連載「一期一会」


 人生には色々な出会いがある。私が今迄に出会った数々の方々のうち今でも心に残り、楽しい人生の1ページとさせて頂いた方々を思い出しながら綴ってみたいと思う。

<第7話> ブラジル人との出会い やはり日本は異質か?

Ver.1.01 2002/03/28
Ver.2.01 2002/04/30

 今回(1999/02/19)、久々の大阪出張の新幹線でのブラジル人との出合について話してみたいと思う。
 列車は東京駅7:52発「のぞみ5号」博多行きである。あいにく2人席の窓側E席が取れず、3人席窓側のA席であった。東京を出発するとき通路側に60才位のサラリーマン風の紳士が座った。そして、新横浜ではほぼ満席になり、私の隣(3人席の真ん中)にジーパン姿の外国人男性が座った。多分外国人であると思うが最近の若い日本人は外国人のような顔立ちの人が多くなってきたので良く確認しないと「Excuse me. Where are you from?」と聞くわけには行かない。かといって、真横にいる彼の顔を見るのもためらわれる。

 私はJRラジオ(新幹線車内でサービスされているFM5Channel)でNHKラジオを聴いていた。でも、イヤホーンをつけていたら相手から私に話しかけるきっかけを作れないので外した。それでも、こちらから相手に話しかけるタイミングがなかなか取れない。

 そうこうしているうち、通路側の男性(A氏としよう)が英字新聞を読み始めた。これは手強い。下手な英語で話しかけたら恥ずかしい。益々話しかけるきっかけを失った。そのうち車掌が検札に来た。どういう訳かこの外国人(Bさん)は名古屋行きの「のぞみ」の切符を持ってないらしい。車掌は英語を全く話せない。私が手助けしようとしたら、A氏が割合流暢な英語で用件を聞き、車掌に通訳した。一応これで用件は済んだ。

 しかし、私にとって益々話しかける機会を失った。A氏は英語が上手なので私は益々いじけてしまう。

(2)チャンス到来
 A氏は何故か早朝というのにビールとつまみを車内販売で買って飲み始めた。しかし、その後、この人はBさんと一度も話をしない。Bさんは富士山が見えないかしきりに気にしている。そのうちA氏がビールを飲み終えトイレに立った。

 チャンス到来。即座に私は話しかけた。定番の「Excuse me. Where are you from?」である。彼はブラジルから50日の休暇旅行中で、USA、アジアそして最後に日本を旅して今週中に帰国とのこと。

 話をしているうち、「のぞみ5号」は富士市にさしかかった。「今日は曇っているので富士山は見えない」と教えようとしていたら偶然富士山の8合目以下が見えたのだ。頂上付近には大きな雲がかかり見えないが、富士山の大半は見ることが出来た。彼も喜んでくれた。

(3)彼からどんどん話しかけてくる
 そのうち、彼の方からいろいろ話しかけてくる。彼曰く、「東京の人(日本人)の殆どが英語を話せないので旅行者の私は大変です。でも、今日あなたが話しかけてくれたのでうれしい。」とのこと。彼は30才代で、身長180cm位の好青年である。出来たら名刺を渡せないかと思っているうち、「会社はどこで働いているのか?」と聞いてきた。チャンス。即、「NECですが分かりますか?」と言うと「良く知っている。ブラジルにもある。」とのこと。

 そう、NEC do Brazil S.A.(ネック・ド・ブラジル)である。そうして、名刺を出すと彼もすぐに用意をして、名刺交換をした。

(4)ブラジルの話
 ブラジルには日本の電気会社(NEC、東芝、日立、松下、SONY、etc.)二輪車のHONDA、四輪車のTOYOTA、NISSANなどがあるという。そして、彼のお父さんはHONDAのオートバイに乗っているとうれしそうに話す。そこでも、私との共通の話題が出来た。そう、私の趣味でもある「二輪車ツーリング」である。早速BMW R1100-RSにまたがった私のテレカを見せた。スーツ姿とは違う私の「勇姿?」に大変驚き興味を示した。

