ダブルダイナマイトの世間話(2)
佐野さんスペシャル(I)

O / 大矢  H / ホーク

H 昔ねえ、僕のいた会社に、佐野さんて親父がいたんですよ。であのー、出張行ってね、どっかのホテル泊まったら、隣の部屋から男女のいい声が聞こえてきたんだって。で佐野さんはたまたまそん時、温泉に行こうと思って、
O 佐野さんてのは年のころはいくつぐらい?
H だいたい60前ぐらいですな。
O あらいい年じゃないですか。
H もう顔がね、赤いんだか黄色いんだか分かんないみたいな。どう考えても健康ではないというですね。
O はいはい。
H この親父がだいたい僕が5時ごろ仕事してるとですね、後ろにこうスーッと立って、こう15分ぐらいじーっと待ってんですね。
O 夕方の5時頃ね。
H で今日またアレかなあ、と思ってシカトしてるとですね、「おい……お前分かってんのに何で無視すんだよ!行くぞ」って言われて、
O ああ、もう5時ぐらいに。
H 「行くぞ」って。どこ行くんですか?「新橋に決まってんだろ!」
O ワハハハ
H そんな怒んなくたっていいじゃない。それで新橋行ってホッピー飲んで。でまァその佐野さんがですね、出張でホテル行きまして。温泉が付いてるからって素っ裸になって、じゃあ温泉でも行くかなんて言って。何で部屋から全裸なのか分かんないですけど。
O ウヒャハハハハハ!捕まるよ部屋から全裸で大浴場行ったら。
H そしたら隣の部屋からいい声が聞こえてきたんで、あれ?と思って、ちょっとこれ聞いてみようってホテルの薄い壁にコップを付けて。
O 備え付けのね、ちっちゃなガラスのコップがありますね。
H ビール飲むようなやつで。こう聞いてみたら何かよく聞こえねえなあ、壁が結構厚いのかなあと思って。佐野さんが1人で。この時佐野さん1人ですよ、で分かった!壁が結構厚いから、これドアのほうが薄いだろうって言って、表出て。全裸で。
O ワハハハハハハ
H 全裸でコップ1つ持って。
O ワハハハハハハハハ
H 部屋の外に出て隣の部屋を聞いてみようと思ったら、バーン!て後ろでドアが閉まっちゃって。
O 60の親父が!
H オートロックで!
O 空のコップ1個持って!
H 後ろでバーッと閉まっちゃったから、参ったなあっつって、そのままエレベーター乗ってフロント行って、「おーいちょっと、オレ閉め出されちゃったんだよ」
O ワハハハハハハしかも、隠すものといったらコップだけ。
H ガラスのコップ1個で。
O 光の屈折で大きく見えたりして。
H 大きく見えたり小さく見えたりしてますよ。それでこうフロントで「閉め出されちゃった」って言って、そのままボーイと2人でエレベーター乗って。
O ワハハハハハ、捕まったエイリアンだよ!
H ワハハハハハ
O ワハハハハハハ
H でもコップはまだ持ってるから。
O 大切な備品だからね。
H それでどうもすんませんねえ、なんて言って部屋もう1回入って。だけどまだ何かやってるんだって、隣で。
O まだいい声が聞こえてくるんだ。
H で何か悔しくなっちゃって、ああ分かった、これ窓から身体を乗り出して、
O ワハハハハ、気違いだ!
H ちょっと覗いたろうか、って窓を開けようかと思ったら、ラジオでうまく説明できるか分かんないですけど、これ窓がガラガラガラッて横に開けるやつじゃなくて、あのー上で留まってる窓。上に留め金があって、お風呂の窓とか、上がこう……
O ああハイハイハイ。ちょっとこう、傾いて開くような窓ね。
H そうですそうです。上のほうからこっちに開くという。で変な窓だなあオイ、とか思って、でもまァちょっと隙間があるから、そこから体出してやろうと思って、その留め金をクッと外したら、普通ああいうのって蝶番みたいになってるでしょ?
O あんまり落ちてこないように。まあ途中で止まりますわな。
H そしたらそれがブッ壊れてて、カッと開けたらそのまんま自分の頭っから窓がバリーン!って
O ワハハハハハハ、全裸の親父に窓がバリーン!
H 全裸の親父が頭っから窓を被ってね。
O ダハッハッハッハッハッ
H 凄かった。
O ワハハハハ、凄かったの一言で片付けてるけど。
H 全裸でね、頭っから大流血しながら、手にコップ持ってね、
O ワハッハッハッハッハッハッハッ
H オレの目の前を担架で運ばれていきました。
O ダハッハッハッハッハッ!佐野さん。
H 佐野さん。たぶんもう死んじゃったと思いますけどね。


(2004年11月1日放送 『頭血だらけの全裸中年がコップだけもって担架で運ばれてった!』より)



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