三谷幸喜 大感謝祭
パルコ・プロデュース公演
90ミニッツ』

作・演出/三谷幸喜
出演/西村雅彦 近藤芳正

2012228日(火)18:30開演
広島/広島アステールプラザ 大ホール

9歳の少年が、交通事故で病院に運ばれる。
今すぐ手術すれば命も助かるし後遺症の心配もない。
しかし少年の父親(近藤)は手術の承諾書にサインをしない。
手術には輸血が必要不可欠だが、父親はそれを断固拒否する。
何故なら、少年家族が住む地方では
他の生き物の血が自分の身体に入ることを嫌い
肉も一切口にせず、ましてや輸血など以ての外、という考えなのだ。

整形外科副部長(西村)は
「なんとか輸血なしで手術を」と懇願する父親を説得し、
承諾書にサインさせようとするが
父親たちは輪廻転生を信じており、他の生き物の血が入ると
もう二度と蘇ることができないと思い込んでいる。
それは息子も同じで、本人も輸血を望んでいないと言い切る父親。
母親たちは輸血なしで手術ができる病院を見つけたと言い
父親は息子をその病院に連れて行こうとする。
しかし医者はそれを止め、なんとかここで手術しようとする。

親たちは自分たちの信仰を貫くために
医者は患者の命を救うのが使命だから、
親のエゴと医者のエゴのぶつかり合いは平行線のまま
子供の命は刻一刻と危険になってゆく。

タイムリミットは90分。
世間体と良心の間で揺れ動く二人の男たち。
果たして少年の命は助かるのか。




三谷幸喜さん生誕50周年記念公演ラストの作品。
去年の12月からのロングラン公演もいよいよ終わり。
大千秋楽の1回前を広島で観てきました。
舞台上には1台の事務机と長椅子。
BGM
、効果音のようなものも殆ど無し。
莫大な台詞量とほぼ怒鳴っている状態の高いテンション。
2
人の俳優の演技だけで魅せる緊迫の90分でした。

天からは少年の命を表しているような一筋の水が落ちてきています。
最初これ砂時計の砂かと思ったんですが水だったみたいです。
なんだろ、血液を表していたのだろうか。

広島の会場は1200人くらい入る大きなところで
2
階席まで結構埋まってたみたいで
やっぱ三谷作品は人気あるんだなーと思いました。
でも、この作品はできれば小さな劇場で
もっともっと息苦しさを感じながら観たかったかも。

最初にスクリーンに映し出される言葉。
「この作品はある事件を元にしていますが
 いかなる考えも否定したりするものではありません」
そんな感じの文章。
どこかで聞いたことのあるような話。
三谷さんがこのような題材からお芝居を作るのは意外でした。

シリアスな内容ながらちょこちょこ笑いの要素もあり
周りは結構笑ってましたが
私はほとんど笑えませんでした。
なにせ子供の命が掛かっている問題なので。
12人の優しい日本人」の時も思ったけど
人の死が掛かっている問題で
くだらないことで言い合っているってシチュエーションが
なんか嫌でした。。

自分の子供が今目の前で死にそうになっているのに
つまらない風習にとらわれて先に進めない。
信仰ってそんなに大事なの?
そんなに言うならいつまでも病院にいないで
さっさと連れて帰ってしてしまえばいいのに、、、
とまで思ってもどかしい思いにイライラしてました(^_^;
だから途中そおいう展開になりそうになったとき
もっと早くそうすれば良かったのにって思いました。

最初は、後々裁判などになって
病院の不利になることはできないし
自分は間もなく教授になれそうだし
長年の夢だったマイホームも建てられそう。
そんな時に無茶は出来ない。
だから絶対にサイン無しでの手術はできないと言っていた医者。
それでも結局は医者の良心の方が勝って
医者が親の承諾無く勝手に手術をした、
という体で子供は助かるのだけど。
私はその後すぐに父親にはサインして欲しかった。
でも結局サインはされず、医者は承諾書を破り捨てる。
医者は間もなくの出世の道を絶たれ
たぶん家族の仲もうまくいかなくなるんじゃないかと思う。
そんなことより子供の命のが大事。
医者なら当然。
と思うかも知れないけど
ほんの一時間前までは知らない人で
この病院に担ぎ込まれなければ
父親がすぐにサインしていれば
こんなことにはならなかったのだから
やっぱり医者だけがリスクを背負うのは
不公平だなぁと思いました。
私は信仰というものを持たないので
それを守れなかったときの苦しさとか解らない。
どうしても父親側に共感することはできませんでした。
子供もしっかり信仰心を持ってるようだったから
他人の血液が自分の身体に流れていると知ったら
死にたくなるのかも知れないけど
その考えが正しいとは絶対に思えません。

生きるだけが幸せじゃ無い。
死は本当に不幸なことなのか。
それも解るけど
まだ9歳の子供が
助かる可能性があるのに見殺しにされるのは
やっぱり嫌だなぁと思います。

西村さん演じる医者は
しゃべり方や動き方もなんとなく三谷さんに似ていて
最後に子供を救うのも三谷さんの良心なのかな
とは思いました。

一旦手術は諦めて
水の流れが止まったとき
このまま暗転で終わり、て結末もあるかな
と思ったので
最後救われたのはホッとしたけど意外でもありました。

あの殆ど素舞台の上で
転換も暗転もなく
たった2人だけで90分保たせられるところは
さすがだなと思いました。
あのお2人のお芝居をガッツリ観られたのは
本当に良かったです。
でっかいデジタル時計とかでカウントダウンとかしてたら
もっと緊迫した感じになって良かったかもw
でもあの緊張感はハンパ無いですね。

西村さんは結構キャラを作ってきてる感じで
ちょっと違和感はあったのですが(^_^;
やっぱ上手いなと思いました。
カーテンコールのとき、最初は笑顔無かったけど
(疲れますもんね)
3
回目には笑ってくれて良かったです
あとやっぱり三谷作品にまた出られたことが嬉しかったです。

近藤さんはよく見るタイプの感じだったけど
動きも結構激しいし感情の起伏も激しいので
めちゃ汗だくで演技されててやっぱり凄かったです。

「笑いの大学」は生で観られなかったから
今回は劇場で観ることができて良かったです。

コメディを期待して観に来た人も多いだろうから
ビックリした人もいただろうけど
私は三谷さんのシリアス話嫌いじゃ無いので
(
振り返れば奴がいる大好き/)
こおいうのもっと作ってくれてもいいのにな、と思いますw
それかもっとドタバタの楽しいコメディをw