 ブラジルの話に戻るが、人口の20%位が日系なので日本に対する関心は高い。でも、日本の文化については殆ど知られていないとのこと。そして、「あなたはブラジルに行ったことがありますか?」と聞かれ、「ない。しかし、私の娘が一度行ったことがある。」等と話し、彼は「是非、ブラジルに来て下さい。」とお互に近親感を持つことが出来た。

 又、ブラジルの印象を聞かれたが、「ブラジルは大昔日本人が大量に移民して以来、日本人はブラジルに対する関心も高く、かなり良く知っている。また、人柄などは日本人に似ている様に思う。多くの日本人はブラジルに近親感を抱いていると思う。」と、下手な英語でどうにか応えた。

(5)日本の話
 ところで、彼が日本に来たときの日本の印象は、特に「香港」と比較して、「日本は街も綺麗で治安も良い」、人柄は「皆、ナーバスで勤勉、よく働く」との印象。又、「道路などもよく整備されていて素晴らしい。今乗っている新幹線「500系のぞみ」もフランスのTGVより優れている。」とのことだった。

 しかし、日本は欧米と比べてあらゆる点で異なっている。
 まず、人々の考え方、ブラジルや他の国の人々はアメリカと殆ど同じ感覚だが、日本の人々は全く違う。言うこと、考えること、行うことあらゆる面で欧米と違う。時差も13時間もあり、物理的にも遠い国だ。言葉も英語が殆ど通じないのも閉口する。他の国々とは全く異質な感じがするとのことだった。

(6)やはり日本は異質か?
 確かに、日本は文字、言葉、宗教、その他あらゆる面で欧米と異なる。アジアの中でも日本は異質な国のようだ。私自身も日本にいてそのような面を感じてはいたが、改めて、地球の裏側から来たばかりの人の意見は説得力があり、「納得」である。

 私が30年前にソ連に行ったとき、同様にソ連は「全てが逆さまの国」だと思ったが、今日の話のニュアンスでは、それ以上に異質というか「逆さま」なように映るらしい。

(7)目的は「500系のぞみ号」の体験乗車
 ところで、彼は名古屋のどこへ行くのだろう。大きな荷物は持ってなく、軽装である。

名古屋のどこへ行くのかを問うと、「日帰り」だと言う。実は、今日、「日本で最高速、しかも、最新型の「500系のぞみ号」に乗るのが目的でそのまま東京に戻るのだという。

それで「新横浜」乗車、「名古屋」下車なのか。
 名古屋駅が近づくと、私にお礼を言って、握手をして、早めに席を立った。しかし、気の早い乗客が出口付近に10人ほど待ち行列を作っており前に進めない。
 列車が停車後、私はホームの階段付近を注意深く見ていたが、彼の姿は見えない。

 もしかして、先頭車の写真でも撮りに行ったのではないかと、自分の好奇心を基に推測した。列車が走り出し、注意深くプラットホームの先頭付近を見ていたら、彼が丁度、先頭車の撮影を終えて、カメラをしまおうとしているところだった。

やはり、私の推測は的中した。
 Have a nice trip. 私は心の中で彼に言った。

【その後】
(1)私からのEメール
I am Yukio Fukushima :1999/02/24 12:53:58 (Tokyo Time)
Dear Fxxxx
Hello! How are you? I'm fine.
I met you on "Series 500 Nozomi" super express on Feb.19.
Thank you so much for meeting you and having good time.
You took some photos of "Series 500 Nozomi" super express.
Did you take some photos the Nozomi's first car?
I saw you on the platform of Nagoya station.
       Sincerely Yours,
          Yukio Fukushima
(2)彼からのEメール
Yukio,
I really took good picture all the ways !
Actually, I took 10 rolls of films just in Tokyo. It's a wonderful city.
I enjoyed talking to you, because I got to learn more about your country
and culture.
If you any time come to Brazil, please don't hesitate to contact me.

Best Regards,
Fxxxx Cxxxxxxxx

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以上
(彼の名前は匿名にしてあります)

 新幹線の中でも思いがけない「ふれあい」があり、また新しい友人が出来た。
 今でも彼の人生の節目(結婚、子供の誕生など)には写真入のカードが届く、昨年は家族全員の幸せそうな写真が届いた。

 次回は「ハンガリー人との出会い」です。

 お楽しみに。

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