「車のタイヤの溝はなぜあるの?」
車のタイヤの溝はなぜあるのでしょうか?
「滑りにくくするため」とお考えでしょう。その通りです。
しかし、なぜ滑りにくいのでしょうか?接地面積が大きい方が滑りにくいはずですよね。だから、溝が無い方が接地面積を大きく採れますから、溝がない方が滑りにくいはずです。
矛盾しませんか?
そう、乾燥した路面ならば溝がない方が接地面積が大きいので滑りにくいのです。だから、レース用の車のタイヤは通常は溝がありません。
それでは何故溝があるのでしょうか?
それは雨天の時に路面の水を掃き分けるためにあるのです。
冠水した路面を車が高速で走ると、ハイドロプレーン現象を起こして水の表面を滑ってしまいハンドルではコントロールできなくなります。そのような現象が起きないように、この溝で水を誘導し後方にはじき飛ばすことにより、前方の水を掃き分ける役割をします
溝が縦方向と横方向にあるのは何故?
縦方向の溝は進行方向に対して効果があります。車がカーブする時は横方向に滑る可能性があるので横方向の溝で水をはじきます。だから、飛行機は離着陸時の高速走行では直進しかしない(高速で曲がることはない)ので、飛行機のタイヤは縦の溝しかありません
これ、本当です。
レース用の車のタイヤは溝がないの?
いや、溝のあるものもあります。それは、雨天用です。晴天用は溝が全くありません。レース中に雨になったら即交換します。
レース用の車はご存じの通り必要に応じて頻繁にタイヤを交換します。数秒で交換できる構造になっています。
しかし、我々の車は全天候型で、晴、曇、雨でも同じタイヤを使っています。その都度交換はしません。従って、最悪の雨の状況でも安全なように作られています。晴天の時は多少無駄かも知れない溝、しかし、無交換で安全に走れるのですからありがたいことです。
こちらから質問「タイヤの溝(パターン)は同一間隔」と思っていませんか?
皆様の乗用車のタイヤは、実はパターンの形は同じ様ですが、溝の間隔は狭い所、広い所が色々混ざっています。写真をご覧下さい。
これは何のためでしょう。皆様が最も知らなかったことではないでしょうか?
タイヤの溝は | 間隔がまちまち | タイヤのサイズ表示 |
同一間隔では何故悪い?
同じ間隔では、ある速度の時、音が共振(共鳴)して、タイヤが唸り(騒音を出す)ます。
そこで、タイヤメーカーは色々パターンを工夫して、溝の間隔を広くしたり、狭くしたりして、どの速度でも共鳴しないように設計しています。
それでも、中にはピーと高周波数の音を出したり、ブーンと低音で唸るタイヤもあります。
勿論、騒音以外の最も重要な滑り防止に重点を置いて設計をすることは言うまでもありません。
タイヤにはどんな工夫が?
まず、(1)水はけ (2)低騒音 (3)グリップ力(路面に貼り付く力)が工夫されています。
グリップ力を強くするには、タイヤ幅を広くし、タイヤを扁平にすればよいのですが、タイヤ幅を広くすると接地抵抗が増大し、自動車の燃費が悪くなります。
タイヤを扁平にすると高速安定性は向上しますが、衝撃吸収力が減少しガタガタします。
また、タイヤのゴムを軟らかくすればグリップ力が増大しますが、磨耗が早く寿命が短くなります。
この3項目とも「二律背反」の性格があるので、日常使用か高速使用(仕様)か或いはタクシー仕様のように耐久性を重視するかにより、この3項目を使い分けます。
このため、タイヤはタイヤ幅、扁平率、リム径、タイヤ構造記号、ロードインデックス、速度記号等の表示がしてあります。
(写真参照)
205/60 R15 94H
1 2 34 5 6
1 タイヤ幅 205 cm
2 扁平率 60 % (タイヤ高/タイヤ幅X100)
3 タイヤ構造記号 R (ラジアルタイヤ)
4 リム径 15 インチ
5 ロードインデックス 94 (荷 重:670kg)
6 速度記号 H (最高速度:210km/h)
・ ロードインデックスについて
ロードインデックスとは既定の条件下で、そのタイヤに負荷することが許される最大の重量を表す指数です。
ロードインデックスは60(250kg)から119(1360kg)まで1刻み60段階で表示されています。
尚、ロードインデックスは表示されてないタイヤもあります。
(表示例) 185/70 H R 13
1 2 6 3 4
・ スピードレイティング(速度記号)について
「H」が記されているのは、最高速度:210km/hを保証、「Z」が記されているのは240km/h超保証のタイヤです。
速度記号 最高速度km/h
L 120
Q 160
S 180
H 210
V 240
Z 240超
(注)速度記号は、規定の条件下でそのタイヤが走行できる速度(最高速度=能力)を示す数値です。
◎ タイヤ表示例、色々(乗用車は例1又は例2が一般的です)
・例1 195/60 R14 86H
・例2 185/70 HR13
・例3 165・95 R13 98/96 L LT
・例4 31X10.50 R15 6PR
・例5 215 S R 15
・例6 215 R 15 6PR LT
(参照)L :速度記号 (L=120km/h)
LT:タイヤ用途記号 6PR:タイヤ強度記号
スチールラジアルとは何のこと、何のため?
