。
しかしサカエはこれ以上、子供を堕ろすことも
ましてや生まれた子供を殺すことなど出来ないと言う。
そんな折、賞金稼ぎの新兵衛(伊達)と
女郎崩れのヤマコ(猫背)が徳市の前に現れる。
新兵衛は、
昔は悪党でかなりの剣の使い手でもあった徳市を探し訊ねて、
徳市の仇でもある、ある男の首を取りにいかないかと誘い込むのだが、
遠い昔に剣を置いた徳市はきっぱりと断るのだった。
そんな折り、事件が起きる。
自分に子供が出来れば兄たちの暴挙も治まるのではと考えた蚕之祐が
タネを手込めにしようとし、弾みで殺されてしまったのだ。
怒った兄弟はさらに政策をきつくし、
シゲオの息子、栄作(富岡)は殺されてしまう。
次々と殺される村の子供達。
兄家族を皆殺しにされた虚兵衛(中山) とシゲオは
もう我慢できないと、郷地兄弟を伐つ決心をする。
しかし彼らだけでは到底かなう相手ではない。
新兵衛は、徳市なら手を貸してくれるはずだと
二人に説得に行かせる。
ついに再び剣を持つ決心をする徳市だが…

■第二部「桜飛沫(さくらしぶき)」

すっかり寂れて訪れるものもいない宿場町。
そこへ杖をつきボロボロよれよれの男が侍に追われ逃げ込んでくる。
男はお尋ね者の佐久間(山本)だった。
かつては、金の為なら女子供でも容赦なく殺し、
残虐非道のかぎりをつくした佐久間だったが、
今では毎夜、かつて自分が殺した者たちの亡霊に
ただ脅えるばかりの情けない男に成り下がっていた。
佐久間は町で、頭の弱い女グズ(峯村)と出会う。
その天真爛漫な雰囲気に無意識に心が和らぐ佐久間。
グズの夫・蛭間(中山)は、
彼から金を奪おうと、グズの妹のマルセ(真木)を使って
自分の家に引き留めようとする。
蛭間は仲間の市川左京(山内)、蝮の蛾次郎(前田)と共に
暴力によって町を支配している。
グズに対しドメスティック・バイオレンスの限りを尽くす蛭間。
町に嫌気がさしているマルセは町を捨てて逃げ出したいが
頭の弱いグズを連れて逃げるのは困難と諦めている。
左京は、昔佐久間に目の前で両親を殺され、
自分も殺されそうになったにもかかわらず
佐久間に強い憧れを抱き、
佐久間の手で殺されることを願っている。
町の衆は、左京や蛭間を嫌悪しながらも
彼らが強盗で得た金品のお零れで生活している為
大っぴらには逆らうことができずにいたが、
佐久間が昔、悪党とはいえかなりの剣豪だったと知り、
彼に左京達を倒してもらおうと目論む。

満開の桜の巨木の下。
妖しくも美しく舞う無数の花びら…


今もラストシーンが頭から離れません…

約1年ぶりの本公演。
タイトルを初めて見た時から、かなりときめいていました。
長塚さんの作品て、タイトルもいつもカッコ良いですよね♪
今回は、DVD発売もCS放送も無し。
地方公演も新潟と大阪のみ。
ということで、大阪千秋楽、昼夜連続でチケ取っちゃいました。

昼公演。2列目ど真ん中の席。ステージがめちゃ近くてビックリ(笑)
夜公演。5列目センターブロック左端。
ちょうど傾斜になりはじめたとこで前回より観やすい感じ?

■第一部「蟒蛇如」

長塚さんがたくさん出ていて嬉しかったです(笑)
中山さんと二人での絡みも多いのですが
なんだか漫才を見ているようでとても楽しかったです。

橋本じゅんさんは、本当に「いいひと」って感じですよね〜
新感線の時ほど極端にどギツいキャラよりも
私はやっぱりこんぐらいのじゅんさんが好きです(笑)
東京公演終了後に、長塚さんに「圭史、もう一週間やろう!」
て言われたそうで、心から舞台が好きなんだなぁと思って
なんだか嬉しくなりました。

水野美紀さんは、舞台でもすごく素敵ですね。
しっかりもので明るく見えるのに
実はトラウマも抱えていて
そのトラウマを感じなくさせてくれる
徳市のことがとてもとても好きで
徳市が村から出ていくことをとても恐れていて…
不安定なタネがかなり切なかったです。

猫背椿さんは、ナチュラルで可愛くてやっぱり素敵です。
ヤマコは新兵衛のことが大好きで
邪険にされながらも付いてきていて
でもひとりの女としてもしっかりしていて
とても愛すべきキャラだと思います。
伊達さん演じる新兵衛との掛け合いが微笑ましくて良かったです。
でも、ヤマコが妊娠しているというエピソードが
サラリと流された感じだったのが残念だったです。

郷地兄弟(ゴーチブラザーズ?笑)も三人とも良かったです。
壱之佑役の市川しんぺーさんは、インパクトありますね(笑)
途中、客席から登場し、その場で演技する時があるのですけど
夜公演の時はちょうど私の隣に来られて
反対側にいる弐之佑役の川原さんと大声で台詞言ってるのが
もうめっちゃ大きな声で笑えました(笑)
壱之佑は、もうホントずるくて悪いヤツなんだけれど
子供が欲しいのに出来ないという焦りとか悲しみも感じられて
勧善懲悪には思えないところが
長塚さんらしいなぁ〜と思いました。

内容的にはとても暗くてじめじめした話のはずなのだけど
随所に笑いが散りばめられていて
しんみりしたかと思うと笑わせられて
笑わせられたかと思うと怖くて凍り付いて
って感情の起伏激しくて大変でした。

