パルコ・プロデュース公演
『WEE THOMAS -ウィー・トーマス-』

作/マーティン・マクドナー
訳/目黒条
演出/長塚圭史
出演/高岡蒼甫 岡本綾
   少路勇介 チョウソンハ 今奈良孝行 富岡晃一郎
   堀部圭亮 木村祐一

2006/06/24(土)14:00開演/19:00開演
大阪/シアター・ドラマシティ

1993年、アイルランド・イニシュモアの島。
古い石造りの民家の狭いリビング。
テーブルに敷かれた新聞紙の上には、
頭部が半分吹き飛んでしまった黒猫が血まみれで置かれている。
傍らには中年男、この家の主人・ダニー(木村)と、
近所に住むデイヴィー(少路)が呆然とたたずんでいる。
問題は、この死んでしまった黒猫、
ウィー・トーマスがダニーの猫ではなく、
彼の息子・パドレイク(高岡)が
5歳の頃から異常に可愛がっている猫であるということだ。

それが何故問題かというと
パドレイクはINLA(アイルランド国民解放軍、IRAから分派した過激派リパブリカン・グループ)の中尉で、
キ○ガ○・パドレイクと呼ばれ
父親のダニーでさえその存在に脅えるほど
人々から恐れられている人物だからだ。

ちょうどその頃、パドレイクは
青少年にドラッグを売りつけたジェイムズ(今奈良)を拷問中。
パドレイクがジェイムズの乳首を切り落とそうとしたその時、
彼の携帯電話のベルがなる。
父・ダニーから猫の具合が悪いという連絡であった。
大切な猫の一大事に、半狂乱状態のパドレイクは、
拷問を放り出し、実家へ向かう。

一方、
パドレイクの凶暴ぶりをよく知る父親や幼馴染みのデイヴィーは
猫殺害の事実を隠そうと必死!
しかし、そのオマヌケ隠蔽工作は彼の怒りに油を注いでしまう。
さらにクレイジーなお仲間、
クリスティ(堀部)、ブレンダン(チョウ)、ジョーイ(富岡)や、
彼に恋するパンクな女の子、マレード(岡本綾)が登場し、
事態はとんでもない方向にどんどんと転がり始めてしまう・・・。


これは、紛れもなくコメディーですね。

前評判通り、かなりなスプラッターな話で
血もいっぱい流れるし
人もいっぱい死んだり傷ついたりするのですが
何故か登場人物たちみんなが可愛く見えてくるんですよね。
とても恐ろしいことが起こっているのに
何故かクスクスと笑ってしまうんです。
ドリフの
「志村、うしろうしろっっ」的な笑いとかあるし(笑)

これは演出によるものなのかもしれないし
マクドナーの人柄もあるのかもしれません。
ものすごく残虐な話でありながら
最後には微かな救いを残していて
ちょっぴりだけどホッとして、心がじ〜んとしてしまうんです。
なんだか泣きそうになってしまうんです。

そんなところは、
演出の長塚さん自身の作風とも似ていると思います。

少し前にニューヨークで上演されたものは
もっとドライで、もっと観客はどかどか笑ってたらしいですけど
長塚さんはそこのとこ、もう少しウェットにしたくて
登場人物達の気持ちや背景を掘り下げて
観客が感情移入しやすいようにしたそうです。
それはとても成功しているように思います。
本当にみんなバカで可愛い愛すべき人たちに思えてきましたから。

でも、
猫のことはとてもとても愛していて
ちょっと病気になったってだけでもオロオロするのに
人間のことはなんとも思って無くて
親でも平気で殺せちゃうっていう感覚はかなり怖いですよね。。

高岡蒼甫くん。
映画「パッチギ」で注目された人らしいですが
私はその映画を観ていないので名前を聞いてもピンときませんでした。
昼公演の時、結構噛み噛みでしたけど
でもまぁ台詞の量も多いし、テンションも高い大変な役で
たしかほとんど初舞台?ぐらいだと思うので
とても頑張ってたと思います。
もう少しキレたときとそうでない時の差が出ると
より良かったかなぁとは思いました。
みんなからとても恐れられていてるっていうのが
あーんまり感じなかったので。。。
ってそれじゃダメ?(^_^;

岡本綾さん。
可愛かったですね〜
ベリーショートな髪型がとっても似合ってましたvv
今までおとなしめの役が多かったとのことですが
こおいう男の子っぽい役のが似合うと思いました。
マーレードもとっても危ない性格でした(実は一番?)けど
乙女な部分もあって、切なく可愛かったです。
彼女も初舞台とのことでしたが、
とても堂々としていて良かったと思います。

少路勇介さん。
全然知らない人でしたけど有名な人なのでしょうか?(^_^;
とっても自然で良かったとです。
キム兄さんとの掛け合いが面白かったです。
登場人物の中で、一番まともな人でした。

チョウソンハさん。
外国人の人?ですが全然感じませんでした。
いわゆるボケ?役でしたが
とってもテンポも良くて面白かったです。

今奈良孝行さん。
この方、何度か出演作を観たことあるはずなんですけど
ごめんなさいっっ全然覚えてませんでした。。
出演シーンの殆どずっと逆さに宙づりにされていて
すっごく大変そうだなぁ〜と思いました。
でも腹筋とかすごく鍛えてそうで
逞しかったです(笑)

富岡晃一郎さん。
長塚作品ではお馴染みトミー。
いい人(?)の役で良かったね(笑)
なんかちょっと痩せた?て思ったのですが
日記読んでるとそうでもないのでしょうか(笑)

