特別資料 商法の特徴と対策

1. 会社法の特徴と対策

○会社法=会社の維持、発展を通じて、株主の利益を図る目的
まず、この建前論を押さえる。
商法が苦手な人の中には、現実(会社は取締役のもの)や、最先端の議論(M&A等)に振り回される人も多いのでは。
しかし、司法試験の答案では、法の理念(建前論)を表現すればよい。それで十分。それが、法を問う司法試験で求められているものだからである。
○会社法は要は建前論。法の理念が重要。
→最も重要なのは、条文、制度の内容と、その条文、制度の趣旨。
(「なぜ210条のような条文があるか」「なぜ債権者保護のような制度があるか」)
そこが問われている点である。
その点を重視して勉強すべき。とにかく趣旨。論点はその次。
趣旨が理解できてくれば、面白いように理解が早まる。答案が書ける。
○会社法は、司法試験科目で唯一改正が頻繁になされる法。
極論を言えば、論点も改正で減らすことができる
→論点よりも、なぜそのような条文があるのか(なぜそのように改正されたのか)が重要であることは、ここからも伺える。
○会社法の答案作成にあたり、もっとも困難な作業が条文引用。
 とにかく複雑な条文体系(改正に改正を重ね、しかも文語体であるから)。
 下手すると、本試験では条文を探している間に時間が過ぎてしまう。
対策としては、条文を引くのに慣れておくしかない。慣れると、おおよその位置がつかめてきて、引きやすくなる。
 とにかく普段の勉強から、面倒がらずに条文を引くこと。そこで時間をかけて条文を引くことを繰り返すことによって、本試験で条文を引く時間が短くすむのである。
○会社法の傾向は簡単な事例問題か1行問題。
 簡単な事例問題は当たり前のことを分かりやすく論じればいい。論点も簡単なものであることが多い。問題は1行問題。
 未知の1行問題に対処するためには、1行問題を多く検討し、1行問題のパターンをつかんでおくこと。
 パターンは大きく分けて二つ挙げられる。
●比較問題 定義→共通点→根本的相違点→具体的相違点→まとめ
●制度説明問題 定義→制度の必要性→具体的制度とその趣旨(制度の必要性)→まとめ
 ポイントは、趣旨(なぜそのような制度があるのか、なぜそのような差異が生じるのか)を重視すること、及び、総論と繰り返しになったとしてもまとめをいれ、理解していることをアピールすること。
 1行問題では、よっぽど必要性が高い場合か、問題文に指示されているのでない限り、論点の論証は不要である(バランスを崩す原因でもある)。
 それよりも重要なのは趣旨。各制度、条文の趣旨(たとえば、資本制度や266条の3の責任)を、総論(まとめ)で示した視点・必要性・基本原理(たとえば、債権者保護の必要性)とからめる、リンクさせる。そうすると、会社法の理解が示せ、高得点につながる。
 リンクできなければ(たとえば、資本3原則の記述に終始し、どのように債権者保護に資するか、を書かない)どんなに知識が豊富でも、意外と評価にはつながりにくい。
○会社法は素晴らしいテキストがある(両方とも弥永先生)。
「リーガルマインド会社法」(何がすごいって、制度趣旨の丁寧な説明がすごい。基本を身につけるのに最適。一気に頭が整理できる。細かいところはほどほどに読むのがコツ)
「論点講義シリーズ会社法」(司法試験に出題が予想される論点はほぼ網羅している。判例・通説にきちんと配慮している。)
予備校の無味乾燥なテキストや基本書の難解さ(鈴木会社法など何がよいのかさっぱりわからない)に困ったら、この本を参考にしてみるのもお薦め。
○会社法の基本的な視点
@ 大規模企業の維持・発展
A 資金調達の必要性
B 経営の効率化(所有と経営の分離)
C 経営の適正化(執行機関に対するコントロール、機関の分化)
D 投下資本回収の要請
E 会社債権者の保護(資本制度)
F 取引の安全の確保
G 法的安定性の確保
 この基本的視点、あるいは二つの視点の調和の見地、といった観点から、説明できる制度や理由付けられる論点も多いのではないか(EX、株式譲渡自由の原則はDが必要性、Bが許容性)。

