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第4話
幼なじみは脱獄囚
乗っ取りバスで涙の面会!?
They Shoot Hammers, Don't They? |
〈あらすじ & みどころ〉
ハマーの幼馴染みにしてかつての同僚、ジョン・コーガン登場。
汚職で服役中だった元警官、コーガンが護送中のバスを奪って逃走。自分を投獄したハマーに宣戦布告する。ハマー以上に凶暴、そしてハマー以上の早撃ち。対コーガン戦は勝ち目のない決闘に思われたが、ハマーにはひとつだけ秘策があった。
シリーズ最高傑作。敢えてそう言い切りたくなる破壊力に満ち溢れた1本だ。
その破壊力をひとりで発揮しているのがジョン・コーガン(声・青野武)。とにかくこのコーガンが最高だ。なにしろ登場からしてこれだもの。死刑囚専用の護送バスを奪い、異常なテンションで絶叫しながら目に入るものはすべて破壊、まさにノンストップ殺人マシーンだ。そのジャガーノートっぷりはこちらをご覧いただきたい(しかしこれでは魅力の1割も伝えきれていないはずだ。とにかく実際に動いて喋っているところを見てくれ!としか言えないところがオレも辛いですよ)。
声の出演・青野武の、脳の血管が全部切れそうな大熱演も勿論素晴らしいが、コーガンを演じるジャック・ティボーの豊かな表情そしてケレン味たっぷりというかケレン味しかないような動きもまた素晴らしい。こういうところにシリーズの底力を見るのです。
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いい顔 |
ハマーが決闘に応じるまで街を破壊しつづけると宣言するコーガン。そんなコーガンとの一騎討ちをハマーは直訴する。だがトランク署長は首を縦に振らない。ハマーがコーガンに勝てないことを知っているからだ。署長もそれなりに部下の身を案じているのかと一瞬思うが、この直前に「署長、私の命を狙っているやつがいるんです!」とハマーに言われて「待ってました!」と即答していたので本当のところは判りません。面倒を避けたいだけかもしれん。しかし署長もついに根負けして、ハマーを謹慎処分に。「ありがとうございます
これで心置きなくやれます!」と言い切るハマーが泣かせますよ。
警官時代 |
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もともとは警官で早撃ち、さらに凶暴。「ようハマーよぅ
てめえと俺はまったくよく似てんだよなぁ」とコーガンが言うまでもなく、この男はハマーと実に共通点が多い。ふたりを分けるものは警察バッジと正義感だけ……実際ハマーに「俺にはバッジがある」と言われて逆上したコーガンは「俺だってバスがある!」と絶叫します(そのあと「馬鹿野郎、つまんねえこと言わせんじゃねえ!」とさらに逆上)。というわけでこのジョン・コーガンはハマー刑事のダークサイドなのであります。とか何とかかっこいいことを書いてますけども。
とにかく幼馴染みのコーガンと対峙することで、ハマーは自らの過去を振り返らざるを得なくなる。コーガンを見つめることは、ハマーにとって自分自身を見つめることなのだ。第4話めにして大変な男が出てきましたよ。それでまァいろいろあってハマーの秘策が炸裂するんですが、そこをネタバレするのは野暮ってもんですから自分で確かめてほしい!決して紹介に飽きてきたとかそういうことじゃないのです。
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俺だってバスがある |
そんなわけでハマーや署長も、今回限りはジョン・コーガンに完全に食われてしまったように見える。しかしこの男が後のエピソードに再度登場することはない。これだけ強力なキャラクターが1話かぎりの登場とは実に勿体ない話ですよ。だがその勿体なさゆえに、この20分強の物語が、そしてジョン・コーガンの勇姿が見るものの心にいつまでも輝き続けるのだ。最初にコーガンと出会ってからもう15年以上になるが、その魅力は少しも色褪せることはない……
ジョン・コーガンを演じるのはジャック・ティボー、この人クリント・イーストウッドの超名作『アルカトラズからの脱出』(79)に出てました。コーガンいやジャック・ティボーはイーストウッドの脱獄仲間で、フレッド・ウォードと兄弟の役でしたよ。『アルカトラズからの脱出』は『ダーティハリー』でおなじみのドン・シーゲル監督、イーストウッド主演コンビの最後の作品です。この作品で強烈な印象を残した(少なくともオレには非常に強い印象を残した。なにしろコーガンを最初に見たときに「あっ!『アルカトラズ』のアングリン兄弟の片割れだ!」と興奮したぐらいだ)ジャック・ティボーが巡り巡って再度脱獄囚を演じるというこの事実、何かこう『俺ハマ』の世界に渦巻く強力な『ダーティハリー』磁場を感ぜずにはいられません。
まァこの映画も好きで好きで |
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〈今回のまめ知識〉
■ハマーの父親ジャック・ハマーはサーカスのガンマン。ハマーは少年時代をサーカスで過ごした。
■今回の原題"They Shoot Hammers, Don't They?"はアメリカン・ニューシネマの名作、『ひとりぼっちの青春』(They
Shoot Horses, Don't They? /69)から。監督シドニー・ポラック、主演ジェーン・フォンダ。不況時代のダンス・コンテストの話だが、今エピソードとの関連はたぶん全くない。と思う。 |
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