連載:私の初めての海外旅行・ソ連  My First Overseas Trip、 USSR

Ver.3.1 2003/09/01
第14回「魔法使いのお婆さんの街・ТБИЛИСИ(トビリシ)」

 ここは古い文化を持つ都市で、今迄行ったソ連の都市とは、かなり趣を異にする。キエフからオンボロ双発プロペラ機で行ったのだが、振動でエンジンカバーがパカパカ動いている。一緒のツアー客の一人は何時墜落するか分からないようなこの飛行機の恐怖で、離陸から着陸まで肘掛けを強く握りブルブル震えていた。私は全てを信じる方なので何の恐怖も感じなかった。

 空から見るТБИЛИСИ(トビリシ)は昔の滅亡した都市のように静止して見えた。街全体が茶色の世界であり雪の白さとは対照的に街全体が沈んで見えた。
 空港からバスで街に出てもっと驚いたのは、人種が全く違うことであった。街に歩いている老女はまるで我々が子供の頃、漫画で見た「箒に乗った魔法使いのお婆さん」の様な顔をしているのである。その上、本当に箒を持ったお婆さんが道路脇にいたので「今、空から降りてきたのかしら?」と思ったくらい驚いた。「魔法使いのお婆さん」は漫画の世界だけと思っていた私にとって、大変なショックであると共に、童話の世界に入り込んだような錯覚から抜け出ることが出来なかった。
 そのお婆さんの特徴は皆様もご存じの通り、鷲のくちばしのような細く高く曲がった鼻、そして、極端にこけた頬、何キロも先を見ているような鋭い眼差し、これはどう見ても魔法使いのあのお婆さんなのだ。魔法使いのお婆さんが街にいっぱいいるのだから異様である。
 そしてもう一つ驚いたことは、ようやく聞き慣れたロシア語と違うことだ。後で分かったことだが、グルジア語とかいって、ロシア語とは全く異なる言語なのだ。文字もイランのような髭だけのような文字で全く読めない。公用語はロシア語だが、街の中の人たちはロシア語を使わないのだからびっくりである、折角覚えたロシア語も殆ど役に立たない。記念にグルジア語の本を数冊買った。

 いずれにせよ、全体の景色も、街も、人も、全く異なる世界であった。

次回は「ソ連の保養地、СОЧИ(ソチ)」です。


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