A.実は「スルメ」なのですが、「スル」とは即ち「擦り切る」(金を使い果たす)という意味で、商売人(商人)は最も嫌う言葉なのです。
そこで、「スル」の反対は「当たり」即ち「アタリ」なので、飲み屋さんなどでは「スルメ」は「「アタリメ」」と言うようになりました。
このような言葉は他にもあります。例えば、床屋さんに行くと「眉の下はアタリますか?」と聞かれます。これも同じです。
本来なら、「眉の下は剃りますか?」と言うべき処、「剃る」は「ソル」または「スル」といいますので、スルメと同様に「スル」は縁起が悪いので、その反対「当たる」に言い換えて「眉の下はアタリますか?」というのです。
同様なものには
擂り鉢(スリバチ) ⇒ あたり鉢
梨の実(ナシノミ) ⇒ アリの実
葦/芦(アシ=悪し) ⇒ 葦(ヨシ=良し)
等があります。
外国語でも以下のような面白いものがあります。
デパートなどの「マネキン」です。
あれはフランス語で「マヌカン」です。「夜霧のハウスマヌカン」という歌もありましたね。マネキンはご存知、流行の衣服を着てお客の購買意欲を引き出すもの。「マヌカン=(客を)招かん」では「客引き」の役をしません。そこで、客をマネキ入れる人形と言うことで「メネキン」としたそうです。
マヌカン=(客を)招かん ⇒ (客を)招きん=マネキン
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このほかに隠語のようなものでは、新聞記者がよく言う「ネタ」という言葉がありますが、これも情報の種(タネ)、これを逆に言うと「ネタ」となります。これは、記者の間の隠語だったのですが、一般的になり皆様も使うことがあるでしょう。
寿司屋さんでも、食材をネタと言いますよね。これも、寿司の「種」という意味なのです
これを「倒語」といって、日本書紀にも書かれているそうです。
同様なものには
ダフヤ ⇒ フダヤ(札屋)不正野外券売屋
グラ(ス)サン ⇒ サングラス
シス ⇒ スシ(寿司)
等があります。
ちょっと感じは違いますが「素人」(しろうと)のことを、トウシロウというのがあります。これは「シロウト」を逆に読んで「トウシロウ」(透視郎)と言うのです。
透視郎=「透けて見えるような技量の浅い野郎」何か言い当てているようで面白いですね。
実は、これは私のジョークで本当は隠語で「藤四郎」と書きます。
「藤四郎」と書いたら本物の「藤四郎」さんに失礼と思いませんか。
何故なら、「藤四郎」とは大変立派な人だったのです。
@ 鎌倉時代、尾張瀬戸の陶工。瀬戸焼の開祖。本名は加藤四郎左衛門景正。剃髪して春慶。1223年(貞応)道元に従って入宋。6年間陶器を研究し帰朝後、和泉陶器村、次いで近江信楽、後に尾張瀬戸に窯を開いたと伝える。生没年不詳。12代続く。
A 茶人の名。2代藤四郎作の真中古(まちゅうこ)と称されるものを指し、これに対して初代四郎左衛門作は藤四郎唐物または藤四郎春慶と呼ぶ。
B 山城の刀工、栗田口吉光の通作。
C 「慶安太平記」に出て来る弓師の名。栗林藤四郎。由井正雪を密告したという。
D (「しろうと(素人)」を逆さ読みして擬人名化した隠語)しろうと。とうしろ。
E (京阪方言で)盗心ある者。