演劇ユニット体温 第8回公演
『父と暮せば』

作/井上ひさし
演出/中井敏哉
出演/油野昌子(チームもののふ)
    中井敏哉

201186()1400開演
広島/広島市南区民文化センター スタジオ

舞台は昭和23年(1948年)の夏、広島。
23
歳の図書館司書の美津江(油野)は、あの夏に被爆し、原爆病が潜んでいる。
美津江は勤め先の図書館で出会った木下青年にひかれているが、
「自分だけが幸せになることはできない」と自身に恋を固く禁じる。
頑なに恋心を否定し、幸せの一歩手前で躊躇する美津江に、
恋の応援団長として父・竹造(中井)は、
なだめ、すかし、さとし、脅しとあらゆる手段を使い、
何とか美津江の心を開かせようとするのだが・・・・・。
「あんときの広島では死ぬんが自然で、
生きのこるんが不自然なことじゃったんじゃ。
そいじゃけぇ、うちが生きのこるんはおかしい。」
負い目に、苦しみながら息を殺すようにひっそりと暮らしている娘と、
娘の幸せを願う父親の熱い想いがこころに迫る。





以前から、いつか観たいと思いつつなかなか機会の無かった作品。
このたび、たまたま広島に行きたいと思った時期に
地元の劇団?によって上演されるというので行ってみることにしました。

会場の南区民文化センターに行くのは初めて。
その前にひろしま美術館にいたのですが、
地図で見ると結構距離ありそうだったけど、まっすぐ行けばいいようだったので
歩いて行くことにw
(バスとか苦手なので(^_^;
たぶん40分くらいで着けたと思うのですが、
なるべく日陰を歩くようにしたとはいえ、めちゃめちゃ暑かったです。
それでも無事たどり着きました。
会場に入ると自由席で前の方が空いていたので1列目ど真ん中に()
舞台には部屋の中のセットが組まれていました。

地方の小劇団?のお芝居を観るということがほぼ無くなってたので
実はちょっと侮ってました(^_^;
でも、美術もとてもしっかりしていたし
お芝居もとても良かったです。

たった2人しか出てこないのだけど、
しっかり入り込めました。
笑える部分もありましたが、
最後の方は涙を堪えるのが大変でした。
周りからは結構嗚咽っぽいのも聞こえてました。

私は特に
「私は生きていてはいけないんよ」
て感じの台詞で一気に泣きそうになりました(T_T)
観る前は、原爆症の恐れがあるから、
男の人と付き合うのも躊躇っているのかな
と思っていたらそれだではなくて
せっかく生き残れたのに、友達やお父さんは死んでしまって
自分が生きている、
そのことを負い目に感じなければいけないなんて
めちゃめちゃ悲しすぎると思いました。

お父さんは幽霊?だけど
それは美津江の妄想かもしれなくて
美津江の、心の奥に押し込めた
「本当は恋をしたいって気持ち」が
お父さんのカタチになって出てきたのかな
とも思いました。

今回、美津江役はダブルキャストで、
あの頃には様々なたくさんの美津江のような女性がいたのだろう
ということを思って、それぞれの美津江を演じて欲しい
みたいなことがあったようですが
本当に、こおいう人がたくさんいたんだろうなぁと思うと
とても悲しくなりました。
兵隊さんに行った人たちでもこおいう話はよく聞きますが
生きてることが不自然、だなんて絶対おかしいし
悲しすぎますよね。

戦争反対とか原爆憎いとかより
どうかみんなが幸せになれますように
と願ってしまいました。

台詞はもちろん広島弁なのですけど
それがとも優しく可愛らしくていいなと思いました。
今まで広島弁て、なんとなく怖いイメージで(^_^;
(
それは某映画の影響でしょうが/)
私は広島県民だけど、私の住んでる地域の言葉と広島の言葉では
イントネーションからして全然違っているので
こんなに可愛らしい言葉だったのか
と新鮮に思いました。

会場が何故こんなところで?とも思ったのですが
物語の舞台が、同じ比治山だったからなんですね。
8
6日に観に行ったのは本当にたまたまなのだけど
この日この場所でこの作品を観られて、
本当に良かったと思いました。

帰りも歩いて紙屋町まで戻ったのですが
いくつか河を渡りつつ
ここに、たくさんの人が浮かんでいたんだな
それもたった66年前のことなんだな
と思うと、いたたまれないような気持ちになりました。

実際に体験した訳では無いけれど
ずっと忘れずにいないといけないことだと思いました。

できればダブルキャストのもう一人の方のも観たかったです。
そしていつかこまつ座の公演も観てみたいなとあらためて思いました。