『ビューティ・クイーン・オブ・リナーン』

作/マーティン・マクドナー
演出/長塚圭史
出演/大竹しのぶ 白石加代子
   田中哲司 長塚圭史
※当初、出演予定だった黒田勇樹は体調不良のため降板しました。

2007年12月30日14:00開演
東京/パルコ劇場

真っ黒いユーモア、猛毒の悪意、不吉な沈黙。
島、家庭、閉ざされた環境で恐ろしいほどに歪んでいく母娘関係。
一瞬輝いた光が照らし出したのは、思いがけない結末だった・・・

アイルランドの片田舎、ゴールウェイ
コネマラにあるリナーンに暮らす母と娘。
自分勝手で支配的な母親マッグ(白石)は、
病身を理由になにひとつ自分でしようとはせず、
娘に全ての世話をさせている。
娘モーリーン(大竹)も負けてはいない。
母の頼みをわざと無視したり、いやがらせをしたりと、
二人の戦いが毎日続いている。
ある時モーリーンが出かけている間に、
近所に住むレイ(長塚)がパーティの知らせを持ってやってくる。
イングランドで働いている独身の兄パト(田中)も久しぶりに帰ってくるという。
しかしモーリーンが結婚して出て行ってしまうと困るマッグは、
その伝言を彼女に伝えない。
ところがモーリーンは帰宅の途中、レイに出会ってその話を聞いていた。
モーリーンは新しいドレスを買ってパーティに出席。
その晩、パトを家に連れて帰ってくる。
翌朝二人を見つけたマッグは激怒、
そしてモーリーンに精神病歴があることを暴露してしまう・・・

今年最後の観劇は念願のパルコ劇場での観劇。
前に一度「LOVE LETTERS」を観たことはあるのですが
ガッツリしたお芝居をぜひ観たいと思っていました。

そして、観に行って本当に良かったと思える作品でした。

大竹さんと白石さんは本当に凄い!
お二人の憎しみ合う親子は真に迫っていて
ずっと緊張しながら見入ってしまいました。
周りは結構笑ってたけど
私はあまり笑えなかったです。
ドゥーリー兄弟のシーンはかなり和みましたけどね。
あとの母娘のシーンは…
言葉や行動の暴力的なところが多いので
んーやっぱ笑えないです。

モーリーンとかすごく切なくて悲しいし
マッグの、モーリーンに虐待されながらも
「だれが私の面倒をみるんだい」
て台詞もなんか悲しかったです。
閉塞的な田舎の町で
さらに人里離れたところに2人だけで住んでいて
都会に出たら出たで差別され
そこから抜け出すこともできない。
そんな…何て言うか、もどかしさみたいなものも
すごく感じました。
地元では二枚目でモーリーンも恋をするパトでさえ
イギリスでは差別され
一緒にお酒を飲む仲間すらいない。
そこも切なかったです。

大竹しのぶさんは
地味な中年女性から、
ときめいて少女のようになったり
最後壊れてまるで母のようになったり
まさに変幻自在というか
役に入り込んでて本当に凄かったです。
ただ、ちょっとセリフまわしとかが演劇的で
浮いてるかなぁ〜とも思いました。

白石加代子さんを生で拝見するのは初めてですが
存在感がハンパ無い方だなと思いました。
腰が曲がって手も不自由な老婆役でしたが
まるでアニメのようでした(笑)
表情もすごく意地悪そうで怖いのですが
カーテンコールで再び出てこられた時は満面の笑顔で
足取りも軽やかでとても可愛らしかったです。
大竹さんとはプライベートでも仲が良いらしく
手を取り合って出てこられた時は本当に楽しそうで
ホッとしました。
この切り替えが凄いなと思います。

田中哲司さんも生は初めてで
なんとなく映像の方なのかと思っていたら
結構舞台にも立たれてる方で
背も高いし本当にカッコ良かったです。
演技がとても自然で素晴らしいと思いました。
ただ、
パンフレットの中で
「長塚圭史くんとは初めてだけど
 大竹しのぶさんとは映画『遠くの空へ消えた』
 でご一緒したので…」
とか書かれていて
「長塚さんも『遠くの〜』には出てたじゃない!!
 しかも一緒のシーンあったじゃないっっっ」
と心の中でツッコミ入れてしまいました(>_<)
聞くところによると
けっこう天然な方みたいです(笑)
ってか、校正の段階で誰か気付いてあげてっっっ

長塚圭史さん
レイ役の黒田くんの突然の降板のため急遽代役で立たれました。
だけどそんなこと全然感じさせず
まさに【長塚さんのレイ】でした。
20歳には見えなかったかもだけど(^_^;
もうとってもしっくり来ていて
黒田くんには悪いけど
他のレイは想像できませんでした。
黒田くんの舞台は観たこと無いから分からないけど
彼だとあの面子の中では弱かったんじゃないかなぁ〜
とも思ってしまいました。

それくらい、私の中ではこの4人でピッタリでした。

ラスト、
モーリーンが、かつて母が座っていた
ロッキングチェアから立ち上がり部屋を去って
その揺れが音楽が終わると同時にピッタリ止まったのは
すごいっっと思いました。
もしも仕掛けが無いのなら
最後立ち上がる時の力の入れ方とかすごく練習したんだろな
と思います。

あのあとモーリーンはどうなったんだろう。。
そう思うと
やはりとても切ないです。。。

そしてこの脚本を20代で書いたという
マクドナーって人は
やっぱ凄い人だなと思いました。
劇中に、彼の他の作品の登場人物たちの名前が出てきていて
その作品もぜひ長塚さんの演出で観たいなと思いました。