行き先は決まった。しかし、ロシア語は全く分からない。聞くところによるとソ連では英語が殆ど通じないという。出発まで1ヶ月しかない。そこで、先ずは海外旅行用の日常会話対応表のような本を買い「ありがとう」=「スパシーバ」、「これ、いくら?」=「スコーリカ、ストイト?」などとカタカナ・ロシア語を自己特訓しました。ヒヤリングの練習は当時かなり普及していたソノシート(ペラペラのフィルム状のレコード盤)の「ロシア語入門」を買い、会社から寮に帰ると毎日聞きました。しかし、何を言っているのかは全く分かりません。それでも聞き慣れないロシア語のイントネーションのイメージ掴むために繰り返し聞きました。それが、ソ連国内に入ってから役立つようになります。
兎に角、ロシア文字も読めないので、アルファベットから覚えました。「ソ連は怖い国、生きて帰れないかもしれない」と思われていた時代でした。従って、「もし、トイレの入り口を間違えて、女性用に入ったら牢獄に入れられるのではないか」などと真面目に考えていましたので、まず、男性、女性の文字を覚えました。
ご存じの通り、ロシア文字は英語とは全く異なり、慣れるまでは大変です。
英語と同じ形の文字はありますが、意味が違うものが多いのです。オリンピックの時にソ連の選手のユニホームにCCCPと書いてあるのをご記憶の方も多いと思います。これは、シーシーシーピーではありません。エスエスエスエルと読みます。そうです、英語のSSSRなのです。最初のCはCOЮЗ(ソユーズ=連合)英語ではUNION、次のC以降は英語と同じ意味のCOBИETCKИЙ(ソヴィエトスキー=SOVIET)ソーシャリスティ・リプブリークのそれぞれの頭文字です。Pはエルと読みRの意味です。
従って、英語のUSSRと同じです。
B(ヴェー)→VorW,H(エヌ)→N,C(エス)→S,У(ウー)→U,X(ハー)→H,P(エル)→Rとキリがありませんが、形が同じでもこのように意味も読みも異なるのです。
同じものは、
A,K⇒К,M⇒М,O,T位でしょうか。
その他に英語にない文字がかなりあります。
БДЁЖЗЙЛПФЦЧШЩЪЫЬЭЮ
特に面白いのが英語の文字をひっくり返した様な文字です。
Г,И,Я
また、英語2文字分を1文字で表すものもあります。
Ё=YO,Ю=YU,Я=YA,Ч=CH
私の名前、YUKIO FUKUSHIMA は
ЮКИО ФУКУСИМА となります。
このような、つたない勉強でも、
МОСКВА モスクヴァ (モスクワ)
АЭРО ФЛОТ アエロ・フロート(ソ連国営航空)
ПРАВДА プラウダ (共産党機関紙)
МЭТРО メトロ (地下鉄)
Я ЧАИКА ヤー チャイカ (私はカモメ)
等と読めるようになり、便利をしました。
次回は「結団式」です。