ラストで
それまで気配だけだった蟒蛇が姿を現してビックリしました。
本当に生きてるみたいでずずずって感じで動いていて
ぞぞーーっとしました。

■第二部「桜飛沫」

15分の休憩を挟んで幕が開くと
それまでの暗くてじめじめした湿地帯から一変。
明るい光の下、天井まで届きそうなほど大きな桜の木。
それは今まさに満開で、はらはらと花びらが落ちてきています。
それが本当に美しくて
それだけでもううっとりとしてしまいました。

二幕の主役は佐久間役の山本亨さん。
初めて観る役者さんでしたが、渋くてカッコ良かったです。
佐久間は、
かつての親友(徳市)の家族を皆殺しにしてから
自分が殺したものたちの亡霊に脅え夜も眠れなくなって
地にへばりついてただ生きている男。
最初は世を欺く為の演技かと思っていたのだけれど
もうそれは本当にボロボロで
上手く言えないけど、なんだかすごく悲しかったです。
佐久間は、足を痛めて杖をついているという設定だったのですが
実際に亨さんはお怪我をされていたようですね。
カーテンコールでも足を引きずっておられたのが気になりました。
もしその怪我がなかったら、
殺陣ももっと増えていたのかもしれませんね。
最後の、それまでと違った凄味のある声や姿もとてもカッコ良かったです。

山内さんの僧正節も健在でした(笑)
でもそれ無くてもイイかなぁ〜とちょっと思いました(^_^;
明るく楽しそうに見える町の人たちも
実は左京らによる非道い仕打ちによって、狂ってきている
ということだったのだけれど
その酷い仕打ちみたいなものがあまり描かれていなかったし
この悪3人組がなんとなく可愛い感じに見えてしまって
最後、町の人たちから逆に酷い扱いを受けるのが
説得力無い気がしました。
も少しめちゃめちゃでも良かったのになと思います(笑)

女性陣は二幕も魅力的でした。
マルセ役の真木さんは、
「十字架」の時もとても可愛かったけど
今回も可愛かったです。
「私もみんなと一緒に狂ってしまえば良かったのに」
という台詞が印象的でした。

グズ役の峯村さんも、本当に可愛らしくて素敵だったです。
なんだかとってもほんわかした雰囲気の方で
峯村さんのシーンはなんだか空気が温かくなるようでした。
グズは、蛭間の暴力によって頭がおかしくなってしまったのだけど
実は一番全てを見通しているのはグズなのではないかと思いました。
両親の髑髏を持って会話するのが切なかったです。

ラスト。
佐久間とグズとマルセしかいなくなった町に
復讐の鬼となり佐久間を斬りにやってくる徳市を探して
タネと新兵衛とヤマコがやってきます。
そしてついに現れる徳市。
ぼろぼろの佐久間は立ち上がり、二人は対峙します。

そして…

いざ、斬り合おうとする瞬間、

舞台の両側から
ぶわぁ!!!と物凄い量の桜の花びらが吹き出し
目の前はピンク色で覆われました。
まさに桜飛沫!

あまりの勢いにビックリして
頭が真っ白になっているうちに暗転。
しばし放心…

音楽もめちゃめちゃカッコ良くて、
もうもう完璧鳥肌モノのラストでした。

徳市が出てきた時点でなんだか分からないけど泣けてきてたのが
一気に涙溢れ出したって感じです。

昼公演の時は舞台に近かったので
私たちの上にもたくさんの桜飛沫が散っていました。

夜公演の時は少し離れていたので
桜飛沫が噴き出した瞬間に、刀を合わせる二人の姿も見えて
その一瞬の光景が、今も頭に焼き付いています。

なんだかとっても「やられた!」て思うラストシーンでした(笑)

カーテンコール。
昼公演は3回? 挨拶は無し。
2回目前くらいから拍手が手拍子になってたのが新鮮でした(笑)

夜公演は4回? 昼と違って途中で太鼓の音が入り、
役者さんが数人ずつ出てきてお辞儀して…というものでした。
(昼は一度にみなさんが出てきてた)
そして長塚さんの挨拶。
「阿佐ヶ谷スパイダースは今後も時代劇集団として頑張ります!」
「そのくらい時代劇にハマってます」
と言われてて、山内さんとかも驚いてました(笑)
いよいよ締めって時にまたまた大量の桜吹雪が
今度は客席に向けて放出されて、またまた大興奮でした♪
幕が下りても拍手はなりやまず、ほぼオールスタンディングに!
もう一度皆さん出てきてくれて、本当の終幕となりました。

大阪でこんなに盛り上がるなんて、
正直思っていなかったので感動的だったです(笑)

途中休憩を挟むとはいえ3時間以上の大作でしたが
全然長さも感じず(2回目は少し辛かったけどbb)観れて良かったです。
本当に本当に美しいステージで(加藤ちかさんの美術は本当に素敵vv)
映像に残らないのが心から残念ですが
いつまでも頭の中に残していたいと思いました。

欲を言えば、徳市と佐久間が再会して対峙する前に
も少し「間」というか、「ため」みたいなものがあると良かったかなと思います。
全体的に二幕の方が一幕よりあっさり描かれてた気がするのが残念です。
それぞれの話を独立させて、連作として作っても良かったかもなぁ〜
と思ってしまいました。

一幕の、愛し合えば愛し合うほど不幸になるというところや
二幕の、仇なのに愛しているというところや
一幕二幕通しての、悪いヤツにも悪いヤツなりの理由があって
完全には誰も憎めない、というところなど
いつもながら長塚さんの作品は
「パッ」とは答えが出せなくて、あとからじわじわ浸みてきますね。

こんなに長々書いても、まだ何か心に引っかかってる感じですbb