スチールラジアルとはタイヤの底の部分にスチールの帯が入っているもので、高速走行用です。
タイヤは接地している部分はへこんでいますが、走行すると、今へこんでいる部分は元に戻らねばなりません。しかし、高速で走ると元に戻る速度が遅くて波打った形になります。そのまま高速走行続けるとといわゆる円形をしてない状態ですから、突然バースト(パンクしてバラバラに飛び散る現象)してしまいます。
それを防ぐために、スチールの帯を入れておくと、その反発力で元の形にすぐに戻れるのでバーストを防ぎ高速走行が出来るのです。
まだまだ、色々な工夫がしてあるのですが、きりがないのでこのくらいにしておきます。
タイヤメーカーが色々工夫をし、新製品を次々と出し、それでも売れるのはそうした技術革新があるからです。
[余録]
1)タイヤ幅と燃費について
昔、日本の車は燃費が世界一。ドイツの車は燃費が悪い等と言った時代がありました。
それは、日本マーケットでは燃費を重視していたためタイヤ幅を狭くしたもの(165cm位)が標準でした。今でもタクシーはそのくらいです。
一方、ドイツではアウトバーンのように高速道路を安全走行することを基準に作っていましたからタイヤ幅205cm以上が標準でした。
だから、日本車の方が同一重量の車でも燃費がよいのは当然です。単純な接地面比でも19.5%((205ー165)/205)も違います。
勿論、車体の重量など色々な要素がありますが、いずれにしても日本車は燃費に、ドイツ車は安全性に重点を置いた結果です。
最近の日本車も安全性に重点を置くようになり、タイヤも幅広タイプが多くなりました。特に若者をユーザー対象としたHONDA車は幅広タイヤを多く採用し、カッコ良さと高速安定性を強調しています。
タクシーは燃費を良くするため、クラウン、セドリックの様な中型タクシーでも165cmの狭いタイヤにタクシーラジアルと云われる堅いゴムで作られ磨耗の少ないタイヤをつけています。10万kmも走れるそうです。因みに、私達の使う通常のタイヤは「3万km走行で交換」が目安です。高速、グリップ性能の良いタイヤはそれ以下です。
2)飛行機のタイヤ
このタイヤの話で、「飛行機のタイヤには縦の溝しかない」という話をしましたが、平成10年4月15日、出張で高松から福岡に移動の際、高松空港の展望台で偶然、飛行機の使用済みのタイヤを展示してありましたのでここにご紹介します。
如何です? 飛行機のタイヤには縦溝しかないでしょう!
Boaing747のタイヤ | Boaing767のタイヤ | YS−11のタイヤ |
(ジャンボジェット機) |
[飛行機のタイヤの違い]
装着本数
機 種 直径 幅 重量 機首 胴体 客席数
B−747 125cm 43cm 185kg 2本 16本 528席
B−767 114cm 43cm 165kg 2本 4本 234席
YS−11 95cm 32cm 60kg 2本 4本 64席
ではまた、お会いしましょう。