『タンゴ』

作/スワボミール・ムロジェック
翻訳/米川和夫 工藤幸雄
演出/長塚圭史
美術/串田和美
出演/森山未來
   奥村佳恵
   吉田鋼太郎
   秋山菜津子
   片桐はいり
   辻萬長
   橋本さとし

20101121日(日)13:00開演
東京/Bunkamura シアターコクーン

散らかり放題の部屋で、アルトゥル(森山)は怒りに打ち震えている。

賭け事に熱中し、
アルトゥルの戒めもどこ吹く風の祖母・エウゲーニャ(片桐)。
万事が事なかれ主義の叔父、エウゲーニュシュ(辻)。
最も許しがたいのは、
彼らと共にトランプに興じている元の小作人、
エーデック(橋本)の存在だ。

若い頃革命と解放≠旗印に、
伝統≠破壊しつくした父・ストーミル(吉田)は
今や誰に観せるともない実験演劇を嬉々として繰り返す。
女盛りの母・エネオノーラ(秋山)は
こともあろうにエーデックとの男女の仲を鷹揚ににおわせる。

呪われた自由≠ノ支配された家族を救うべく
世界秩序の再建計画に邁進するアルトゥルの鉄の意志を、
美しい従妹・アラの(奥村)奔放な魅力が惑わせる。
彼女と伝統的な手法で結婚≠することで家族の目を覚まさせようと、
滑稽で熱心なプロポーズをはじめるアルトゥルだったが……




キャストが半端なく好みすぎるんですけどーーーっっっ
もう絶対行かなきゃですよ!
てなわけで、東京まで行ってきました

今回の席は、S席と特設S席とに分かれていて、
特設S席は前方の席だけど、当日まで自分がどこになるか分かりません
てものでした。
前に「桜姫」を観たときみたいな囲み席かなと思ったら、
やっぱそんな感じでした。
ステージが客席に張り出していてその周り3方をベンチ席で囲むって感じ。
私は下手側の右端で、ちょうど舞台の角っちょのトコでした。
角度的に見えにくいかな、と思ったのですが、そうでもなかったです。

舞台は透明なアクリル?の壁で覆われ、
中には白いカーテンがしかれています。
開演すると、その中に何人かの人がいて、
何かやっているのが分かるのですが
声はくぐもってよく聞こえません。
しばらくしてカーテンがさっと取れ、
壁が上に上がっていってステージ上にいる人たちが見えました。
(順番ちょっと違ってるかも。。)
そこは主人公、アルトゥルの家で、家具も壁も透明。
ドアやキッチンなどは壁に落書きみたいな感じで書かれています。

そこへ客席から人が歩いてくる気配が・・・
遅れてきたお客さんかな、
それにしてはコソコソしてないな()と思いつつ見ると
な、なんと長塚さんじゃあありませんかっっっ
え、こんな前からステージチェックするの???
と思ってたらどんどんステージに近づいて、
まん前で芝居を眺めてる(^_^;
そこで、あぁ、これも演出なのかと気づく。
なんたるサプライズ!()
その間もずっと芝居は続いてるのだけど、
長塚さんが気になってステージに集中できないっっ(^_^;
そのまま長塚さんは舞台を回りこみ、
手に持っていた大きな本をドンっと置いた。
それを何事も無かったかのように舞台上の人は手にとって
また芝居を続ける。
長塚さんはその後も舞台上や舞台袖で、
小道具を出したり片付けたり
時にはそのまま舞台の隅からじっと演者をみつめていたりして
なんだろ、神の視点? 不思議な感じでした。
途中からは舞台上に惹きこまれて、そんなに気にならなくなったけど
最初はホント傍に来られるとドキドキして集中できませんでした()
 
【「タンゴ」は1965年、ワルシャワで初演。
自由とは何か、世代間闘争、ファシズムの脅威まで描き、
当時、賛否両論の社会的反響を巻き起こした。】
ということでしたが、
とにかく膨大な台詞量に圧倒されました。
言ってる内容はほとんどが難しくてよく分からないのだけど(^_^;
でも、全然嫌じゃありませんでした。
役者さんたちの力量のお陰も多大にあったと思います。
ガーって捲くし立てたかと思えば
ゆっくり丁寧に言ったり小声になったり
その強弱とか絶妙で
ホント、どんどん惹きこまれてワクワクしっぱなしでした。

