特別資料 憲法の特徴と対策
1.憲法の科目の特徴
○国家権力を制限する法律。
この点で、他の法律(私人を規律する民法、刑法等)とは大きく異なる。
なぜ国家権力を制限する必要があるのか
→国家権力の濫用(国家警察、治安維持、果ては冤罪、虐殺などの危険)から個人の人権(自由な活動)を保障するため。
すべてはここが出発点。人権保障の必要性、民主主義原理、権力分立、法の支配等、国家権力を制限する法律、という観点から説明しうる。
○人権とは国家に対する権利。
国家に対して放っておいてくれといえる権利(原則)。
そのような人権に対し、国家がどの程度であれば制限、干渉が許されるか、が、人権の問題の大きな視点。
○憲法は政治論ではなくて法律論。
「こうあるべきではないか」という政策論(ex.社会福祉制度の更なる拡充、直接民主制の導入など)ではなくて、「憲法がこう言っている」という法律論(ex 最低限度の生活の保証、間接民主制の原則など)を明らかにするのが憲法解釈学。
憲法学者の中にも政治論に走る人が多いので注意。
2.憲法の論文の特徴
○人権は最新判例が素材。完全に定着。
最新判例とは事案をやや異にする形で出題される。判例の知識よりも、むしろ当てはめ能力を問う傾向にある。また、当てはめが丁寧な答案の評価が高い。
○統治では実務では絶対に問題とならないような問題が出されると思っていい。このような問題で、深く考えても、完全解など出せるはずがない。
では、そのような問題では、何を聞きたいのか?
→統治の問題はほとんどがその機関相互の権限関係を聞くもの。
それを聞く過程で、憲法の基本原理がマスターできているか、それだけを大きく聞いている。
3.論文での憲法の対策
○とにかく最新判例は全部押さえる。人権の分野で取捨選択すればそんなに多くない。直前五年分を押さえるべき(重判五年分が理想。もちろん下級審判決も含めて。刑訴の分野に人権に関する判例がある場合もある点に注意)。
何を押さえるか…何がなんでも問題の所在(どのような人権に対する、どのような制約の合憲性が問題となっているのか、など)。問題の所在を把握するために事案を読む。わからなければ解説もざっと読む。
答案上、これを示す、意識することができれば、ほぼ勝ちが決定するから。
余裕があれば判旨の流れを押さえる。問題によっては、判旨の流れを自分なりに再現するだけで、規範定立部分はOK、という場合も多いから。
○人権はとにかく当てはめ勝負。規範定立でだらだら書いても評価は思ったよりも伸びない。当てはめで勝負できるよう、答案構成の段階で何を書くべきか、何を省くべきか、コンパクトにすべきか、情報を取捨選択しておくべき。問題となりそうなことを全部書こうとすると、肝心の違憲審査基準に対する当てはめにスペースがさけなくなってしまう。
当てはめの練習も、過去問や答練等で意識的に取り組むべき。事実→評価→認定、の流れが基本。LRAの基準であれば、考えられうる代替手段を説得的に示して違憲、または考えられうる代替手段では効果がないことを説得的に示して合憲、という当てはめがオーソドックスかつ効果的。
○統治は細かな論点を拾おうとせず、書く論点を絞って、その中で機関の特徴、基本原理をアピールしていくのが効果的。それによって、憲法の基本事項を理解していることをアピールできる。
また、政治論に陥らないためには(難しいことだが)規範定立→当てはめという法的三段論法をきっちりと守ることがコツ。もちろん、規範は自分なりの規範で十分。そうすることによって、自分の感情に基づく政治論や生の利益考量を展開することが防げる。法律としての論文になる。
未知の問題であっても、基本原理を示し(できれば対立する二つの原理)、そこから自分なりに規範を導けば十分。統治は守りの答案でいい。
○もし統治で典型論点(H11年前段)が出題されれば、間違いなく大方の受験生は書ける。典型論点における憲法のレベルの高さは尋常ではない。そのときに備え、典型論点は一通りかけるように準備はしておくこと。その上で、知識を詰めすぎずに、一通りの事を書けばよい。
4.その他
○論文本試験最初の科目=緊張したり、肩に力が入ってしまいやすい。その結果、攻めて自滅する危険が高い科目。
ただ、憲法はもっとも採点者による運、不運のある科目(受験生のレベルが高い+採点者のレベルが低い)。よって、憲法ではたとえ攻めても点数は計算しにくい。
したがって、憲法は守りに徹するのがよいのではないか。まだ五科目ある。無難な答案を二通そろえるぐらいの気持ちで望めばよいと思う。
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