ハチ的コミケット74従軍記
恐怖!雨のビッグサイトに
謎の人喰いペリカンを見た!?

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8月16日

 八兵衛さんは焦っていた。朝からずっと。

 コミケの宿は、いつも誰かと相部屋で、前夜は何だかんだで殆ど寝れないんだが、幸いなことにシングル部屋を取れた。邪魔が居ないからには、宿で少しでもゆっくりしようと、行きの飛行機は早めの便を取った。

 それはいいんだが、後日よくよく考えてみれば、いつもやってる所の、一度仕事から帰って風呂入って云々をやってたら、本当にギリギリの時間。終業時間によっては間に合わないなんて事も。

 仕事をマッハで片付け、風呂は諦めて制汗シートで拭くだけにしておいて、あとは移動手段を、不確定要素の高いバスではなく地下鉄中心にする事で、何とか間に合わせた――はいいんだが、その苦労は結果的には無駄で終わることになるんだわな。

 まず、行きの飛行機。最近、局地的な大雨が降るようになったんだが、今日もその大雨が日本各地を襲い、その影響で飛行機が遅れてねぇ。そして、やっと宿に着いたと思ったら、Kとヨースルさんに呼び出しを食らって、旅の荷を解く間も無く外出する羽目になり、結局は3時間程度しか寝れなかった。

 そのお宿は品川プリンスのイーストタワー(昔は本館だったとこ)のシングル。って言っても、この館はシングル室のみというユニークな造り。Wikiによると、修学旅行などでの宿泊を想定して、こんな風になったらしい。

 そういうコトなので、ここには、今週末巨人戦を戦っている広島カープが宿を取っていた。

通りがかった人々は皆、モノ珍しげに見ていた


 宿の部屋を見てみよう。Uボートの船室を思わせる、ちょっと手狭な感じだが、一人ではこれが逆に、丁度いいあんばいになってる。この部屋の一番の目玉ってのが、テレビが地デジになっててねぇ。NHK見てても、右上に「アナログ」が出ないんよ。当たり前だけど。それに画像が恐ろしくクリアで、驚いた。それにリモコン一つで番組表が出るのは凄い。

 こんなのを見せ付けられちゃあ、地デジの用意をしないといけない……と思いきや、ハチのアパートはケーブルTVが未だ対応してなくて、大枚はたいて地デジ対応のDVDレコーダーを買った妹が嘆いていたりするんだよね。家で地デジを見るのは、もうちょっと先になりそう。

 そんなことを考えながら、束の間――の休――そ――


8月17日

 0430時。目を覚ますや、急いで準備をする。

 会場への移動は、例年は名鉄コミケツアーの送迎バスに乗ってたんだが、今回はそれが使えない。Kには、タクシーを使えと強く奨められたが、それは拒否しておいた。カタログにも出来るだけ控えろって書いてあったし。

 電車を使うとなると、帰り道恒例となりつつある、大江戸線肉地獄程度のラッシュは、覚悟しておかないといけない。

 そんなワケで、最近使い始めた、大型バッグ兼キャリーバッグの使用は諦めた。代わりに、通勤用に使ってるリュックと、肩さげのちょっとしたバッグに、POPを入れておくA3の書類入れの、数は多くなるが小回りが効く装備でまとめた。

 0600時頃、全ての準備を終え、部屋を出――やっぱり、勿体無い。こんな良い部屋を7時間弱で出るのは、かなり惜しい。が、これから戦いが待っている。後ろ髪引かれる想いを振り切り、部屋を後にしたハチ。

 品川から山手線に乗り、大崎経由で、りんかい線に乗り換え。意外や意外!流石に座れなかったが、大して混まず、あっさりと国際展示場駅へ到着。これなら、キャリーバッグで良かったかも。

 今回は在庫本など、メインの荷物は、事前に送っているので、早速、宅配便のスペースへ。ああ、この時に備えて、ちゃんとミニキャスター台を準備しておいたさ。これで荷物もスムーズに……といきたい所だったが、これが意外と難しくてねぇ。室内での使用を前提にした造りか、車輪がとても小さくて、ちょっとした段差――僅かなコンクリートの繋ぎ目ですら――でも越えるのは難しい。