堀部圭亮さん。
この方もお芝居の舞台2回目くらいじゃないかと思うのですが
結構自然な感じで良かったと思います。
堀部さんと富岡さんとチョウさんの3人組が
今回の事件の発端を作った張本人なのですけど
漫画の悪役みたいで
なんとも言えず愛嬌があって憎めない感じでした。

木村祐一さん。
キムキム兄やんが出る?!
それだけで何だか面白いことになりそうで
観てみたいって思える部分ってあったと思うんですが
期待を裏切られることなく、面白かったです。
またまた初舞台、ということで
まぁ台詞とかは正直上手くはないのですけど
何とも言えずいい味出してました。
やっぱり、間の取り方とか絶妙ですよね。

今回殆ど舞台経験の無い方ばかりということもあり?
いまいち中心になる、というか締められる人がいないかなぁ〜
というのが残念でしたけど
上手く纏まっていたとは思います。

でも、
前回のを観に行かなかったことがとてもとても悔やまれました。。
前回はもう少し年齢的にも高くて
それぞれとても活躍されてる方ばかりでしたから
また全然違ったものが観れただろうなぁと。
北村有起哉さんのパドレイク、中山祐一朗さんのデイヴィー、
観たかったです(>_<)
戯曲を買って帰ったのですが
ついデイヴィーの台詞を中山さんの声で想像しながら
読んでしまいました(^_^;
あ゛ーなんで観に行かなかったかなぁ〜(>_<)っっ

本物の猫ちゃんも2匹登場するのですが
こちらはとてもおとなしく、まるでぬいぐるみのようで
でもちゃんと鳴くトコは鳴いたりして凄かったです。
夜公演の時、1匹の猫ちゃんがすごく暴れてしまって
「あーここで逃げたらどうなるんだろう〜」
てドキドキしました(笑)
唯一猫ちゃんたちは前回から続けて出てるんだそうですが
舞台で本物の動物を使うって大変ですよね。

カーテンコールは昼夜とも3回あったのですが
挨拶とかなくて残念でした。。
夜の回は長塚さん、
舞台に上がってくれるかなぁ〜と期待してたのですけど。。
大阪に入られてはいたみたいなんですけどね〜
まぁ、床に“あんなもの”が転がったままでは
あんまりニコニコ話すのも…て感じなのかもですけど(笑)

今回というか前回もですが、
「心臓の弱い人は来ないでください」て感じで
ショッキングな部分を全面に出されていて
いろんな人の感想を観ても
「グロかった」てのが多かったのですが
実は私はそんなに気になりませんでした(^_^;
ビジュアル的に怖いのは平気みたいです(笑)
血もホントたくさん流れるのだけれど
なんだかサラサラしていて
あんまりリアルに感じなくて気持ち悪く無かったし
猫や人の死体(の模型)も
そんなに怖く無かったです(^_^;
血って、本当はサラサラしているのかもしれないけど
イメージ的にはドロッとしてるイメージで
あんなザーザー流れるかなぁ〜とか思っちゃいました(^_^;
後の掃除や洗濯のことも考えて
落ちやすい血糊が使われたのかなぁ〜とも思うのですが。。

戯曲の方がもちょっとグロなシーンが多かった気がします。
実際、海外版の方がグロいらしいですし(^_^;

終演後、客出しされてる時から
血まみれの床や“あんなもの”を片づけてるスタッフの方々
ホント大変だなぁ〜と思いました(^_^;
あの光景の方が、かなりシュールで怖いかも(笑)
移動の時落っことしたら大変なことになるよなぁ〜とか
思っちゃいました(笑)

あと、血が出るところも含め、たくさん仕掛けがあったので
ちょこちょこトラブルもあったみたいです。
昼は堀部さんがお腹を撃たれるシーンで
お腹からは血が出ずに、背中からだけダーダー流れて
「すごい撃ち方だな」て思ったし(笑)
夜は切り取られる足(死体を解体するのですbb)が
違うタイミングで取れてしまって
それでもずっとその部分を切っていたりして
「あらら」て思っちゃいました(笑)

あとは…
音楽がサイコーにカッコ良かったですね♪
もともとケルト音楽みたいの大好きなので
客入れの時から流れている音楽が気持ちよすぎて
ずーっとワクワクしてました(笑)
サントラ出てたら絶対買ったんですけど。

セットも良かったです。
途中舞台が迫り出してくるところとか
おぉ!てドキドキしました。

昼の時は1番前の席で
舞台の奥の方とかが見えなかったのですが
夜の時は少し後の真ん中だったので
窓の向こうの景色もちゃんと見えるように作ってあるのとか
空に浮かぶ大きな月とか
すごいなぁと思いました。
音も夜の時の方がよく聞こえて
ピストルの音にビクぅっとなってしまいました(笑)
席によっても見え方聞こえ方が
全然違ってて面白いですね。

照明もカッコ良かったんですよね〜
途中、音楽と照明とバチぃっと合うところがあって
カッコいいぃぃぃ(≧∇≦)///
てゾクゾクしました(笑)

やっぱり、長塚さんの演出、好きみたいです♪

アイルランド闘争のこととか全然分からないけれど
分かってたらまた違う感想あるのかなぁ〜とは思いますが
それはそれとして
とても良い作品を観ることができたと思います。
再演してくれて、ホントありがとうと言いたいです。