PART 1
この間、久しぶりに宮武先生のHP(「STAY GOLD」)にいったら、
今年の論文試験の検討が盛んになされていました。
みんな元気だねー。
僕は本試験問題自体、9月まで見なかった。
再現答案さえ作ったことがない。
だって、しんどいもん。
(こんな過ごし方でも、別にいいと思います。
ただ、何らかの形で法律に触れておかれたほうが
勘が鈍らなくてすみます。)
といっても、ここまで論議されている以上、
やっぱり私としても、今年の論文本試験につき
何らかの雑感を述べた方がいいと、
少しは何かに役立つかもしれないと思いまして、
このページを作ったわけであります。
論点の深い解説等は
予備校などがやってくれると思いますので、主に
○この問題のポイント(と勝手に思うこと)
○私ならどう書くか
等を中心に述べたいと思います。
まず、憲法第1問
学校教育法等の規定によれば、私立の幼稚園の設置には都道府県知事の認可
を受けなければならないとされている。
学校法人Aは、X県Y市に幼稚園を設置する計画を立て、X県知事に対して
その認可を申請した。X県知事は、幼稚園が新設されると周辺の幼稚園との間
で過当競争が生じて経営基盤が不安定になり、そのため、教育水準の低下を招
き、また、既存の幼稚園が休廃園に追い込まれて入園希望児及びその保護者の
選択の幅を狭めるおそれがあるとして、学校法人Aの計画を認可しない旨の処
分をした。
この事例における憲法上の問題点について論ぜよ。
この問題は完全なあてはめ問題ですね。
あてはめの説得性で勝負がつきます。
よって、私なら後半2ページ全てあてはめです。
まずどの自由が問題となるか、ですが、
素直に幼稚園を設置する自由が22条で保障されている、
といえばいいのではないでしょうか。
次に制約の程度。ここが一つのポイントです。
ここで幼稚園を設立する自由の重要性(幼稚園児の教育に資する面もある)と
制約の必要性(公共的側面が大きい)
を両方示し、バランスを示すわけです。
この流れなら目的二分論はかけませんが、
あてはめ勝負と割り切ってあえて飛ばすでしょうね。
違憲審査基準は
目的正当、手段=合理的関連性
ぐらいで行くでしょう。
さあ、こっからが勝負のあてはめ。
事実→評価→認定のプロセスを
丁寧に踏むわけです。
まず目的。
経営基盤の不安定の防止が目的
→経営基盤不安定になれば、人件費の抑制により教育水準は低下するおそれ
また経営が成り立たず廃止されたり統合される幼稚園が生じ、選択の幅が狭まるおそ
れ
そうすると、幼稚園児の教育を受ける権利が図られず
→目的正当。
次に手段。
認可を認めない、という手段が経営基盤の不安定の防止という
目的と合理的関連性を有するか。
→この点、規模を一定のものに定めて認可を認める手段によっても
目的を達成しうるようにも思える。
とすると、かかる手段は合理的関連性を欠くようにも思える
→しかし、現代は少子化
例え一定規模のものに限定したとしても
少ない幼児を取り合う過当競争生じるおそれは極めてつよい。
→かかる事情に鑑みると、
一貫して認可を認めない、という強い手段をとるのが
既存の幼稚園の経営基盤の不安定防止のためには確実。
→なお目的との合理的関連性ありといえる。
という感じでしょうか。
現場で「少子化」というのに気づいていなかったら、
違憲に持っていったと思います。
ポイントは違憲審査基準のあてはめ段階で
「教育の自由は重要」などとは述べないことだと思います。
規範にないファクターを考慮していることになりますから。
なお、他にも論点はいろいろ考えられますが
(都道府県知事の許可制がそもそも合憲か、など)
憲法人権は論点の数ではなくあてはめを聞くもんだと思うので、
処分の合憲性に絞って論じていいと思います。
次に憲法二問目です。
最高裁判所の規則制定権と国会の法律制定権の競合関係について、議院の規
則制定権と国会の法律制定権の競合関係と対比しつつ、論ぜよ。
うーん、難問ですね。
「どこが?典型やん」と思った方もいるでしょうが、
私には難しく感じました。
書こうと思うことは頭に浮かんでくるのですが、
それをどう整理して書くか、が
けっこう難しいのです。
こういうときは、無難に書いて、
守るのがよろしいかと思います。
ただどんだけ守っても、問いに答えないと落ちます。
本問で論点だけ書きまくって、比較の姿勢が出せなかった人が
おそらく予想外の低い評価だと思われます。
まず、一、最高裁判所の規則制定権と国会の法律制定権の競合関係
1 二者の定義
2 制定権の範囲
規則制定権→明文ないゆえ問題
→訴訟手続全ての範囲でOK
(この論証の中で規則制定権の趣旨をアピール)
3 両者の優劣関係
明文ないゆえ問題
→法律優位(この論証の中で41条の趣旨をアピール)
二、議院の規則制定権と国会の法律制定権の競合関係
1
2
3 (大体上と同じ流れ)
ここまでは大体みな同じでしょう。
でも、三 両者の比較、まとめ
これが難しい。
ここで、統治の原則を思い出すと
統治の問題は
「機関の権限の重要性、調和といった、
憲法の基本的理解が出来ているかを試す」
ものです(憲法特別資料参照)。
そしてここで試されている基本的理解は
「自律権の尊重」対「民主主義の重要性」の調和、ということです。