 それに、高さ30〜40センチそこそこの箱を、ゴロゴロゴロ…と押して進む姿勢って、ダイレクトで腰にクるんだわ。これなら、よっこらせっ…と担いで行った方が楽だった。

 机に着くや、早速、散し野山(変換ミスだが、意味は合ってるのでこのままにしておく)を折る作業が待っている。…はいいんだが、椅子の上にチラシが山積みされてるんで、これがまたタチが悪い。つまり、座って折る作業が出来ないんよ。最初は立ったままで折っていき、ある程度片付いてから、ようやく座れるようになれる。(中には、床に全部ブチまけて、それから折る強者もいた。もちろん、早い時間で人が少ない時な)

 そうえいば、去年は散々辟易した、忌々しき団扇の山は、今年は2本のみと、意外に激減していた。最近のエコロジーへの関心により、プラスチック原料を多く使うこの手の代物は、敬遠されるようになったのかもしれない。

 今回の新刊は、日韓アニメ研究会の新刊と、ネタがリンクしてる。んで、互いのスペースが、東と西で分かれてる。あっちの方が有名なんで便乗して売れるだろうからわざわざ東と西で往来してもらうのも大変だろうから、少数をあちらに置いて貰う事にした。

 東館から西館へ行くには、エスカレーターを上ったり降りたり……おお、そうだそうだ。そういえば、先のエレベーター事故からだろうな、エレベーター前にやたら厳戒態勢を敷いていてねぇ。スタッフの「一人分開けろ」「絶対に歩かない」怒声交じりの注意を、耳にクラーケンが出来る程聞いた。余りにも耳にするものだから、この夏、テレビで散々流れて、脳内に刷り込まれた「♪ポ〜ニョポニョ、ポ〜ニョ…」が消えたぐらいだ。

 っと忘れてた。エレベーターと並ぶ今回の最大注意事項、手荷物の確認。今回は、スタッフが個別訪問して「危険物にあてはまる物は持ってませんか?」で済んだ。……これだけ?と拍子抜けしたが、本当にバッグとかを開けられるのも、時間の問題なんだろう、うん。

 話を戻そう。日韓アニメ研究会のスペースに到着すると、Kとヨースルさんが設営をしていた。早速、新刊を渡す。「で、何冊だ?」30冊「20冊しか無いぞ」――なワケで、もう一度東館に引き返し、不足分を取りに戻ってきた。そして、東館に帰ったのは0920時。0930時には、開場まで東西各館の入り口が封鎖されるんで、危ないところだったりする。

 1000時、開場。例によって、この時間はする事が無いので、ガタケット委託分の新刊の袋詰めを、黙々とやっていた。しかし、驚いたことに、袋詰めしてる最中にも、新刊を手にとって買ってくださる方が、チラホラと。袋詰め&荷造りは午前中一杯続いたが、それまでに、去年の新刊売り上げを越えたもんだから、驚くを通り越して、腰を抜かす勢い。

 そうしてる内に、どっかで見た顔の人が…と思ったら、宮原さんじゃないか?ここ数年お会いしてなかったけど、すぐ分かる風貌は相変わらずで、内心、安心した。そういえばこの人、本職と、InfernoDay's付政治委員の他に、夜天プロジェクトの政治委員まで兼ねて、多忙を極めてると聞いたけど、わざわざ来て下さるとは、ありがたい限りだ。

 その他にも、クイズ地獄つながりの方々を始めとする、多くの知人縁者の方々に駆けつけて頂きまして、本当にありがとうございました。いやいや、コミケはコレがあるから、止められないね。

 んで、売り上げはというと、おかげ様で、初参加時に並ぶ歴代第2位を記録。これを励みに、次も良い本を作っていく所存であります。

 頃合を見て、買出しに出かける。今回はギリギリにカタログを買おうとしたのが災いして、紙カタログが買えず、仕方なくCD-ROM版を買ったんだが、これが実に使い勝手が良くてねぇ。意外にも、これは当りだった。特に、宝の地図を作る際、威力を発揮する。見やすい地図を作成出来るので、去年よりも予算が多かったのに、回る時間は少なくて済んだ。

 1600時。会場一帯に、閉会の拍手が鳴り響く。――ここまでは、あくまでも前フリ。本当に書きたかったのは、ここから先

 いそいそと荷造りを済ませ、ガタケット送り分と合わせて、先のミニキャスター台に乗せて、ゴロゴロゴロ…と、一番近いペリカン便まで移動する。入り口に出て気付いたが、外は雨。持って来てた傘を開き、荷物をかばう様に先を進む。が、雨音に混じり、信じられない声が耳に。

 「ペリカン便の東館での受付は終了しました」ええええええ?!!!!!

 「申し訳ありませんが、西館の受付までご移動下さい」えええええええええええええ!!!!!!!

