連載:私の初めての海外旅行・ソ連  My First Overseas Trip、 USSR

Ver.3.1 2003/09/01
第11回「モスクワでの観劇」

 生まれてこの方、観劇などしたことがなかった。しかし、日本では宝塚歌劇「幸福を売る男」を東京の東宝劇場で何度か見たことがあった位である。そこで突然世界的に有名なボリジョイ・バレー団の「白鳥の湖」を見る機会を得た。日本でボリジョイ・バレー団の白鳥の湖を見るとしたら、とてつもない料金を取られるのだが、我々のパックにはそれが入っていたので気楽にその機会を得た。

 それも、本場のソ連・モスクワで見れるのだから感激である。そこはレーニン大会宮殿と言って国家最高会議が開催される場所として日本でも知られている。その場所に自分が今居るのだ。共産党第一書記(当時の国家最高責任者)フルシチュフ氏が演説していたあの場所だ。それが、今回の「白鳥の湖」を観劇する場所なのだから驚きである。あれだけ音響技術の悪いソ連でもこの会場は最高に音響がいい。多分、ヨーロッパの高度な技術か導入されているのだろう、音響関係は申し分ない。

 我々日本人ツアラーは、このような劇場に行くことを予め説明されていたので、皆略式正装(スーツ)を着ていった。しかし、世界からこの「ロシア冬の旅」を目的に来られている観光客はもっと本格的な観劇のための服装で来ているのには驚いた。ロシアからの女性の靴はブーツが当り前であるが、この会場入り口前で女性はブーツからハイヒールに履きかえるのである。我々、ツアラーの女性は、ブーツのままである。

 劇場内に入ると日本人だけが、田舎から出てきたお登りさんのように一目で分かる。実にダサイ。はずかしい。でも、自分もその一員だと知ったとき、はずかしさを飛びこえて、「日本人のセンスのなさ、国際感覚のなさ」を悲しく思った。黄色の顔の異国人というだけでなく、なんだか日本人だけが、太古の昔から来た異星人のように思えた。

 ソ連に行ったことのない日本人が見たら、ロシア人はセンスレスの国民と思うかもしれない。しかし、現実は逆で「日本人の方が余程国際的感覚から遅れている」ことを思い知らされた。その後、オリンピックで女性のアイススケートや新体操を見ても、日本人の選手よりロシア人選手の方が余程センスがよいことをいやというほど見せつけられている。

 それともう一つ感心したことは、開演時間を過ぎたら一切客を入れてくれない。次の幕間まで外のロビーで待っているしかないのだ。日本のルーズな習慣に慣れた日本人観光客の中には、何人かそのような人がいた。だからその人達は、この「ロシア冬の旅」の一番のハイライトである「白鳥の湖」の全劇を通しで見ることが出来なかった。しかし、あれだけ徹底してルールを守らせるロシアのやり方に私は心の中で「拍手喝采」したものだった。

 白鳥の湖は始まった。私はそのストーリーをすべて知らなかったが、この本物の「白鳥の湖」を見ているうちに、本物を見ることの重要性を知った。全く予備知識のない私でさえ、このストーリーを知り、なんとも言えない感動を覚えたことである。これはかつて、東京で初めて見た時の「宝塚歌劇」を見た時の感動と似ている。

 幕間が何度かあるのだか、その休憩時間にロビーに出ると、いわゆる白人(ロシア人を含めて)は、それなりにサマになっているのだが、日本人の何とセンスのないことか。自分もその一員であることに改めて、恥ずかしさを感じた。

 ところで、ボリショイバレーの白鳥の湖は、それは本場ものであり、素晴らしいものであった。しかし、よく見ると、あの白鳥達は身体も大きく背も高く、足も丈夫そうで、何か男の人が踊っているように見える程「ごっつい」感じの女性達で構成されているのだ。それがバレーとして見ると、「やさしく、可憐な白鳥」に見えるのだから不思議である。

次は「Ленинград(レニングラード)にて」です。


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