私の雑学 No.9
 「ジェット旅客機はどんな推進力で飛ぶか?」

Q.現在のジェット旅客機はどんな推進力で飛行しているのでしょうか?

A.それは、あの飛行機についた「ジェットエンジンの後方に噴出する排気ガスの力で飛ぶ」とお答えでしょう。でも、現在の飛行機としては、正しくありません。
  もちろんガスを噴出する力もその一部ですが、それは30%以下なのです。

Q.それでは、何で力が出るの?

A.一世代前のジェット旅客機は、100%噴出ガスの力で飛んでいました。
  今の飛行機はエンジンの前についた、あの大きな風車(タービン)の力が後方に空気を送る力で飛ぶのです。

Q.ジェット機なのになぜ?

A.現在の飛行機(ジャンボ機やエアバス機)では大きな推力を出す必要性と出来るだけ音を小さくするために現在のあの太めのエンジンが開発されました。
  構造はあくまでジェットエンジンなのですが、前についているファン(風車)をジェットエンジンの軸からの回転力をギアで低速変換して回しています。

  従って、カバーのついた沢山のプロペラがついているのと同じなのです。
  現在の高性能エンジンではバイパス比70%以上で、いわゆるファン(沢山のプロペラ)の力で70%以上の推力が出るのです。ですから、ジェット機というより大型複数プロペラ機に近いのです。大型のファン(風車)が付いているのでファン・ジェットといいます。(注−1)

Q.それではターボプロップジェットとどう違うの?

A.よくご存知ですね。ターボプロップジェットとは、あのYS−11に使われているエンジンです。因みに、このエンジンは英国製のロールスロイス製です。

  皆様は、YS−11をプロペラ機と思うのでしょうが違います。
  確かにプロペラがついていますが、あれはジェットエンジンの力でプロペラをまわしています。そこで、ターボプロップジェットといいます。

  ですから、昔からあるプロペラ機(ゼロ戦、B29、今のセスナ等)とは全く異なります。あのようなエンジンはレシプロ式といって、ピストンがいくつもついたオートバイや自動車のエンジンと構造が同じなのです。

  そこで、ファンジェットとターボプロップジェットは両方共プロペラの力が主であることは同じですが、ターボプロップジェットはプロペラを回すためにジェットエンジンを使っているのと比べ、ファンジェットはあくまでエンジンの胴の部分を通過した空気噴出力によって推力を作っています。ファンを通過した空気の流れがジェットエンジンの噴出口を囲ってしまうので、爆音の発散が少なく、大型エンジンの割りには音が静かなのです。
  従って、某航空会社の宣伝文句では「ささやくエンジン」などと言っています。
  従って、プロペラがむき出しか否かの差こそあれ、ジェットエンジンの力で前の空気を後方へ送り出す力で推力を得る点では殆ど同じなのです。

Q.他にどんなエンジンがあるの?

A.このファンジェットをもっと発展させて、エンジンの後方に船のスクリューを何重にもしたような形のエンジンを開発し、テスト中です。このエンジンはファンジェットと同じですが、ファンジェットのようなファンを隠すカバー(ダクト)がないので Unducted エンジンといいます。現在のファンジェットのようなダクトのついたものを Ducted エンジンといいます。このエンジンは従来のものより高速でしかも省エネで飛行ができるのです。

  この飛行機はジェット機なのでしょうか? それともプロペラ機? それともスクリュー機?

  話は長くなりましたが、現在のジャンボ機やエアバス機は殆どがファンの力で飛んでいるのです。
  名前の通りやはり、ファン・ジェット機と言うべきでしょうか?

(注−1)平成9年9月29日のNHK・TVでたまたま放送していた情報
  JALの最新型ジャンボ機 Boaing 747-400 のエンジンは推力の80%がファンブレード(プロペラのような羽根)によるものだそうです。

また、お会いしましょう。


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