 雨の中、荷物の受付打ち切りを宣言する、非情なる日本通運。参加者の中から不満、いや憤懣の声が上がる。が、仕方ないので西館へ移動する。


 これから先は、後世『死のペリカン街道』と呼ばれる、ペリカン難民による東西移動の模様である。


 さて、東西を移動するには、何本かのエスカレーターを上り下りしないといけない。普通のカートなら、ちゃんと荷物を縛っていれば、余り苦労は無い。が、ハチはこんな事態を全く考えてなかったので、件のキャスター台の上に乗せるだけ。縛る紐も無ければ、車輪が小さくて底があまりにも低過ぎて、縛ることもままならない。

 それに、ガタケットのも、一度にまとめて送ればいいや、と一緒に乗せたのが、結果的にマズかった。どちらか片方なら、何とか手で持てる重さなんだが、両方となると、手ではピクリとも動きやしねぇ。

 仕方ないので、ゴロゴロゴロと押していくのだが、通常カートとは比べ物にならない程、段差に弱い。となると、エスカレーターのほんの僅かな段差すら難所となりかねない。ってか、なるんだよ!

 最初の難関、東西の連絡通路へ上がる、上りのエスカレーター。荷物をかばいながら慎重に昇っていくが、案の定、エレベーターと床との段差でクラッシュ。――まずい!ここで流れを止めては、前のワンフェスのような将棋倒し事故もありうる!!

 一瞬、悪夢が脳をよぎったハチは、サッカーにおけるクリアの要領で、とにかく荷物をエレベーター前から離すべく、うおおおおおおお……っと荷物やらキャスター台やらを、投げるように押していった。あの時、通りすがりの警備員のおじさんに手伝ってもらったから何とか助かったけど、生きた心地がしなかったね。

 二つ目の難所は、連絡通路を通り、西館1階へと下りる、下りのエレベーター。もう失敗は出来ない!段差に備えて台をやや斜めに構え、降り切る瞬間を緊張しつつ待ち構えるハチ。――今だ!今度は、エスカレーターの段差を乗り越える事に成功。思わずガッツポーズを取るハチ……いや、よくよく考えれば、何でこんな事でガッツポーズしないといけないんだろ?次の瞬間には、逆に自己嫌悪に陥ったという。

 西館から外に出て、ペリカン受付へ。これで終わる――と思ったら、甘かった。ここからが長くてねぇ、愛の国ガンダーラへの道程に匹敵する遥か向こうに、最後尾を知らせるペリカンの幟(のぼり)が立ってて、そこまで延々と移動。

 列の動きが止まり、ここでようやく、一息入れたハチ。この場所は幸い屋根があるので、荷物が(あまり)濡れずに済む。が、先の東館でのシャットアウトで、貼ってた送り状がグズグズになってた。いや、シャットアウトの報を入り口近くで聞いたハチは、まだまだ良いほうで、長い時間待たされた上で追い返されたと思われる人々の箱は、かなりの浸水を食らい、タオルなどでこれ以上の浸水を食い止めようと、必死な様子。

 カワイ・アントワネットの「東館がダメなら西館に移動すればいいのに」から、比較的早い時期に移動した組のハチは、体内時計算出にて30分程度(最早、時計を見る気力無し)で受付まで入れた。受付に、荷物をホイホイと放り込んで、会計へ。

 ――会計で気付いたんだが、ペリカンはペリカンで、それなりに大変だったんだろうな。ほら、会計やってるおねーさんの手。送り状のカーボンで、飛行機の落語で聞いた楽太郎師匠の腹の中以上に真っ黒になってるじゃない?……ってか、あんなムチャな事しなきゃ、こんな人が殺到しないんで、苦労しないでも済んだのだがな。

 ボロボロになりつつ、ペリカン受付を――犬が後ろ足で地面を蹴り上げる要領で――後にしたが、そうする内にも、後から後からペリカン難民が殺到している。会場閉鎖時間の1800時までに、彼ら全員、無事に受け付けてくれたのだろうか?

