「河口湖飛行機館・見学記」

< 河口湖飛行機館 (河口湖自動車博物館隣接) >


Ver.1.01 2002/08/18
Ver.4.01 2002/08/24
零戦の前での筆者
 2002年8月14日(水)、河口湖飛行機館を見学する機会を得た。

 2000年8月12日〜14日amに合気道の合宿が山梨県西湖(河口湖の西隣)で行われ、その後に1泊追加して河口湖周辺を散策しゆっくり過ごすこととなった。

 特別の計画が無かったが到着した日のレストランに「零戦21型機・公開展示」のポスターを見たので、ここを見学することにした。
 場所は以前2回程行ったことのある「河口湖自動車博物館」に隣接した「河口湖飛行機館」である。

(1)零戦(ゼロセン)
 仮設の建物の中の中央正面にあの「零戦21型機」が展示されていた。いつ見ても零戦はスマートで格好いい。通常「零戦」というと緑色の機体に真っ赤な日の丸というのが一般的な印象だがここに展示されている零戦は灰色だった。入場時にくれた絵葉書では「緑色の機体に真っ赤な日の丸」の零戦が中央に写っている。
 帰りに係員に聞いてみると「昨年まで展示されていたが、今は靖国神社に隣接する博物館に展示されている」とのことだった。
その機は「零戦」最後の改良機(最新型機)なのだそうで、今ここに展示されている零戦は初期のモデルらしい。
零戦・後方から全体 零戦・前部より全体 零戦・前部 零戦以外も宙吊り展示

(2)エンジン
 「零戦」周囲の壁側にはいくつもの航空機用エンジンが展示されており、関心ない人から見れば単なる鉄の塊のようで、何処から拾ってきた鉄くずかと思うに違いない。

  @空冷星型エンジン
 戦闘機や爆撃機に使われている殆どのエンジンは空冷「星型」エンジンといって、エンジン軸を中心にオートバイのエンジンのように沢山の冷却フィンを付けた複数のエンジンシリンダーが星状に配列されているのでそう呼ばれている。エンジン軸の周囲に複数のシリンダ(9個)、軸方向に2列(9x2=18気筒)並んでいるものも多い。
 以下の写真をご覧頂ければ「一目瞭然」のはずだ。
陸上爆撃機「銀河」使用
18気筒35.8Litters
復元された星型エンジン B29のエンジン2200馬力
18気筒ロールスロイス改

 どれも、工学的な美しさがあるが、やはりあのB29のエンジンは洗練されている。白い鍋のようなものはターボチャージャー(加給機)で実際には周囲にぐるりと9個ついている。このエンジンはロールスロイス改良型といわれ、当時最高の性能を誇った。
 当時のプロペラ機は精々6000m位の高空迄しか飛べないのに、ターボチャージャーをつけたB29は1万mまで飛ぶことができた。日本本土爆撃時は日本の戦闘機はB29の高空に届かずなす術もなかった。この技術力の差でも既に日本は負けていた。
 と言われていたが、中には1万mに届く飛行機もあった。それは、陸軍の「飛燕」や「紫電改」で1200馬力以上、最高飛行高度10,000mと言うものだ。

  A星型エンジンの構造
 星型エンジンの構造には大変興味があった。数年前、岐阜県各務ヶ原の航空博物館に行ったときその仕組みが分かった。今日は分解した実物を見ることが出来て感激した。
 自動車のエンジンのように考えるとどうしても理解できない。なぜなら、エンジン軸の周囲に複数のシリンダが並んでいるのだから不思議だ。現物を見ればこれも「一目瞭然」なのだ。複数のピストンを押すアーム(腕)が一箇所に集められ、これがエンジン軸の周りを蒸気機関車の腕のように廻るのだ。だから、この部分だけ見るとローターリーエンジンに似ている。ロータリーエンジンも「この技術の応用」との説もあるくらいだ。
 兎に角ご覧ください。
星型に配置されたピストンアーム
軸の周囲をロータリ式に廻る
大穴部分にシリンダーが付く 大穴から出ているピストンアーム

(3)水冷エンジン(専門的には液冷エンジン)
 プロペラ飛行機は前述のように空冷星型エンジンが圧倒的に多いが、中には液冷エンジンもある。自動車と同じ構造のもので一般的にいう水冷エンジンのことだ。
 このエンジンは殆ど今の自動車のV型エンジンと同じだ。飛行機のエンジンは高所にあるので下から整備し易いようにV型が逆立ちしており「倒立V型エンジン」という。形が長細く空気抵抗を少なく出来るので高速性能を必要とする戦闘機や艦上爆撃機に向いている。この形状からスピードアップできるがデメリットとして重量が重くなることだ。
 旧日本軍の飛行機では戦闘機「飛燕」」や艦上爆撃機「彗星」が良く知られている。
 零戦などのと比べるとプロペラのすぐ後のエンジン部分が細く大変スマートなので良くご覧ください。
愛知航空機 熱田V12気筒
33.9Litters1400馬力
液冷倒立/艦上爆撃機彗星用
アツタ21型 21165号機
ありし日の艦上爆撃機「彗星」の勇姿
エンジン部分が細くスマートな艦上爆撃機「彗星」
機関砲が胴体にあり、プロペラの回転に同期し
プロペラの間から弾丸を発射する。
BUGATTI US MODEL 16気筒液冷
DUESENBERG MOTORS CORP.
ELIZABETH N.J.USA

 【「彗星」について】
 日本海軍の航空技術研究機関である空技廠が設計し、愛知飛行機で量産された艦上爆撃機。性能はよかったが、ライセンス生産して装備したドイツの液冷エンジンの信頼性が乏しく、のちに空冷エンジンがつけられた。(出典:2002年版JAS航空機カレンダー)

(4)プロペラの形状と形式
 プロペラは竹とんぼのような二枚形式の簡単なものから3枚4枚のものまである。それだけでなく、プロペラのピッチを変える事の出来る「可変ピッチ」方式のものもあり、零戦は当時としては最新技術の可変式であった。可変式のものは付け根が太い弾丸のような形状をしているのですぐ分かる。飛行機のスピードによってピッチを変える(プロペラの付け根が廻る)ことで、より高速で飛ぶことが出来機構なのだ。
 その後の戦闘機は皆この機構を備えている。
航空自衛隊練習機
固定ピッチ型
米軍機
固定ピッチ型
零戦の3枚プロペラ
可変ピッチ型

 この技術は、今のターボプロップ型のプロペラ機(日本のYS−11等)にも応用され旅客機ではエンジンブレーキ(逆噴射同等)として活用されている。即ち、エンジンの回転方向は変えられないので、プロペラのピッチを逆にすることで風向きを逆にし逆噴射状にすることが出来るのだ。戦後の米空軍のC130ギャラクシーなどはこの逆噴射力で飛行機を自力で後退することが出来る。(通常の飛行機は自力では後退できない)

(5)JETエンジン
 この展示場は第二次世界大戦(太平洋戦争)当時のものが中心なので、ほとんどがレシプロ型のエンジンが中心であるが、戦後、朝鮮戦争で活躍したF86−FセイバーJET戦闘機のエンジンも展示されていた。当時はソ連製のMIG16戦闘機を多数撃墜した名機で知られていた。
 今見るとかなり手作り風で初歩的な技術であることが分かる。
F86-F用JETエンジン F86-F自衛隊機ブルーインパルス用

T-33 JET練習機(シューティング・スター)複座 航空館駐車場と双発機

 この展示場は、まだ展示物の説明も十分ではなかったが、私にとっては大変興味ある、また、勉強になる見学であった。
 入場料:大人1000円。


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