『薮原検校』

作/井上ひさし
演出/蜷川幸雄
音楽/宇崎竜童
出演/古田新太
   田中裕子 段田安則 六平直政
   梅沢昌代 山本龍二 神保共子
   松田洋治 景山仁美 壤晴彦
ギター演奏/赤崎郁洋

2007年6月10日(日)13:00 開演
大阪/イオン化粧品 シアターBRAVA!

時は今から二百年前ほど遡る江戸中期、塩釜(今の宮城県)の地。
魚を売り歩くのを生業とする七兵衛は、
家の者が留守だと勝手に上がりこみ、盗みを行うという小悪党。
醜女だが無類に気立てのよいお志保を嫁にもらい、一旦は改心するが、
お産の費用欲しさに行きずりの座頭を殺して金を奪う。
月みちて生まれたのは男の子。
その子は、醜男で悪党という両親の悪いところばかりを譲り受けたうえに、
あろうことか盲だった。
「座頭をひとり減らしてまたひとり殖やしただけだ」
とめぐる宿命の恐ろしさに耐えかね、七兵衛は己が喉に庖丁を当てる。

目が見えないのならば座頭になるほかないと
塩釜座頭・琴の市に預けられたその子は、杉の市という名前をもらう。
手癖が悪く手が早い杉の市は十三で女を知り、
師匠の女房お市にまで手をつける始末。
ある日、琴の市と杉の市がさる網元の座敷で浄瑠璃を語っている時、
佐久間検校が乗り込んできた。
当道座の掟に叛いたと難癖をつけ、おひねりを巻き上げに来たのだ。
言い争ううち、杉の市は佐久間検校の結解(目明きの秘書のこと)を
匕首で刺してしまう。
そして別れを告げに寄った母の家でも誤まって母を刺し、
駆け落ちしようとお市と共謀して師匠・琴の市を殺すが、
お市は瀕死の琴の市の返り討ちにあう。

一人になった杉の市は、師匠から盗んだ金を携えて江戸に向かう。
門下生になるために江戸で注目を集める学者・勾当塙保己市の元を訪れた杉の市。
晴眼者以上に品性を磨き、それ以上の仕事をすることこそ
盲人が晴眼者と対等になるための唯一の道だと説く保己市が
目明きと対で並ぶには金しかないと考える杉の市を弟子にするわけもない。
金の力で先生よりもずっと早く検校になってみせると言い、
杉の市は藪原検校に弟子入りし、貸し金の取立てで見る間に頭角をあらわすようになる。

そして二度目の主殺しをし、念願の二代目藪原検校の襲名披露をするその日、
彼の前に立ちふさがる影が………。

世界のニナガワと古田新太。
そして作は井上ひさし。
これは何か凄いことが起きそうだ…
てなことで、
実は蜷川幸雄も井上ひさしも好きじゃないのに
真面目な古田さんを観たいが為に行ってきました(笑)
(あぁ、また邪だ…)

古田さんは、主役の杉の市役。
悪役の多い方ですが
今回もかなり悪い役でした。
けど、思ってたよりずっとチャーミング、といいますか。
やってる事はかなりめちゃくちゃなのですが
そんなに悪い人にも見えないのが不思議でした。
盲人の役、というのも難しそうですが
途中かなりの長台詞がありまして
必死に台詞を言う古田さんなんてあんまり観ること無いので
これだけでも観た甲斐あったなと思いました(笑)
カーテンコールでいっぱい投げキッスしてくれて
やっばこの人はサービス精神旺盛で素敵だなと思いました。

あと凄かったのはやはり何と言っても壤晴彦さんでしょう。
幕が開いた時から最後まで出ずっぱり。
この物語の狂言まわし的な役で
もう本気ものすごい量の台詞をよどみなくスラスラと語る姿は
素晴らしかったです。
蜷川作品に殆ど出演されてるんじゃないかと思うのですが
蜷川さんに本当に信頼されてるんだろうなぁ〜と思いました。
えぇ声ですしvv