 その間にも、主催者サイドが、クロネコ側への移動をしきりに促していたが、その1時間前ぐらいにあの人達、「送り状は事前に貼っておく様に」ってと言っていたじゃん?もうトリの送り状を貼った人ばかりの難民らには、無理な相談というもの。本来ならば、事前に送り状を貼るのは正しい行為なのだが、今回に限っては、完全に裏目に出てしまったようだ。

 この後、委託物の引取りなんかでKと会わないといけないんだが、死のペリカン街道を歩いて、精も根も尽き果てたハチは、速やかに空港まで向かうことにした。

 しかしまぁ、ペリカンの仕打ちには怒りを通り越えて、呆れたね。終始、参加者の中から不満の声が溢れ出てたが、コミケットには客は無く、場に有る全ての者がイベントの運営に関する義務を、等しく有するという建前を、皆が熟知していたが故に、不満をささやきあうだけで済んだ。

 が、これが営利的イベントや、上の理念のないイベントの類だったら、暴動起きてたよ?「パワーアップ3カ年計画」〜改革への挑戦、お客様とともに〜も良いけど、もっと根本的なことを、改めて見直すべきなんじゃないかい?

 りんかい線経由東京モノレールにて、空港に早めに入る。空港内出発ターミナルの各売店では、カツサンド祭か何かが行われていて、数種類のカツサンドが売られてた。ひいきにしてる、まい泉のカツサンドは、残念ながら売り切れだったが、数種類のカツサンドを買い込む。機内で、ビールと一緒に頂くと、疲れやらペリカンへの各種ネガティヴ感情やらが、一気に解けていった。ぷはぁ……

 機内では大抵、落語チャンネルを聞いているハチなんだが、今月のANAは、楽太郎師匠が「禁酒番屋」をやっていた。そういえば、楽太郎師匠の噺をマトモに聞くのは、この旅が始めてだ。

 んで、聞いての感想なんだが、噺、いや特に冒頭の枕の部分が――こんな事を言うと、師匠への侮辱になるかも知れない、いやなるんだろうが――な〜んか、ラジオでの伊集院のトークに似てるんだよね。喋りの流れというか空気が。お客の笑いのタイミングも、渡辺のそれに、変に似てるし。

 似てるというより、伊集院が師匠から習った、楽太郎師匠の腹黒噺と、伊集院の巨大な腹に貯蓄せしめし毒とが化学反応を生じた産物が、伊集院ラジオのトークなのかも知れない。

 なんやかんやで帰宅。一風呂入った後にでも、軽くラーメンをば、と思ったが、風呂上り直後、速やかに昇天。そのまま、朝を迎えたという。


8月19日

 喜びと悪夢が織り交じったコミケから翌々日、ペリカンから、先に預けておいた荷物が届いた。中身は無事。

 イベント用搬入には、カートでの手運び・宅配便問わず、福岡市指定ゴミ袋やらで、過剰なまでに防止処理を施していたんだが、それが初めて良い結果を生んだわな。

 中身には、当時買った本も入れておいたが、これも無事。ってか、何で入れておいたかと言うと、第一に帰りの負担減。もう一つは、手元にあると、ついつい読んじゃって、レポートを書くのが延々と遅れてしまうから。荷物をすぐに開けたように書いたが、実は、これをここまで書いた23日早朝まで、封を開けずに封印しておいたりする。

 こんな感じで本を買った。

B5の本。左下は、ねこのしっぽがいつも、コミケ印刷の
オマケでくれる、従業員有志が作った本
A5の本。旅行や論評など、個性的な本が多い
 
集合写真をば。去年よりも多い

 ちょっと奮発して1万円程度使ったんだが、かなり楽しめた。ただ、今回のテーマであった「もうちょっと創作系を攻めよう」を成せなかったのが、やや不満だったけど、概ね満足いく結果だったかな。


8月23日

 ようやくレポートを書き終える。その夜、中華製安焼き鳥のセットに、(多分)宮崎製の炭火焼鶏と各種酒を買い込んで、一人打ち上げ宴会をば。トリへの私怨故に、鳥づくしって事で。

 本とトリを肴に、ガンガン呑みつつ思ったんだが、そういえば当日、色々スペースを回ってみて、韓国モノの多さが目立ったような気がする。

 伝統的な嫌韓を、オンオフ問わず見聞してるハチには、意外に思えたね。本番前日、星野ジャパンが対韓国戦で敗れたんで、韓国産ゲームでやってるだけに、これはヤバいなぁ…と内心冷や汗だったんだが、世の人達はそういう事を、ハチが思ってるよりも、あんまり気にしないようで、売り上げが上々だったには驚いたね。

 そんなことを思いつつ、翌朝の正午近くまで呑み続けたが、そうのんびりしてもいられない。2週間後にはモーターボート記念(委託だけど)ガタケット、その翌週には、こみトレ。更に翌週には、ドームでのシティが待っている。ぼちぼち準備しないとな。

 ま、一番にする事としては、日本郵便社員のKに、日通との業務提携の是非を、本気で検討することを奨めておくことかな?


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