結構とんでもない話でラストは悲劇なのだけど
笑っちゃうところもいっぱいで、
悲劇と喜劇は裏表なんだなと思いました。


森山未來くん。
やっぱ凄いです。若手ナンバー1。ですねw
あれだけの台詞を憶えて、ちゃんと感情も入れて喋れて
アルトゥルの傲慢と幼稚さをよく表現されてたと思います。
動きもとてもなめらかで美しかったです。

欲しいものは全て手に入る世の中で
悪いことは全部他人の所為にして
自分はこんなんじゃない、やればできるんだ!!
頭でっかちで理屈ばかり主張しながら結局何もしない、できない。
しかし根拠の無い自信だけは持っている。
アルトゥルって、今の若者にもとても似ていると思いました。
親に向かって「あんたたちはダメだ」というのなら
何故家を出なかったのか。
親に反抗しながらも、母親が作った朝食を食べ
家からも親からも独立できない。大人になりきれない子供。
最後、アラの裏切りにあっさり壊れてしまう弱さとか
哀れとは思えど可哀想だとは思えませんでした。

だらだらと毎日を過ごしている大人たちの方が
それでいいとは言えないけど解る気がしました。

奥村佳恵さん。
めちゃめちゃ可愛かったです。
もうそれだけで全てOKて感じでした()
でも、新人さんとは思えない堂々とした演技で
先輩たちの中にしっかり立っていたと思います(えらそう?
ウエディングドレスなのに白いブーツなのも可愛かったです
アラは、ちょっと頭が弱い娘のように見えつつも
一番冷静でしっかりしてたなと思います。

吉田鋼太郎さん。
森山くんに負けないくらい怒鳴ってて
喉大丈夫かなと心配になりました(^_^;
ほぼ真っ裸になったりw
電球を2つ首から提げてうろうろしたり
なかなか面白い役だったです
シェークスピア劇とか、ギルティな鋼太郎さんとは別人でした()
でも正装してピッとした姿はカッコよかったです。

秋山菜津子さん。
素敵でしたvv
アラとの女同士の話とか良かったです。

片桐はいりさん。
おばあさん役で、動きがとにかく面白かったです()
あんまり出番が無いのは残念でした。
おばあさんが何故自ら死を選ぶのかも謎でした。

辻萬長さん。
長いものには巻かれろなおじさん。
主体が無くてイラつくけど一番賢い生き方かも(^_^;
表立って目立つ役ではないけれど、
だからこそ、自然で上手いなぁと思いました。

橋本さとしさん。
最初はただの正直者?の小作人だったのに
暴力で人を支配する魅力を知って最後は独裁者になる。
なかなかピッタリな役でしたw
結構恐かったです。

ラスト
独裁者になったエーデック(橋本)と、
それにしたがって生き延びることにしたエウゲーニュシュ(辻)が
タンゴを踊りはじめる。
舞台奥には長塚さんが佇んでいて、バンっとガラス板を落として割る
それも気にせず二人はタンゴを踊りながら捌けていく
大きくなる音楽。暗転。
この終わり方が意味するところも、イマイチ解りませんでした。
けども観終わったあとの気持ちはスッキリしていたというか
「凄いもの見たっっ」て感じでやっぱりワクワクしてました。
カーテンコールが無くてそのまま終わったのも
作品には合ってたと思います。

ストーリーのしっかりある作品が好きで
不条理劇とか苦手な私だけど
何故かこの作品は嫌じゃなかったです。
(一応ストーリーもちゃんとあるけど)
台詞のリズムが心地いいからかもしれません。
森山くんがアルトゥルの台詞を言っているところを
長塚さんが言っているように容易に想像できて
やっぱり私は長塚さんの紡ぐ言葉のリズムが好きなんだな
と思いました。
今回は翻訳モノで訳したのも長塚さんではないけれど
やっぱり色は出るんじゃないかなぁと思います。
あと、「桜姫」の演出もされた串田和美さんの舞台美術が
透明でシンプルだけど存在感もあって
とても素敵だったなと思いました。

次は大千秋楽を大阪で観るのですが
いろんな角度から見るとまた違った印象を受けそうだし
できれば今度は正面から見たいと思いました。
(また特設S席なので行ってみるまでどこの席か分からない)
てかあと最低3回くらいは観たかったです。

ただただ「スゲーよタンゴっっ」て誰かと話したくなりました()