2. 有価証券法の特徴と対策

○約束手形とは何か、手形という実態を早くつかむ。
要はお金がすぐに払えない場合に、債権の担保として振り出される有価証券(例外もあるが)。
 ただ、債権者がいつでも金銭に換えうるように、高度の流通性が要求される(また、流通してこそ財産的価値がある)。
 そのため、手形取得者を保護し、手形取引の安全が図られている。
○学説は大きく二つに分かれ、対立も激しい。
 しかし、そのような学説を深く勉強する前に、各制度、条文の制度趣旨をしっかり押さえることが必要。これが押さえられてこそ、手形法の理解が早まるし、論述にも深みが出るから。
 なお、創造説と交付契約説であれば、交付契約説の方が分かりやすいのではないか、と思われる。(創造説は理論的だが理解がやや難しく、また答案に書きにくい)
○結構、判例が重要な分野
(条文数が少なく、判例法の重要性が高いから)
主要論点については判例の問題の所在や流れ、表現を押さえておくべき。
そのまま再現できる場合も考えられる。
○事例問題(XがYに手形金を請求しうるか)の場合は、
手形債務が発生しているか(振出の有効性)
→手形債務は移転しているか(裏書の有効性、善意取得の有無)
→抗弁事由の有無(人的抗弁の切断等)
または
形式的資格(裏書の連続)の有無→実質的権利の有無、
という流れで検討すると、整理できて分かりやすい。
また、当事者間の法律関係を聞かれている場合は、裏書の担保責任を落としやすいので注意。
○1行問題の場合は、視点はほぼ間違いなく手形取引の安全(例外もありうるが)。
それを1行問題のテーマに即してどのように具体的に表現し、また各論でどのように総論とリンクした(「なぜそのような制度が手形取引の安全に資するのか」等)記述ができるか、がポイントになると思われる。
○有価証券法の視点
@ 手形取引の安全
A 手形取引の迅速
B 手形債務者の利益(善意支払)
C 真の権利者の保護
D 手形の定型性(無因性、要式証券性など)

3. 総則、商行為の傾向と対策

○少し古い法律=出題可能性は高くない。
模試や口述過去問で出題された分野を押さえておけば十分。
余裕があれば基本書またはテキストをメリハリつけて読むぐらいでよい。
○聞かれるとすればおそらく事例→重要分野については制度趣旨とともに要件を押さえておいた方が無難。
○類似制度(支配人対取締役、商業登記対不動産登記など)と比較して押さえると、理解も深まるし、答案でも書きやすくなる。

4. 共通する注意点

○商法は過去問の焼きなおし問題が非常に多い(H10@、H11Aなど)。
 手形小切手はすでにネタが尽きている+会社法も細かい分野を聞くわけにはいかない(司法試験は法解釈の素質を聞く試験であり、細かい知識を聞くものではないのに加え、修習科目に商法は含まれず、重要性が低い科目)
=今後試験に出題されそうな分野は過去問で大体出題済み、と考えられるから。
ぜひ、過去問には最低でもざっと目を通しておくこと。できれば自分のテキスト、ノートに軽い構成例や足りない知識を書きこむのが望ましい。
○時折とんでもない難問が出される(H6A、H9A、H10Aなど)。
確実にみんな分からないのだから、条文、、趣旨に忠実にあっさりと表現し、守ればよい。あせって自分で論点などを考え出したり、無理に既存の知識、論点に引っ張り込もうとすると、混乱したりミスを誘発して自滅の元になる。
○司法試験のレベルは限りなく低い。
会社法が難解なイメージ+量が多いのが原因であろう。
条文すら引けずに本試験に臨む者が最も多い科目。
去年の問題で手形行為の瑕疵を論じたものが多数いたぐらいのレベル。
当たり前のことを、当たり前に書けば、間違いなくAがとれる。
趣旨から具体的に丁寧に論じていけば、ホームラン答案も夢ではない科目。
ぜひ、得意科目にしていただきたい。
○商法は量が多い科目
→全体をバランスよく回すこと。深く堀りされすぎると、穴ができてしまう。
細かい論点よりも基本(条文、趣旨)に重点をおくことを心がければ、思っているほど量は多くないのではないか。
○1日目の3科目目に行われる。
 集中力が切れやすい時間帯。できれば、民法終了後の45分は休憩に当て、集中力を取り戻すのが望ましい。
 また、集中力が切れた、と思ったら、無理せず少し(1分程度)休むこと。時間は取り返せるが、ミスすると取り返しがつかないから。
○問題文自体は簡単なことが多い。時間は余りやすい傾向。
→じっくりと答案構成をして、内容を練ってから表現してもおそらく間に合う。
 表現方法などにも気を配りつつ、落ち着いて答案構成するのがよいのでは。

目次に戻る