ならば、それをここでアピールするしかありません。
ではどうするか、
1 全ての範囲で制定できるという点で共通
→憲法が自律性を尊重し、もって機関の活動を保障している点で共通
2 法律に劣位する点で共通
→憲法は自律性を尊重しつつも、民主主義を優先させていることの現れ
ということを、膨らませて10行以上、
アピールする、と思います。
相違点ではなく、共通点の理由をアピールできるか、が
(通説に立った場合の)答案のポイントだったのかな、と思います。
さて、次は民法第1問です。
Aは、画商Bから著名な画家Cの署名入りの絵画(以下「本件絵画」という。
)を代金2,000万円で買い受け、代金全額を支払って、その引渡しを受けた。当
時、ABは、本件絵画をCの真作と思っており、代金額も、本件絵画がCの真
作であれば、通常の取引価格相当額であった。Aは、自宅の改造工事のために、
画廊を経営するDに対し、報酬1日当たり1万円、期間50日間との約定で、本
件絵画の保管を依頼し、報酬50万円を前払いして、本件絵画を引き渡した。そ
の後、本件絵画がCの真作を模倣した偽物であって100万円程度の価値しかない
ことが判明したので、AがBに対し、本件絵画の引取りと代金の返還を求めて
交渉していたところ、本件絵画は、Dへの引渡後20日目に、隣家からの出火に
よる延焼によって画廊とともに焼失した。
以上の事案におけるAB間及びAD間の法律関係について論ぜよ。
近時の民法第1問の傾向に合致する、典型的な事務処理問題です。
本問のような長文問題で、内田先生の問題意識にさかのぼった
不当利得の類型論などを深く論じてしまうと、
スペースと時間が足りなくなるだけでしょう。
では、どうやって解くといいでしょうか。
民法と刑法に共通していえることですが、
こういった複雑そうな事例問題では、
まず論点を探す、という考え方は取らない方がいいです。
考えれば考えるほど、
「あれも問題になるんじゃないか」と思って、
深みにはまって時間がなくなっていくからです。
適当に作って来たこのページですが、
もしかしてかなり役立つ話に
なりつつあるかも。
では、何を足がかりに考えるのでしょうか。
そもそも、民法で「○○間の法律関係」と聞かれた場合に、
問題となることは、
当事者間での請求権の存否、
または物権がいずれの当事者に属するか、
このどちらかです。
(まれに例外はありますが)
さて、本問では、絵画は焼失しているので、
所有権の存否は問題になりません。
そこで、どのような請求権の存否が
問題になるのか、
(=当事者の立場にたてばどのような請求がしたいのか)
を、考えればいいわけです。
どのような請求権の存否が問題となるかを考える際には、
客体に着目すると
(本問であれば2000万円の債権、20日分の保管費用、など)
スムーズに導き出せるでしょう。
さて、そういった観点から本文を見ると、
一 AB間の法律関係
1.AのBに対する2000万円の不当利得返還請求権の存否
2.BのAに対する100万円の不当利得返還請求権の存否
二 AD間の法律関係
1.AのDに対する絵画滅失までの20日分の寄託費用の返還請求の可否
2.AのDに対する絵画滅失後の30日分の寄託費用の返還請求の可否
(3.所有権侵害または債務不履行を理由とする損害賠償請求の可否)
という請求権が問題となります。
(二、3は無理なので書きませんが)
あとは、このような請求権が存在するかどうか、を
要件に基づいて、検討すればいいのです。
たとえば、
1、AのBに対する不当利得返還請求権が発生するためには、Aが錯誤無効を
主張することが考えられる。
では、この場合、錯誤の要件を満たすか。→肯定
2、このように不当利得返還請求権が発生するとしても、
本問ではBのAに対する絵画引渡請求権が消滅
→民法536条を準用し、不当利得返還請求権も消滅すると解すべきか
→否定(両債務は対価的関係にない)→請求可
3、他方、BはAに対し絵画相当額の100万円の請求が可能か
→本来B所有の絵画は返還されるはず→公平の見地からなお認めるべき
→請求は可能、相殺も可
という感じです。
まずまず流れがいいでしょ(自分でいうな・・)
なぜかといえば、要件に基づく検討が出来ていると共に、
請求権の存否を問題とする姿勢を明確にすることによって、
「今何を論じたいのか」が明確になり、
流れに沿って書きやすくなり、読みやすくなるからです。
逆に、あれもこれも論点を書こう、と思うと、
論点のつながりをうまく示すことが出来す
わかりにくい表現になってしまうと思います。
ちなみに本問のポイントとしては
「双務契約の存続上の牽連性」をどのように応用するか、でしょう。
AD間の法律関係も、50万円の保管費用と保管行為に
牽連性を認めることによって
実際には双務契約ではないですが、
(これに気づくかどうかも一つのポイント)
滅失後30日間の分の前払い保管費用については
536条準用により本来滅失→しかし前払いという形で不当利得
→30万返還請求可
という、妥当な結論が導けると思います。
さて、それでは難問といわれた民法第二問ですが、
そろそろ疲れてきたので、PART 2にまわします。
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