他の方々は何役も何役もされて
歌もあるし早変えもあるし盲人の役もあるし
ホントーに大変だなぁ〜と思いました。

田中裕子さんが文学座の方だとは知らなかったです。
ずっと映像の方だと思ってました。
すごく色っぽくて艶っぽくて素敵でした。

段田さんは自然体っぽいところが良いなと思いました。
古田さんとのからみが面白かったです。

六平さんはやっぱりとても個性的でした。
みんなで歌うシーンで
この方の声が一番目立ってたのが印象的でした。

そう、今回の作品はところどころに歌が入るのですが
つか、井上さんの作品ってそおいうの多いんですか?
これがね、どーもね、、、(^_^;
ここでまたミュージカル苦手なのが…
曲とかもすごく良いし、
普通のミュージカルと違って、みんななんていうか
台詞のように歌っていて、そおいうのは嫌いじゃないんですが
なぜ、歌にする必要があるのかな、と。
つい思っちゃうんですね〜

今回、折角すごく実力派で個性的な役者さんが集結しているのに
ほとんどが語りで、
間あいだには歌が入って、
それぞれが重複して役を持ってるし
なんかちょっと勿体ない気がしました。

そう、実は私、今回(も)眠気との戦いだったのです(>_<)~
これはきっと壤さんの語りが気持ちよすぎるから
ってのもあると思うのですけど(^_^;
セットも周りを雨戸で囲ってあるだけのものに
あとはロープが張られてるだけというとてもシンプルなもので
朗々と語られる長台詞を聞いてると
ついつい瞼が重くなり
芝居に入るとハッと目が覚める、
て感じでした(^_^;
頭がガクッとなったりしてたし
後ろの人には顰蹙だったかも〜bb

で、話の内容はかなりダークで
卑猥で猥雑な言葉や差別用語もいっぱい出てきて
まぁでもそんなことは特に嫌とか無いんですが
最後の最後、ラストシーンが
もうもう衝撃で。
グロいのとかは別に平気なのですけど
その流れというか話が
なんか嫌で仕方なくて
涙が出てきてしまいました。

※悪行の限りを尽くしながらものし上がり
 ついに盲人の中での最高位「検校」になる
 そのほんの目前で杉の市は捕まり
 民衆への見せしめに公開処刑されるのだが
 どんだけ残忍な殺し方をするかということで
 「三段斬り」という方法が取られることになる。
 それは、罪人を吊るし
 まず下半身を斬る
 すると身体はバランスを崩して頭が下になる
 その瞬間を狙ってこんどは頭を切り落とす。
 というもの。
 しかも、これを考えた塙保己市は
 処刑の直前に罪人に蕎麦を食わせろと言う。
 それは何故かというと…
 斬られた首からまだ消化されていない蕎麦が
 血まみれでどばーっと流れ落ち
 より残酷だから。という理由。

…それを古田さんそっくりの人形で
超リアルに見せる蜷川さんの演出は
ちょっと合わないってかダメでした(T_T)
処刑をまるで花見でもするみたいに
ワイワイ楽しそうに見物する民衆
ってのも怖くてダメだったし。。

もう最初から、合わない内容だったのかもしれませんbb

カーテンコールも
その首から血まみれの蕎麦を出したままの人形の前で
みんなニコニコされても…みたいな感じで
拍手はしたけどどうも乗り切れず。。

役者さん達はホンッと素晴らしかったと思うんですけどね。。

色んな人の感想読んでも
みんなほぼ絶賛で
私みたく書いてるものにはめぐり逢わなかったので
私ってばやっぱ天の邪鬼なのかもしれません(^_^;

次に観に行く「ロマンス」が
チラシの雰囲気通り、ほのぼのした感じたといいなぁ〜
と切に思う、今日この頃です。